第11話 探求I

彼女は大きな買い物袋を二つ持ち、ホームの淵にいた。


「っと、今のは危なかった、大丈夫か?!」

「あっ……あり、がとう、ございます」


様々な鉄道の乗り換えの要所であるこの駅は、普段から利用客が多い。

夕方の時間は特に。


「あなた……同高の一年……?」

「まあ……」

「私もっ、ねえっ」


ミオはレイに掴まれた手を離さなかった。


「あなた、私を見つけたでしょ

どうやって?こんな人の多い中で……?」


「そりゃ、たまたま……」


「……そうよね……なにか、変な感じがしたの

ごめんなさい、あらためて、ありがとう、助かったわ」


「どういたしまして」


ミオはレイに単純な興味をもった。


「私、b組の天沢ミオ

あなたは?」

「俺も……b組

月島レイだ」

「うっそ、お互い認識してなかったのね」

「まだ入学して3日目だし」

「そうよね

ねぇ、部活は?決めた?」

「俺は……硬式テニス部に入るつもりだ」

「いいじゃん、テニスやってたんだ?」

「ああ、ミックスダブルスをやりたくて、この学校に決めたから」

「へぇ、私もテニス部に入ろうか迷ってたんだ~

月島君が入るなら私も入ろうかな」

「……」

「こけそうになったら、また手を引いてくれそうだから」

「はは、次はわかんねーよ」

「うん……理由なんて、なんでもいいの」


到着した電車は、やはり多くの客を乗せていた。


「天沢さん、これに乗るのか?」

「ええ、月島君は、乗らないの?」

「……乗る」


これは準急だった。

レイはこの後に到着する急行に乗りたかったが、なんとなく、ミオの側を離れたくなかった。


「それ、一つ持つよ

人多くて危ないし」

「優しいのね、ありがとう」


レイは自分とは反対のほうの買い物袋を取った。


「……」

「……?」

「帰り道に買い物したのか?」

「え、ええ、最寄りより、安く売ってるから」

「すげー、えらいな」

「うち大家族だし、親が共働きだから、助けないとって」

「そっか……」


「さっき……どうして、こっちの袋を取ったの?」

「え……と、重たそうだったから……?」

「ふうん、よく分かったね」

「……」


電車は小刻みに上下に揺れる。


ミオの体の重心が後ろに倒れかけた。

レイにははっきりその感覚質が現れなかったが、摩擦力の様子を見てミオの体を支えることができた。


「気をつけろよ……貧血か?」


「ううん、わざと倒れてみた」


「は……」


「電車の揺れのせいだって、思わなかったのね」


「……」


「ねぇ、あなたに手を掴まれたときから、ずっと感じてた違和感の正体、教えて

あなたには、何か特別なものが見えているの……?」


ホームに転落しそうだった自分。

それを助けたレイ。

ミオがレイに拘る理由は、出会いの中にひとつあった。

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