第9話 黒龍襲来中2

不幸中の幸いにも私が掴んでいた部分だけは、布が残っていてくれた。そのおかげでなんとか最悪の状態は避ける事ができたが、ここからどうすればいい?龍の前でほぼ全裸になった時、人はまず目を瞑る。しかし、考えられる事など何一つもない。心の中には穏やかな湖と草原が広がっていた。そうだ、その草原にはロケットを作ろう。そして宇宙に飛んでいくんだ。


「ごめんなさい、まさかこんな事になるとは」


さっきの可愛らしい声が聞こえる、これは龍のものだ。


「いえいえ、私の布切れがボロボロなのが悪いのですよ」


私は落ち着いて答えることができた。


「ところで君はミカの友達?なのかな?」


「友達...というか恩人です」


なるほど、これはこれは、龍の恩人になるような事って一体何だろうか。まぁ、ミカのことだからあり得ない話ではないが、龍のトラブルを解決する事が出来るなんて本当にすごい。しかも、黒い龍だ、黒い龍のトラブルは龍のトラブルの中でも筋金入りの物だろう。


色々聞きたくなってきた、そもそも、この龍は一体何者なんだろうか。個龍情報っていうのは聞いても良いものなんだろうか。龍の名前っていうのはなんか聞くのが憚られるような、物凄く大切な物なの気がする。まぁ、でもこのまま疑問をそのままにしておくとかなり後悔してしまうような気がする。とりあえず聞いてみよう。


「えっと、つかぬ事をお聞きしますが、その、あなたは一体何者なんですか?」


「あー申し遅れました、私、ニーズヘッグと申します」


「いえいえ、こちらも急に変な事を聞いてしまい、申し訳ありません。ニーズヘッグというと、北欧の?」


「はいー、多分その認識で間違いないと思います」


「なるほどね、どうりで立派な訳ですな」


「いえいえ、私なんてミカさんと比べたら...」


「はははは、いやいやお姿の美しさ、荘厳さはミカにも勝っていますよ」


直後、後頭部に重い一撃を感じ、私の意識はブラックアウトした。

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