終焉の地カナーン -濱清花楓編-
あぺ~ろん
第一章 運命 〈第一部〉
150年前、平和であった世界を神アポスは無慈悲にも転生を始めた。
ヨーロッパ、アメリカ大陸など世界の各地を次々に転生を行い、遂には、日本でも転生が始まった。
神が行う行為に、人間たちは、なす術も無くただ消えていくのを見ていることしかできなかった。
しかし、そこに一つの希望が現れる。それが神テトラだ。神テトラは、世界の秩序を守る神。それは古来、アダムとイヴが生まれるよりもずっとまえからだ。
最後の地、日本を守るため、神テトラは3人に力を与え、抵抗を始めた。
最初のうちは劣勢だった。次々に日本の各地を転生して行き、気づいてみれば、神奈川しか残っていない。
残された最後の地を守るため、3人の力を与えられしものは、自らをも犠牲にし、死闘の末に神アポスを退けた。
現在は外部からの侵入ができないように、壁と結界で神奈川は覆われている。
最終決戦の地、江の島にはこの地を守り抜いてくれた神テトラを祀る祭壇があり、そこには3人の英雄を表す三本の柱が建っている。
今日でも、人々は毎朝、神テトラと3人の英雄への感謝と敬意をこめて祈りを奉げているのであった。
「ジリジリ…。ジリジリジリ…。」目覚まし時計アラーム音が響く。
すぐに目を覚ますや否や、アラームを止め、ひと伸びしてからベットを出る。
カーテンを開けると、朝日がすでに昇っており、朝露に濡れたアサガオの花が綺麗に光っていた。
すでに季夏になっているこの時期の空気は、大変おいしい為、毎日絶対に吸っている。
いわば、一つのルーティーンだ。
その後、早朝稽古の為、寝間着から道着に着替え、足早に稽古場へ向かう。
稽古場につくと、もうすでに誰かがいることに気が付いた。
「パーン」矢が的にあたった音が響く。
「お兄様、おはようございます。今日は弓道をやるのですね」
声をかけると、お兄様と呼ばれた人間はこちらを向く。
「おはよう。これはメンテナンス後の試射ちだよ。そういえば、さっきお前のもメンテしておいたから、あとで試射ちしておいてくれな。」
そうこの人は花楓の兄である濱清陸だ。彼は器用でスポーツ、芸術、勉強と
何でもできる。いわゆるパーフェクトフューマンだ。今は花楓の武道の師匠として、指導もしている。
「いつもありがとうございます!」一言だけお礼を述べてから、早速、先ほどメンテナンスしてくれた弓を使ってみる。
新品同様のような感覚で、とても楽だ。
練習がひと段落すると、朝ごはんの準備を始める。
兄との当番制で今日は自分の日だ。
自分が登板の日は絶対に卵焼きを作ることにしている。自分が一番好きな食べ物だからというのもあるが、兄が登板の時にいじめなのか何なのか知らないけれど、毎回出してくるスクランブルエッグに対抗してというのはある。
「あんなに、スクランブルエッグじゃなくて卵焼きで。って言ってるのに、なんで作ってくれないんだろう…。」ぶつぶつとつぶやきながら手早くご飯を作っていく。なかなか見事な腕まいだ。
「ごちそうさまでした」
食事をとり終え、学校へ登校する。
「濱清さんおはようー」
「おはようございます。」
朝にクラスメートと挨拶を交わす。
これも一つのルーティーンと言っても過言ではない。
花楓が通う、ここ嶺神中学校には多くの生徒が在籍している。
全員が全員優秀な人。とは言い切れないが、それでも優秀な人は多い。
それにはある秘密が隠されていた…
それに加え、設備もしっかり整備されおり、神奈川の他の学校と比べても、群を抜いている。
学食や室内プールやその他もろもろも、ばっちりだ!
その中でも、ホームルームクラスの2年B組はとても好きな場所だ。
クラスの雰囲気がよく、居心地がいい環境だからだ。
ただ一つ少し問題もある。それが、クラスに仲の良い友達というのがいないということ。なんとも悲しいことだ。
もともと自分からがつがつ話しかけに行くキャラではないので、当たり前のことなのかもしれないが、この中学校、いや小学校をいれても一度も友達と遊んだことがないのは意外かもしれない。
この人生でも一、二番を争うような絶好な機会に遊んだことがないのは、かなりもったいない気もしなくもない。
逆に自分からは絶対に話しかけに行かない人も中にはいる。
その1人、星沢由菜だ。自分の後ろの席に座っている彼女。
なんだか、フワフワしているというかモフモフしているというかなんだか言葉では表しづらい人間だ。
今日の朝も「おはよう。はっすー。」といきなり呼ばれ返答に困ってしまったのだった…。
今もそうだ。一人で歌をのんきに歌って、しかもところどころ音を外している。
(やはりなんかちょっと変わってるなぁー)とか考えていたらあっという間に先生が来て、ホームルームが始まった。
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