第三十七話 耐える魔法少女

「どうして……こんな事に……!」


 ────は今、人生最大のピンチを迎えていた。


 あの天使との戦いの時ですら、ここまで精神的に追い込まれる事は無かった。

 かつてない窮地を前に、私の心は折れる寸前だ。


《だから飲み過ぎじゃない? って言ったでしょ~!》


 そう水を飲み過ぎた……。

 私は前かがみになってもじもじと下半身を押さえながら、女子トイレの列に並んでいる。

 まあ……その、つまりは色々と限界が来て、お花を詰みに行きたくなったという話です。

 原因はさっきも言ったように水の飲み過ぎだ。


 なぜ、私が水を飲みすぎてしまったのかと言うと、それは話はバスの中へと遡る。

 待ち合わせの場所に美月が現れた後、私達六人の魔法少女はバスに乗り込んだのが……。


 はっきり言ってその後の空気は最悪だった。

 私達はバスの一番後ろ──横一列につながった座席に、風歌さん・巴・私・美月・凛々花ちゃん・優愛ちゃんの順で並んで座っていたのだけれど……。


「海、楽しみだよね……」

「そうですね。先輩……」


 まず、私と巴は隣同士で座っているのに、さっきからこの調子で全く会話が全く続かない。

 事情を知っている風歌さんは、そんな私達を巴の横で何も言えずにオロオロとしながら見守っている。

 一方、私の隣にいる美月は、宣言通り私の正体を見破ろうと躍起になっていて、バスの外の景色には目もくれずに、私の顔を睨み続けている。

 まるで犯罪者扱いだ……。そして、その美月もまた、凛々花ちゃんと優愛ちゃんに睨まれていた。

 こちらは犯罪者扱いというよりは、親の仇でも見ているかのようだった。

 天使と戦った時はちゃんと連携出来ていたのに……去り際に美月が突き放すような事を言ったのがよくなかったのかもしれない。

 

 と、まあ……こんな有様だ。

 みんな気まずそうに俯いたり、困惑したり、あるいは睨み合っているばかりで会話が全く無い……。

 どう見てもこれから海に遊びに行くという雰囲気じゃなく、私達六人が座るバスの後部座席は静かな緊張感に包まれていた。


「……んっ」


 そして、私はまた水筒に口をつけ、水を飲んだ。

 暑さで喉が乾いて──というより、会話が無い気まずさに耐えきれず、なんとなく飲んでいるといった感じだった。


 その後も会話が無いまま重し苦しい空気が続いたせいで、私は水を何度も、何度も飲んでしまい……限界が来た。


《だから言ったのに~!》

 

 ああ、本当だ。どうして私は自分の限界を過信して、ヒカリの忠告を聞かなかったのだろう。

 後悔の念に駆られながら私は、バスがサービスエリアに止まった瞬間、すぐに飛び降りてトイレに向かったのだが……遅かった……。

 女子トイレは既に、他のバスや車から降りた人達の列が出来てしまっていた。


「そんな……」


 私は絶望的な気分になりながら、その列の最後尾に並び──そして、今に至る。


《自業自得でしょ~!》

《うっ……》


 何も言い返せない……。

 どうして私はバスの中であんなにも水を飲んで……後悔してもしきれない。

 あんなに飲まなければ、今こうして苦しい思いをしながら列にならぶ必要もなかったのに……。


「まだ……?」


 私はどうか少しでも列が進んでいますようにと祈りながら、冷や汗をかきながら顔を上げる。

 が、無情にも列はほとんど進んでいなかった。


「うぅ……」

「沙希さん? 大丈夫ですか?」

「もう少しですよ……頑張って……」


 優愛ちゃんと凛々花ちゃんには悪いけど、二人の励ましは気休めにもならなかった。

 トイレを我慢するのがこんなにも……こんなにも苦しくて、孤独だなんて……。

 辛い……。本当に辛い。お腹がたぽたぽで、気を抜くと今にも漏らしてしまいそうだ……。


 これは後で調べて知った事だが、女性の膀胱は男性よりも僅かに容量が少ないらしい。

 そのせいか男の身体の時よりも、かなり限界が早かった気がする。


「頑張って、沙希ちゃん! ほら!だいぶ列が進んだよー!」


 風歌さんも私を励ましてくれるけど、そんなに進んでいるような気がしない。

 列はまだまだ終わりそうにない……


 ほんとに間に合うのか? もし間に合わなかったら、私はここで漏らしてしまうのか?

 中学生二年生なのに、こんな人が大勢いるサービスエリアで!?


 最悪の想像が頭をよぎり、私は炎天下の中なのに恐怖で肌寒さすら感じていた。

 そもそも、サービスエリアの女子トイレがこんなにも混むものだったんなんて知らなかった。

 いや、家族旅行や修学旅行で知ってはいたけど、今までは自分には関係ない事だと思っていたのだ。

 実際、私は本当なら男だし関係ないわけなんだけど……。


「……って、そっか!」


 そうだ! 関係ないじゃないか!

 私、本当は男の子なんだから、沙希の姿のままわざわざ普通に女子トイレに並ぶ必要はなかったんだ!

 あの空いていて全く列の無い、男子トイレに行ってもいいんだ!

 まるで天啓を得たような気持ちだ。一体、今まで何を悩んでいたのだろう。

 この状況を打破する明確な答えを得た私は、男子トイレにフラフラとした足取りで向かおうとした。


「沙希ちゃん!? 駄目だよー!? いくらトイレに行きたいからって男子トイレはー!」

「え!?」


 ……だが、なぜか風歌さんに手を掴まれ、私は引き止められてしまった。

 

「ふ、風歌さん!? 離して……離して下さい!」

「駄目だってばー!」


 風歌さんの手を振り払おうにも、あまり動くとこの場で漏らしてしまいそうで、強く抵抗できない!


 なんでだ!? なんで止めるんだ!?


《いや、なんでって……それは今の勇輝が沙希の姿だからでしょ~?》

《……あ。ああ!!》


 しまった! そうだった!

 風歌さんからすると、今の私は精神的に追い込まれて男子トイレに入ろうとしている女の子なのか!?

 それなら風歌さんが私を止めるのは当然だ……理解出来た。

 理解出来たが──それでも、一度本当は男子トイレに行けるのだと意識すると、もう駄目だった。


「離して! 行かせてください! もうすぐそこにトイレ……トイレが!」


 どうしても諦めきれない!

 変身を解除すれば、すぐにでもトイレに行けるのに! ──と思えてしまう。

 そのせいで、さっきよりも尿意を耐えるのが辛く感じる。


「早まっちゃ駄目ですよ沙希さん! ほら! もうすぐ列も終わりますから!」

「いくらトイレに行きたくても男子トイレは駄目ですよ……!」


 諦めきれずに尚も男子トイレへと向かおうする私を、今度は凛々花ちゃんと優愛ちゃんも止めに入った。

 くっ……尿意を我慢したまま両手を三人に抑え込まれてしまっては、もう私は一歩も動く事も出来ない!


「凛々花ちゃんも優愛ちゃんも離して! 個室使うから!」


 それならばと、私は今度は説得を試みるのだが、


「だから、駄目だって! しかも沙希ちゃんみたいな美少女が男子トイレなんて! 絶対、駄目だから!」


 当然そんな意見は受け入れられず、男子トイレに行くことが出来なかった……。


 その後も、物陰で変身解除をしてから男子トイレに行けばいいのでは?と考えて列を抜けようとしたら、「まさか、物陰でするつもりなの!? 駄目だって! 女の子がそれは!」と誤解されて、また止められてしまった。

  こういう時にからかいながらもフォローを入れてくれそうな巴は、美月と一緒にどこかに行ってしまっている。


「うぅ……」


 泣きそうだ……。

 もう今の私には、途中で漏らさないように耐えながら、大人しく女子トイレの順場を待つ事しか出来ない。


 だが、落ち着け……私。私はこういう窮地の時のために私は修行をしていたはずだ……。


「────ふぅ」


 私は目を閉じ、深呼吸をしながら体内に魔力を循環させる。

 ────これは身体能力強化の魔法の応用だ。体内に循環させた魔力で肉体をコントロールすれば、しばらくの間は尿意に耐えられる……!



《だから~! それはそういう事のために教えたんじゃないって言ってるでしょ~!》

 




 そして、それから五分後──私は永遠にも思える列の待ち時間を乗り切り、女子トイレの個室へと入った。

 人生で最も過酷な五分間だったかもしれない……。

 

「はぁ~……危なかったぁ……」


 私は安堵の溜息をつきながら、便座に座るために下着に手を伸ばした。

 

《ちょっと~!? なんでその姿のままでトイレをしようとしているの~!? 個室なんだから変身解除して勇輝の姿でやればいいでしょ~!》

「あ、そうだった……」


 ヒカリからの指摘を受けて、私は慌てて下ろしかけた下着から手を離した。

 危ない、危ない……。またヒカリにしばらく軽蔑した目で睨まれる事になるところだった。


《ほら~! さっさと魔宝石オーヴァム・ストーンを出す!》

《分かってるよ……》


 ヒカリに急かさせれながら、私は変身を解くために魔宝石オーヴァム・ストーンを取り出した。


「ん?」

 

 その時、誰かがトイレのドアをこんこんとノックする音が聞こえてきた。


「あのー入ってますよ!」


 勇輝の姿に戻ってから返事をしたら、声で男だとバレてしまう。

 なので、私は変身を解除するのをやめて、沙希の姿のまま返事をした。

 

 が、返事はない。


「もしもしー?」


 早くトイレを済ませたいのに……。

 返事が無いなら、このまま黙って変身解除してトイレを済ませてしまうか。

 と、私が考え始めた時、ようやくドアの前にいた人物が喋り始めた。


「……私。星空美月」

「ええ!?」


 ノックをしたのは、なんと美月だった。


 ────これは……まずい。

 

 何がまずいかと言うと、元の姿に戻れば、声の低さから私の正体がバレてしまうので、このままだと勇輝おとこの姿に戻る事が出来ない事だ。

 かといって、このまま沙希おんなの姿のまま用を足す事も出来ない。

 なぜなら、ヒカリが怒り狂って、私を変態だと罵ってくるからだ。


 つまり……私はドアの前に美月がいる間は私は変身を解く事が出来ず、用を足す事も出ない!

 なんてことだ……せっかく個室に入ったのに私はまた膀胱の限界と戦う事になってしまった。

 

「何の……用……?」


 私は尿意に耐え、呼吸を荒くしながらなんとか美月にそう問いかけた。


「今日、私が来たのはあなたの正体を見極めるため──バスに乗る前にそう言ったのは覚えてる?」

「あ、ああ……おぼ、えてるよ?」


 お腹が、膀胱が痛い……苦しい……。こうしていちいち相槌を打つのも辛い……。

 もったいぶってないで、さっさと本題に入れってほしい……もしくは今すぐここから立ち去るか。


「あなたの今のその姿──それは本当にあなた自身の姿なの? 私にはそうは思えない。いや、そうであるはずがない」


 ああ、やっぱり。聞きたいのはその事か。

 予想通り、美月は自分の姉と同じ姿をしている沙希わたしが何者なのかと、疑っていたのだ。

 ただ一つ予想外な事があるとすれば、それは────

 

「な、なんでそんな話をここで……? 後で違う場所でするんじゃ……だ、駄目なのか?」


 本当に一体、どういうつもりなんだ?

 嫌がらせなのか? それとも──── 


「どうして? あなたが何者なのか……ただ、それだけを答えるのに、どうして場所を移す必要があるの?」


 大いにあると思うけど……。

 世界を守って消滅した姉と、瓜二つの姿をした人間の正体──なんて重要な話を、この子は本当にこんなトイレの個室のドア越しに聞きたいのか?

 

「声……震えてる。それは何か後ろ暗い事があるから?」


 聞きたいようだ……。

 全く気にしてる気配がない。本気か? この子は……。


「い、いや……声が震えてるのは……トイレを我慢しているからで……」

「……? 今トイレにいるじゃない。どうして我慢をする必要が?」


 いやいや! 私の事情を抜きにしても、ドアの前に人がいて、しかも話しかけてきてるのにそのまま用を足せる人間なんていないだろ!

  常識がないのか!? この子は! もういい加減、私は美月の空気の読めなさに腹が立ってきた!


「と、とにかく私はその……している時にドアの前に人がいたら嫌なの! あ、後にしてよ、その話!」


 私は声に怒りをにじませながら、ドア越しに美月にそう言ってやった。

 

「……たしかにここでするような話じゃないかもね。また、後で話の続きをしましょう」


 すると、美月は意外な事にすんなり私の話を聞き入れ、ドアから遠ざかっているのが音と気配から察する事が出来た。


「え、ええ……」

 

 結局、後でもいいのか……。

 なら、なんで本当にあのタイミングで聞いて来たんだ?


 とにかく、私はひとまず変身を解除するために魔宝石オーヴァム・ストーンに手を伸ばした。


「……やっぱりこれだけは言わせて」

「はぅ!?」


 が、なぜか再び美月が戻ってきて、ドア越しに私に話しかけてきた。

 そのせいで、私はまた変身解除の機会を失ってしまった……。


「さっきは……後にするって……」

「一言だけだから……」


 駄目だ……この子、さっきから人の話を全然聞いていない……。

 多分、このまま自分が話したい事を話し終えるまで、絶対にドアの前を動かないつもりだ。 


「私……あなたが何者か疑ってはいる。けど────」

「うぅ……」


 美月が何かを話し始めたようだけど、今の私はそれどころじゃなくて返事すら出来ない。

 我慢しすぎて膀胱がズキズキと痛み、全然内容が耳に入ってこない。


「くっ……!」


 もう駄目だ! 限界だ!


 とうとう尿意に耐えられなくなり、私は一旦腰を上げて沙希の姿のまま下着を下ろした。

  

《あ~! 駄目って言ったじゃない! するなら変身解除してからにしてよ~!》


 そんな私をヒカリがさっそく批難してきたが、目の前に美月がいるからそれは出来ない。

 

《念のため、念のためだから……。美月の話が終わったらすぐに変身解除するから…》


 そう、念の為だ。

 美月の話が長引いた時に備えて、せめて下着や服が濡れる事を避けれるようにしただけの事だ。

 けど大丈夫。私は耐えてみせる! 絶対にこの姿のまま漏らしたりなんかしない……!


 私は便座に座り直しながらそう決意し、体内にさらに魔力を循環させ、痛みと尿意をコントロールして耐える。

 

「……聞いてるの?」

「ああ、うん……聞いてる……から……」


 集中しろ──魔力を集中して痛みを和らげるんだ……。


「う、うぅ……」


 けど、痛みはコントロール出来ても、尿意まではどうにもならなかった。

 なんせいくら身体を強化しても、膀胱の容量には限界があるからだ。


 こうしてる今も、刻一刻と私の限界が近づきつつある。


「じゃあ言うけど……私、あなたが何者か疑ってはいるけど、尊敬はしてる。私が今こうして生きてるのは、あなたがあの時、諦めなかったからで────」


 これだけ──と言いつつ美月の話は前置きが長く、まだまだ続きそうだ。

 なんだかいい話をしてるようだけど、やはり痛みのせいでほとんど頭に入ってこない。

 そもそも、女子トイレの中には他の人だっているだろう。何でこんな話を、今ここでするんだ?この子は……。

 やっぱり、私への嫌がらせが目的なのか? それとも、ただの天然で絶望的なまでに空気が読めないだけなのか……。


 どちらにせよ、美月の話はまだまだ続く。


「でも、あなたのその姿──その姿は私にとって大切な人にとてもよく似ている。もうこの世界にいない……。私の大切な人に……」

「そう……なんだぁ……」


 私は痛みに耐え、息を切らしながらなんとか美月の話に相槌を打った。

 もう体内に魔力を循環させても、どうにもならないほどに痛いし、苦しい……。


 だんだん頭もぼうっとしてきて、息苦しさで顔も紅潮しているのが自分でもよく分かる。


「ええ。だから私はあなたの今の姿の事を巴に問い詰めて、その時に今回の旅行を知った。そして、あなたの正体をこの目で見極めるために参加したんだけど……って」

「……っ。あ、ぐぅ……」

「大丈夫? さっきから息が荒いけど、そんなに調子が悪いの? ……薬とか買ってきたほうがいい?」


 私がもらしたうめき声を聞いて、美月は今更……本当に今更になって、私の体調を心配し始めた。


「だい……じょうぶ。はぁ……少し、したら……ぁ……体調もよくなる、と思う……からぁ……」

 

 だから、早く話を終えてどこかに行ってほしい。

 私は言外にそんな思いをにおわせながら、息を切らしながらなんとか美月に返事をした。


「そう……お大事に。続きは後でホテルに着いてからにしましょう」

「ぁ、ああ……そう……しよう。それじゃあ……また後で…………」

「ええ、後で」


 そう言うと、美月はようやく……本当にようやく、ドアの前から遠ざかり始めた。

 また戻ってくるかもと心配し、少しだけ待ってみたがその様子はない。


 ────ああ、これでようやく変身を解く事が出来る……。

 よかった。もう我慢しなくていいんだ……。


 安心して、私の口から深い安堵の溜息が漏れる。

 

 けれど、安心したせいで、私は集中を解いてしまい────


 


 が勢いよく流れ落ちる音が、個室の中に響いた。


《……ねえ、この音。まさか……》


 そう、そのまさかだ。

 せっかく、我慢したのに……最後の最後に油断して、変身を解くのが間に合わなかった。

 


《ちょっと……ちょっと~!? なんでそのまましてるの~!》

「はぁ、はぁ……んんっ」


 ああ──気持ちいい。

 我慢した分、とてつもない開放感が私を満たしていく。


「あぁ……」


 私は恍惚としながら、深い吐息を漏らす。

 かなり我慢をしていたせいか、流れ落ちるの勢いはとどまる事を知らない。

 ぼんやりとした頭で流れ落ちる水の音を聞きながら、私は「どこか川のせせらぎの音に似ているなぁ……」なんて思っていた。


「────ぁ」


 の勢いは徐々に弱まっていき、やがて音が完全に止んだ。

 私は流れ出た水の後始末をするために、トイレットペーパーを手に取り、で濡れた股間へと手を伸ばし────


《え……何してるの~!? 勇輝~!? 駄目、駄目! 駄目だってば! あ、ああ~……!!》


 ヒカリが何か叫んでいたが、頭がぼんやりとしていたせいでそこから先のことはよく覚えていない。

 用を終えた後、ふらふらになりながら立ち上がってなんとか個室を出た記憶しかなかった。


 そして────


《最ッ低! もう勇輝とは口聞かないから!》


 やっぱり、トイレを出た後もヒカリはすごく怒っていた。


《悪かった……本当に悪かったよ。でも、さあ……》


 不可抗力だったんだよ……と言いかけるが、そんな言い訳も謝罪も怒り心頭のヒカリには通用しなかった。

 ヒカリは私の言い訳にかぶさるように念話で怒鳴りつける。


《でもじゃないよ! 沙希の身体であんな、あんな事を~……勇輝の馬鹿! 変態!》

《へ、変態!?》


 結局、この後何度も謝ってもヒカリは許してくれなかった。

 しかも、後々この時の事を事あるごとに何度も掘り返されて、その度にヒカリに白い目で見られるハメになってしまうのだった……。

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