第12話 課題の分離
「はっはっは。不毛だなぁ」
よく女性の笑い声を、『鈴のようにコロコロと笑う』と表現するが、彼は成人男性なので、金属の鈴ではなくどちらかと言うと、土で作った焼き物の『土鈴の音』のような感じだ。もちろんイヤな感じはまったく無く、清んだ少し低音の「カラコロ」という音の感じがした。
「お前さんの悩みの本質を言ってやろう」
ずいっと彼の顔面が近くに寄る。
「お前さんが悩んでいる部分は、自分ではどうする事もできない『他人の領域』の事に口出ししようとしているのだ。他人が決定する事なのだから、いくら悩んでいても変化が起こる事はまず無いぞ。」
言われて初めて「はた」と気付く。そう。自分ではどうする事もできない、手の届かない領域の事で悩んでいたのだ。
「ならば、まずは自分の領域の事を解決する方が先だ。それで悪い方に転がってしまえば、それは仕方ないと諦めるしかないわい」
彼の顔が離れ、私は自分の問題に向き合う。筆を取り、自分の仕事を進める。
「わかった様子だな。では、無理せず頑張れ」
励ましを背に、筆を進めた。後は他人次第なのだから。
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