鉄人ファフニール
大地
プロローグ
19世紀のイギリス・ロンドンの人々の間には奇怪な事件の噂でもちきりだった。
事件内容は強盗と、それに伴う殺人。それだけならばごくありふれた事件だが、これが単なるありふれた盗みではないことを多くの人が語っていた。
ある子供は自分よりも何倍も大きな大男だったと言った。
ある浮浪者は腕が長かったと言った。
ある貴婦人は乗っていた馬車を一殴りで粉々に砕かれたと言った。
一見バラバラに見える目撃証言の中で共通しているのは、犯人は普通の人間よりも大きく、体から常に煙を吹き出しているところ、そして目当ての物、主に宝石や、蒸気エンジンの補修や交換に使われるパーツ、エンジンそのものを盗み出すと、眩いばかりの光を放って消えてしまうという点だった。
今夜もまた、霧の都ロンドンにそれは現れた。
夜霧に紛れ、街を闊歩するその姿に、浮浪者は腰を抜かし、窓から見ていた人々は息をのんだ。
今日のお目当ては宝石店のショーケースに入ったダイヤモンド。通報を受けて駆け付けた警官隊の銃撃をものともせず、逆に警官隊を蹴散らし、パトカーをひっくり返して強引に道を開かせ、その太い両腕でガラスを打ちこわし、まんまとお目当てのものを入手し、姿を消したのだった。
警察の必死の操作にもかかわらず、それの行方や目的は何一つ解らないまま時間だけが過ぎていった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます