第5話 御前ミカという人物3
まずはミカのお姫様抱っこ状態を解除しなければなるまい。そう思い、私はより一層の力を剥く手に込めた。しかし、何かおかしい。
手に感じる手応えがないのだ。まるで摩擦が0になったかのように、あまりにも皮が剥ける、というか滑り落ちているような?
ここで私は異変に気がついた。
ないのだ。
そこに君がいることを私は当たり前に思っていた。
しかし、大切な日常はいとも容易く、奪われてしまった。失くした時にこそ、自分が弱いただの人間であるということを自覚させる。
そう、ないのだ。私の竿が、私こと創の竿がきれいさっぱり無くなっているのだ。幸いなことに痛みはない。痛みはないがこれでは剥きようがない。つまり、能力が発動できない。
こんなことを思っていると、ズボンの裾から赤黒い液体に満ちている球体が出てきた。
結構大きな球体だ。
その球体はふわふわと宙を漂い、ミカの耳の側くらいで静止した。
よく見ると、その中には分断された私の竿らしきものが入っている。
「あの、ミカさん。なぜ、こんなことが出来たのでしょうか?」
私は驚く程冷静であった。竿がない今、むしろ究極の断捨離とでも言おうか、自分と確かに向き合えているような気がする。
「実はね、こんなこともあろうかと思って、創さんが寝てる間に、私の血を注射器で注射しておいたの。で、その血を使って創さんの槍さんを切り取ったのよ。」
こんなことが素で出来るんだものー、そりゃ勝てませんわー。
「あ、でもね創さん、私があげてばかりじゃ、創さんが気を使うと思って、創さんの血も私に入れておいたから!変に心配しないでね!」
あらー、60歳で、ましてやこの日本という安全な国家で注射器を使い回す日が来るとは、人生何があるか分からないね。
「でね、本題なんだけど、この竿返して欲しいよね?」
そりゃもちろん返して欲しいに決まっているだろう。しかし、ここで落ち着いてよく考えてみる。私の竿がなくなってしまえば、確かに私の日常や能力における喪失感は想像を絶するものだろう。だが、逆にこれから確実に起こるあの三日三晩の儀式という非日常に対してはどうだろう?全く疲れることなく、むしろ私が主導権を握れてしまうのではないか。これは、逆転勝ちなのではないだろうか?
「あ、そうそう、この取り出した竿なんだけどね。実は私にくっつけることも出来るの。
つまり、槍さんで創さんをガン責めできるの。ふふっ、創さんの矛と盾はどちらが強いのかしら?しかも、近親相〇って気持ちいいらしいから、創さんを槍さんで突くという、さながら本人相〇はさぞ、気持ちいいことでしょうね。今から楽しみで仕方ないわ!」
ふぅ、こりゃー敵わねぇや。私は素直にごめんなさいすることにした。
「ミカ様、私はミカ様という最愛の妻がいながら他の女性と接触した愚かな人間でございます。私は自分の罪を悔いています。どうか、こんな私に、こんな私の唯一の息子を返してやってください。お願いします。」
「え、やだよ。返すなんて嘘に決まってんじゃん。」
「ち、ちくしょぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!」
その声が嬌声に変わるまでさほど時間はかからなかったらしい。
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