烏丸 ノート

プロローグ

白の魔法使い

 村の外れにいる小さな小屋には、魔女がいた。


 村の人から魔女は、風邪や、骨折、軽い病気などを直してくれる今の病院のようなものだった。

 今もまた、小さな命を助けようと魔女の元へと駆け付ける子がいた。


 コン、コン、コン


「はい」

「あ、あの……ま、魔女さん、ですか?」

「はい、私は魔女ですよ、あなたは?」


 ニコリと少女に喋りかける。


「私、サラっていうの」

「ねぇ、サラちゃん今日はどうしたの?一人なの?」

「あの、ね?お外で遊んでたら……」


 女の子の胸の中には、血を流した子犬がいた。

 子犬の怪我は深かった。

 怪我をしてから時間が経っており、状態は悪化していた。

 魔女は黙って、子犬の胸に手を当て、心臓の音を聞いた。

 トクン…………トクン…………

 とても弱々しかった。今すぐにでも無くなってしまいそうな、小さな音だった。

 このまま放置しておけば死んでいた。


「ありがとうサラちゃん、教えてくれて。すぐに治すね」


 魔女はサラに向かって笑顔を向けた。

 そして子犬に手をかざし、回復の魔法を唱えた。


「クー・レ・シファー」


 魔法を唱えると、子犬にかざしていた手に魔法陣が現れ、みるみる子犬の怪我を直していった。


「わぁ!凄いです魔女さん!怪我がしゅっと治っちゃいました!」

「うん、これもサラちゃんが私に教えてくれたからだよ」

「えへ、えへへ~♪」


 魔女の一言ににまぁっの顔を緩ませるサラ。

 その笑顔を見て魔女は笑った。


「じゃあサラちゃん、その子の事、よろしくね」

「うん!魔女さん任せて!私しっかりこの子の面倒見る!」


 そう言ってサラは魔女の家をあとにした。

 魔女はサラが見えなくなるまで手を振っていた。

 またサラも、魔女が見えなくなるまで手を振っていた。

 サラは家まで走って帰り、魔女と話した事を話そうとした。


「お母さん!聞いて!さっき白い髪の魔女さんにね、この子助けてもらったの!」

「よかったわねぇサラ、ところでその魔女って『白の魔法使い』の事?」

「しろのまほうつかい?ってなに?」

「昔から世界を回って魔法を勉強している方の事よ」

「へぇ~、でもでも、魔女さんすっごく可愛かったよ!」

「白の魔法使いは代が変わって行くのよ、次の代に自分が学んだ事を全て託して……」


 魔女は語った。

 出会いがあれば別れがある。

 そしてその出会いは必ず未来へ繋がる。

 私は出会いを求めて世界を旅する魔女──



 ──それが『白の魔法使い』レイナ=ティフォードであると──

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