Rebecca
ムラにゃすฅ(。•ㅅ•。ฅ)
Case1-1
ニューヨーク市マンハッタン区
ヨークアベニューにある公園の前に一台の車が停まっていた。
車は赤いジープの様だが
街でよく見かけるものより旧く、ボディは小ぶりだ。
そんなジープの運転席にいるのは黒いジャケットを着た茶髪の美女
ニューヨーク市警察の刑事レベッカだ。
コーヒーを飲みつつ昼飯のホットドッグを頬張っている。
その時だ、ジープの運転席に装備された警察無線が鳴り響いた。
《5G72、5G72応答願います》
5G72とはNYPDに登録されたこの車輌の認識コードだ。
レベッカは食べかけのホットドッグを包みに戻し助手席に置くと、無線機を手に取り口元まで持ってきた。
「こちら5G72」
《ウィリアムズコートの路地で死体発見の通報有り現場へ向かって下さい》
「了解。現場へ急行する」
ダッシュボードの赤色灯の点灯ボタンを押し、サイレンを鳴らすと、レベッカはアクセルを踏み込みジープを発車させた。
━━━━ウィリアムズコート
「こっちです」
ニューヨーク市警の規制テープの張られた路地の前でレベッカがジープから降りると
一人の制服警官が駆け寄ってきて、規制テープの内側へ招じ入れた。
「遺体は?」
「奥です」
レベッカが警官の指示に従って薄暗い路地の奥へ進むとそこには数人の警官と検死官
そしてコートを羽織ってうつ伏せに倒れている死体
レベッカは警官の一人に声をかける。
「身元は?」
「被害者はフランク・マクレガー、マウントサイナイ病院の医師です。一時間程前ここに倒れているのが発見されました」
レベッカは頷き、続いて死体を調べている検死官の横にしゃがみこんだ。
「ローランド先生、どうです?」
「やぁレベッカ、今日は一人か相棒はどうした?」
「彼奴はマイアミです。結婚を期に移住してね」
「先を越されたわけだ」
検死官のローランドは雑談を済ませると死体の説明に移った。
「致命傷は背中の刺創だ。鋭い刃物で一突き」
見ると相当深い傷だ。ローランドの言う通りこれが致命傷で間違いないだろう
「他には?」
「死因とは関係ないが彼の身体には無数の傷がある。特に腕や顔にね」
ローランドが死体を慎重に仰向けにすると、確かに腕や顔に傷が見られた。
どれも浅い傷だ。
「防御創かしら?」
「おそらく違うな」
ローランドが言った。
「地面に死体を引き摺ったような痕があるだろ?」
ライトを照らして確認すると地面に擦れたような痕があるのが分かった。
「腕や顔の傷はその時についた傷だろう」
「死体が動かされた距離はどれくらい?」
レベッカが訊き、ローランドが
「数メートルだな、路地の奥から手前に動かしてる」
と答えた。
「たった数メートルか」
体力の無い人間が死体を運び出そうとして途中で諦めたか、それとも他に何か理由があるのか
「ありがとうローランド先生」
話を終え立ち上がると、レベッカは「解剖が済んだら連絡を」と頼み自分の車へと足を向けた━━━━━━。
レベッカは先ず被害者の勤めていたマウントサイナイ病院から当たることにした。
院長室の前までやって来てドアをノックすると、直ぐにドアが開いた。
真っ白い白衣を身につけた、50代の男が立っていた。
「マイケル・ベティーナ院長?」
レベッカが訊いた。
相手はレベッカを見て言った。
「そちらは?」
「市警の者です。レベッカ刑事」
レベッカは言った。
「入っても?」
「どうぞ」
マイケルはレベッカが入れるように一歩下がり、彼女が中に入るとドアを閉めた。
「それで刑事さんが私に何の用です?」
「言い難いのですが……ここの医師の遺体が見つかりました。フランク・マクレガー医師です」
「まさか」
マイケルは驚いた様子でよろめき、部屋に置かれたソファにもたれる。
「うちで一番優秀な医師です。年に何千という手術を成功させてた。一体どうして」
「それを調べてます」
レベッカは言って、マイケルの顔に視線を向けると
「良ければマクレガー医師の部屋を見せていただきたいのですが」
と頼んだ。
「もちろんです」
マイケルは立ち上がると、マクレガーの使っていた部屋へ向かった。
「こちらへ」
マイケルが声をかけ
レベッカは彼について行く。
「被害者のマクレガー医師ですが、誰かに恨みを買うようなことはありませんでしたか?」
「いいえ」
マイケルはそう言って、マクレガーの部屋のドアを開いた。
「先ほども言った通り、彼はうちで一番優秀な医師でした。恨みを買うようなことは」
「そうですか」
頷き、レベッカがマクレガーの部屋に入るとそこは広く清潔だった。
部屋の左右の本棚には様々な医学書がアルファベット順に列べられ、カルテは整理されて他の書類と共にデスクの上に積まれている。
彼はとても几帳面な人物だったようだ。
「書類を見ても?」
レベッカはじっくりとデスクを見て言った。
「カルテ以外はご自由にどうぞ」
マイケルがそう答え、レベッカはデスクに座って書類を開いた。
内容は手術の資料やプライベートな物まで様々だ。
その中に一つ気になる物があった。
マクレガー医師が誰かに定期的に送金していた事が分かる書類だ。
レベッカは書類をマイケルに見せた。
「誰に送っていたか心当たりは?」
「…………奥さんじゃないですかね。マクレガーの奥さんはベガスに住んでるから生活費を送ってたのかも」
「成る程、確認します」
「他には何か訊きたいことは?」
マイケルはポケットに手を突っ込んで言った。
「とりあえず今は何も」
レベッカは少し考えてからそう答えた。
「貴重なお時間をどうも」
マイケルはレベッカを外まで送ってきて、ドアを開いた。
「もし、また何か訊きたいことがあれば」
マイケルが言った。
「ありがとうございます」
レベッカは微笑んでドアから出ると病院を後にした━━━━━━。
つづく
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