第5話 学生王者に挑んだのである
本店に出稽古に行ったら、M治大学キックボクシング部でバンタム級の学生王者だったとゆう若者(24)がいたですよ。
はぁ?何それ強いのかよ、たかが学生アマ王者だろ?はぁ俺もバンタム級でしたよプロテストも受からなかったけど。
この墓林の歩んできたハードウェイとはモノが違うわ…と思ってマススパーしたら
ボコボコにやられました。
離れれば蹴りでボコボコにされ、組めば投げ捨てられ、
パンチで殴られなかったのは彼の情けだと思います。
で…その様子を見てたK山凶次先生が「お前ホントよぇーなぁ…(´∀`)」とかほざきやがるので、
オレはタイ人ばりの腕立て伏せをして余裕を見せつけてやりました。
「いやぁ余裕っすね。物足りないくらいっスよ」
と息も絶え絶えの状態で言ったら、
周囲がどよめいていたのをオレは聞き逃しませんでした。
ジムのみんながオレをかわいそうな人を見る目で見てたのは知りません。
そんな事は断じて認めません。
ビッグマウスではオレが勝ってました。
これは試合に負けて勝負に勝ったというやつです。
はっきり申し上げまして、このM治大学はその辺のプロ選手より強いのですが、
彼はプロ・キックボクサーにならずに就職したとの事です。
もうすぐ名古屋に転勤するからこのジムから居なくなるとの事。
まぁープロになってもいい事ないからね。
あの貧しい生活とファイトマネーの額じゃ、何の自慢にもなりゃしません。
M治大学君は賢明な判断をしたと思いますよ。
1960年代にキックボクシングが誕生して以来、
選手の経済状況ってのは全然改善されないままです。
私の住んでいる地域のキックボクシングジムの会長連中を見ても、
マトモな社会性とか常識を持ち合わせた奴はDジムを除いて一人も居ません。
アレ見てると東京の主流のジムの会長連中なんぞ推して知るべし、なのでありまして、
そういう汚い大人達が若者の情熱を食い物にして肥え太ってるだけというのが
キックボクシング業界の現状なのであります。
じゃあお前も搾取する側に回ればいいじゃんwとか軽々しく言う人もいますけど、
だからそれじゃ業界が腐り続けるだけだろが、という話なのでありまして、
特に私としましては、運動不足解消という目的以外では、もうこの業界に関わるつもりはありません。
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