歌ってもいいかな〜ふたりぽっちのバンド物語〜

えばらのぶお

プロローグ

プロローグ

2035年10月20日


「本日のゲストアーティストは2nd Timesのお二人ですどうぞ!!!」


その声と共に、真一と楓はスタジオに入った。「2nd Timesの本庄です」「清水です」と2人は言った。北村は二人に「お座りください」と二人に促した。


「この度は、4大ドームツアー10年連続達成おめでとうございます」


「ありがとうございます」


「ちなみに楓さん。この4大ドームツアー10年目が決まった時の心境をお聞かせください」


「はい、もう最初の4大ドームツアーからそんなに立つんだなあと、本当に長いようで短い10年でした。最初のツアーの時は、こんな大変なことになるとは思ってなくて、本当に応援していただいた皆様のおかげです」


楓は淡々と答えた。


「ありがとうございます。また、去年出されましたシングルアルバムは週間ランキング1位を6週間キープ

されたということで、それについてはいかがでしょうか」


「はい、当たり前なんですけど、CDを買っていただけるのは応援していただいている皆様ですので、本当に感謝しかありません...皆様の応援に答えられるように、2人でより良い音楽を作っていきたいです...」


「ありがとうございます、本日はお二人はどのようにして出会い、どのようにしてここまで大きくなったのか、VTRとともにお二人に迫っていきたいと思います。楓さん、お二人はどのようにして出会ったのでしょうか。」


楓と真一は顔を見合わせた。そしてクスクスと笑った。


「どうかなされました?」


北村は言った。


「いえ、少し...」


楓は前に向き直ると話し始めた。


「私たちは最初、高校の軽音楽部で出会ったんです」


********************


「もう15年経ったんだね」


大阪でのテレビ出演を終え、東京に向かう車の中で真一は楓に言った。楓は車の窓に肘をついて外を眺めていた。綺麗なオレンジの夕日が彼女の頬を茜色に染めていた。


「そうね。本当に15年しか経ってないのかしら。私にはもっと長く、深く感じた」


「本当に長かった。本当に1日1日が濃かったね」


「...真一、ねえ覚えてる?」


「何を?」


真一は楓に顔を向けた。


「17年前のあの日。私が名前を言った時、あなた大声を出しておどろいていたわよね」


「なんだよ急に、そんな昔の話」


真一は前を向きなおした。


「あの日の変な気持ち、あれもしかしたら何かが私たちを引き合わせてくれてたのかもしれないわね」


楓は照れくさそうな顔をして言った。真一はなにもいわなかった。


「....真一、私やめようと思うの」


「え、何を?」


「活動を...。音楽会から引退するわ」


「.....お前...本気か?」


真一は驚いた顔で楓を見た。車はすでに首都高に差し掛かった。

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