ネコ科会議

19

 

 「緊急ネコ科会議、招集!」

 議長であるライオンがそう叫ぶと、わらわらとネコ科の動物たちが集まってきました。

「なんだ?突然に」

そう訊いたのはヤマネコです。大体集まったところでライオンは答えました。

「皆昨日の天帝様がおっしゃったことを聞いただろう」

「ああ。一月二日の朝に挨拶に来た順で十二番目まで一年間大将になれるっていう」

イエネコは言いました。

「おい、それ間違ってるよ。元日だよ」

オセロットが訂正しました。

「え?ネズミがそう言ってたけど」

「お前騙されてるよ」

「えっ!?本当に?」

イエネコは他の参加者にも尋ねましたが、二日と言うものはいませんでした。

「ああ……。それで、なんで会議を?」

イエネコの質問にライオンが答えます。

「うむ。それはな、全員で競うよりもネコ科の代表を一人選んで、皆で助けた方が確実に十二番目までに入れると思ったからだ」

「うーむ、十二番目まで大将になれるんだろ?だったら全員で競い合っても良いんじゃないか?」

トラが不服そうに言いました。

「いや、これまでのお前達を見ていて思った。同じネコ科なのに喧嘩が多い、と」

ライオンの言葉に一同はビクッとします。心当たりがあるのです。

「そんなだと、道中ネコ科同士で鉢合った時に、他の動物たちそっちのけで喧嘩を始めるんじゃないか、という疑念がある」

「なるほど」

トラは納得したようです。

「さて、誰がその代表になるのか、だが……。なりたいものはいるか?」

ライオンの言葉に三匹が反応しました。

「脚の速さなら俺に任せな!」

「山のことは熟知している。自分がふさわしい」

「いや、広い世界を知っている私です」

チーターとトラとピューマです。

「何を言うか!」

「お前こそなんだ!」

「これだから井の中のネコは……」

「あんだと!?」

いつも喧嘩ばかりのネコ科。すぐに喧嘩になりかけましたが、

「大事な挨拶の前だろう。怪我したら誰も得をしない」

とライオンが言うと、しぶしぶ爪を引っ込めました。

「他に参加したい者はいないか?」

ライオンが皆に尋ねます。

「僕の脚は短いから……」

「こたつで寝てたいなぁ。挨拶には行くけど」

「狩りごっこの方がいいな!」

皆が言うことを聞き、

「いないようだな」

とライオンは締めました。

「で、どうやって決めるんです?」

オセロットが訊きました。

「そうだな、それでは一頭ずつ自己アピールをしてくれ。その後全員の投票で一番票が多かった者が代表だ」

誰からも異論は出ませんでした。それでは、とライオンが頷き、言います。

「ではー、チーター!」

「おう、俺、チーターがネコ科のみならず全動物の中で一番脚が速いことを疑うものはいないよな?ま、そういうことだ。走ることについては俺に任せな!」

「アピールは以上だな。では次、トラ!」

「ああ、オレの地元は天帝様のご住居の近くだ。当然、その辺りの地形や森についてもよく知っている。草原を走るだけの誰かと違ってな」

「なんだと!」

「チーターは静粛に。トラも不必要な挑発はしないこと。では次、ピューマ」

「はい。私には広い知識があります。草原や森のみならず、ジャングルなんかまで。今回は何があるかわからないレースです。どんな妨害にも打ち勝つには、知識が必要だと考えます」

「以上だな。それでは少し考える時間を与える。しっかりと考えるように」

ライオンがそう言うと、参加者はわいわいがやがやと話始めました。

「ヒョウはどうする?」

「チーターはどちらかというと短距離選手だから……」

「たーのしー」

頃合いを見計らってライオンが言います。

「では、これから投票に入る。チーターが良いと思う者」

結構いました。

「トラが良いと思う者」

チーターと同じくらいいました。

「ピューマが良いと思う者」

ぱらぱらといました。

ライオンが数えて言いました。

「僅差だがトラが一番多かった。よって、代表はトラとする!」

その言葉に候補者は、

「よっしゃあ!」

「民主主義は死んだ!」

「残念です」

と三者三様の反応を示しましたが、最後には、

「買ったからには一番乗りを目指せよ」

「知りたいことは何でも訊いてくれ」

と言ってトラを認めたようでした。

「それでは、当日の援助体制を決める。マーゲイは迷いやすい場所の木に潜んで声真似し、他の動物たちを攪乱してくれ。サーバルは……」


 一月二日。

「ああ、やられた!」

トラは三位でした。

「確かに、家を出る時間の規定はありませんでした」

ピューマが悔しそうに言います。二位のウシは夜中のうちから家を出て歩いてきたのです。

「ウシはまだいいさ。ずるいのはネズミだ!」

イエネコが憤慨したように言いました。ウシの背中に乗り、天帝様のご住居の前で出し抜いたのです。これにはネコ科一同憤慨し、すぐにネズミへの抗議が採択されました。

「ウサギが四位に着けたのは驚きだったな」

ウサギは以前、競争で慢心しカメに負けたことがありました。今回は反省し、ちゃんと走った様です。

 ライオンはその様子を見て、

「少しは打ち解けたようだ」

と呟きました。

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ネコ科会議 19 @Karium

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