七福駅のレンタルアンブレラ

ななかみん

Case 0 〜七福駅のレンタルアンブレラ〜

 都会から外れた田舎町の駅、「七福駅」ではある噂が流れていた。

 それは、雨の日に駅で雨宿りしていると突然折り畳みの傘を無償で貸し出してくれる人が現れる、というもの。七福駅利用者の中では、「レンタルアンブレラ」として広く認知されている。


 この「レンタルアンブレラ」にはいくつかのルールが存在している。

 1. 雨の日には自分用とレンタルとして貸し出された傘との2つを携帯すること。

 2. 傘がなくて困っている人がいたらレンタルとして貸し出された傘をその人に貸し出し、このルールを説明すること。


 この2つである。


 全ての人がルールを守るわけではないだろうが、貸し出された人の証言が余りにも多いため、大多数の人がこのルールを遵守していることが想像できる。


 なぜ、誰が何のためにこんなことを始めたのか、理由は誰にも分からず仕舞いである。


 考えたってしょうがないよと頭の中のモヤモヤを搔き消さんとするかのように、今日は大粒の雨が降っていた。

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