短編集 in2017
宇曽井 誠
兵器と青年
____或る会話と青年の思想
4PV 星1
副題 兵器と青年
ノリで書きました。
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クシャミが出た。寒くはないが……風邪かなぁ?
「ゲルブも気をつけて。あと、もし夜中に起きたら、みんなの布団をお願い」
「……自分達は体調を崩しません。腹部が出ていても、大丈夫であります」
「心配だ。いつ、何が起きるか分からないからね」
ゲルブが首を傾げた。長い金髪がサラリと肩から落ちていく。
「自分達は人間ではありません。兵器です。兵器は風邪をひきませんし、夏樹のように花粉症にもなりません」
「うっ……で、でも……見てて、心配にならない? ロートとか、特に」
考える素振りを見せてから、彼は首を横に振った。悲しい。
「夏樹は心配症、というやつですね。病院に行った方がよろしいかと」
腕を組んで、大真面目な顔でそんな事を言われてしまった。
し、心配症は病気じゃないよね? 性格だよね? う、うん。そうだよ、きっと。
「どうされましたか」
おや。体が傾いていたらしい。
何でもない、と言って、僕は手元のメモ帳に視線を移した。
_-_-_-_-_-_
彼らが創られたのは、この世から争いを無くす為と聞いた。多分、上の人達の考えは違うだろうけれど……僕にはどうでも良い事だ。
ゲルブは彼らの中で、唯一の成功例。命令に素直に従い、疑問を持たず、感情がない。兵器として最強だった。
だから、人間らしさがスッポリと欠落していた。
最初は言い表せないくらい酷かった。
意見は言わないし、望みはない。その上、戦闘以外の事は「必要ありません」と言ってしようとしない。食事にいたってはビタミン剤で済ませようとしてた。
とにかく困った子だった。あと、睡眠も最低限だったなぁ。………うん。
ある日。いつものようにゲルブが冷たい目でやって来た。
そして、いつものように「御命令を」と言った。僕はいつものようにため息を吐いた。
「と言われても、なぁ……うーん。本でも読む?」
いつものように断るかと思ったら、彼は僕の出した絵本を受け取って、冷たい床に腰を下ろした。
呆気にとられて見ていると、彼は顔を上げ僕と目が合った。
「どうされました」
「い、いや……うん。何でもない」
コクリと相槌を打って、ゲルブは本に視線を落とした。
そのまま、何度も何度もその本を読んでいた。
_-_-_-_-_-_
……そっかぁ。もう、おっきくなったんだなぁ。
「ナツキ。どうされましたか」
「んー何でもないよ?」
「じゃあ抱きつかないで下さいお父さん臭いです」
……最近、妙に心に刺さる台詞を言ってくるようになったなぁ。というか何? お父さんって何!? い、いや、僕は男だけどね! うん!
一通りゲルブを撫でてから離れると、彼はわざとらしくため息を吐いた。僕の触った所を手ではたかれる。
「とりあえず、何か本を貸して下さい。できればふぁんたじーが良いです」
カタカナの発音も、これはもうわざとじゃないかなぁ? まぁ、良いけどね。
差し出された手にいつものように本を置くと、彼は嬉しそうに微笑んだ。
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