第11話 一生懸命
智亜美は神経を集中して手の中のそれを回転させた。
「よし、第一段階成功だぁ」
いつになく真剣な眼差しである。
智亜美は続けて顔を横に倒し、指先でそれを回転させる。
「よ~っし半分までいけたっ」
今の智亜美には周りのテレビの音さえも耳に届かない。
「ここから本気モードだよぉ♪」
さらに気合いを入れる智亜美。
彼女は今、とてつもない集中力を発揮していた。
そ~っとそ~っと手の中のそれを回しながら集中力は高まって行く。
「ふぅ…あとは最後の仕上げだぁ」
そう言うと智亜美は手の中でそれを持ち替えた。
細心の注意を払って仕上げにかかる。
少しでも余計な力が加われば全てが終わりなのだ。
大きく深呼吸をして、指が震えないように力を込める。
そしてついに…
最後の砦が外される。
カリッ…
「やったああああ」
何事もなく、無事に目的を達成したのだ。
「瑠璃さん見て見てぇ~」
智亜美は出来上がったそれを瑠璃に見せている。
一生懸命な努力で達成した清々しい笑顔であった。
「なぁにそれ?」
瑠璃は目を丸くして問う。
「お菓子のToppiだよ~♪周りだけ食べてチョコだけにしたんだよ~」
「すごいでしょ~」
瑠璃はどう答えて良いのか困った表情である。
そして後ろから怪しい陰が智亜美に近寄ってきた。
「こらっ!」
「まぁ~たあなたは私の隠していたおやつ勝手に取り出して~」
智亜美の母親が角を生やして立っていた。
「その素敵な努力のお祝いにいいものあげるからこっちへいらっしゃい!」
耳を引っ張られ連れていかれる智亜美であった。
ちーーん
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