机上探偵―Shiroー

ゆずみかん。

プロローグ――聖域


 木漏日こもれびあさがおの前に、一人の探偵が居た。


 名を『シロ』と名乗った探偵は、机の上に座っていた。

 長く白い髪を右手でもてあそびび、あぐらを掻き、こちらをその大きく無機質な碧い瞳で見やるその姿は、まるでこの世の者とは思えなかった。


 しかしながら、その実態を、あさがおは知っている筈だった。

 そう、机の上に座る探偵は、なのだと。知っている筈だった。


 珍しい白髪の影響か、それとも碧い瞳の所業せいなのか、あさがおは考えていた。

 目の前の少女から発せられる、謎の圧力の原因を。


 だが、あさがおは思考よりも早く、その答えを知る事になる。

 自身の本能が、考えるよりも早く、それを体に伝達したのである。


「犯人は……小林灯火、彼に決まっている」


 シロから発せられたその言葉を聞いて、あさがおは真実に追いついたのだ。

 聖域に座る探偵を、机上探偵であるシロを見て、あさがおは確信したのである。




「はぁ、こんな事件……」


 


 聖域つくえに座る彼女は……悪魔よりも恐ろしく……




「机の上で、充分だ」



 神よりも、神々しいのだと。

 

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