第10話 伏魔殿の主
一方、三階から見下ろす進藤教授。伏魔殿の主である。
機動隊の隊列を見て、その意図を察したらしい。
「ふふん、機動隊といえど所詮若造の集まりじゃな。わしの策に嵌りよったわい。向こうが隊を三つに分けたとくれば、こちらの取る手は各個撃破じゃな。ゲリラ戦じゃゲリラ戦! ふふん、避難民の中に、わし選りすぐりの手下がおるとは思いもすまい。単位やら就職先やら世話した貸しをここで返してもらおうかの!」
滅茶苦茶楽しそうな教授である。うけけけと奇妙な笑い声がした。あれ、俺たち一体なんで戦ってるんだっけ……。
「の、乗り込んできますけど、いいんですか?」
「おう、お主らはとっとと逃げよ。ここはわしが引き受ける。派手にイカれたふりして敵をひきつけ、せいぜい哀れっぽくとっ捕まってやるわい。そうすりゃ、バジリスク云々もイカレたわしの虚言として誰も信用せんからな」
「でもそれじゃ教授が……」
「なに、全てはわしの自分勝手な功名心から始まったこと。可愛い生徒を文科省の手に引き渡し、あまつさえ自らの手で生徒の人体実験を行おうとは……。全く惨いことをしようとしたものじゃ」
悔やむように窓の外遠くを見つめる進藤教授。
俺と藤村は顔を見合わせた。
……全くその通りである。反論の余地なし! 教授はマッドサイエンティスト! 終わりっ! 以上! 閉廷!
……いや、俺だってお義理でも『そんなことはありませんよ!』といいたいんだよ。だが有り余るほどの過去のあれこれがよみがえり、ン゛ン゛ッと言葉を濁す羽目になった。いや、今思えば幻想種と判明していない時だからアレで済んだのだ。
幻想種と判明した今となっては、もし俺の命令で綺麗な教授になってなかった場合、多分今頃実験台に括りつけられて数百倍はすごいことになっていただろうな、……とこちらも遠い目になる。
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