幻覚が見える頃

神樂零

第1話

肌が疼くようなあの夢は、僕の中で何かが動き目覚めた。


僕の日常はとても残酷だ。

僕の行動は皆を不快にさせている。

僕の言動は役立たずだ。

そう言われ続け、23年だ。ここで、いっそう死ねれば楽なのかな。でもそんな度胸、あいにく持ち合わせていない。


「そこのお兄さん、、、」

街中をただ目的もなく彷徨っていた時、突然声をかけられた。

「えっ?」

「そう君、人生を変えたいと思わないか?私なら、君の心の底に眠っているものを覚醒してあげられる。一緒に来ないか?」

初めてだった。疑うより先に、初めて自分の価値をわかってくれる人に出会えた気がした。

「はい。」

僕は、十分に享受した。これで何か変わるなら、僕は何でもすると覚悟して。


僕に声をかけた通称“私”は、黒のズボンに黒のコート、女かと見てみれば胸もなく喉仏もあった。といって男と見てみれば、声は高くて体型もか弱そうな脚をしてきた。

「ここですよ。」

と言われて顔を上げてみると、そこは廃棄の聖地"キリガイ"という所だった。見渡してみるに、ここに生きるものは人生のはみ出し者が集まる場所となっているのだと気づいた。


「凛‼︎」

僕は驚愕した。随分高い建物から人が軽々降ってきた。

「どこ行ってたんだよ。」

「あっ!ごめん、ちょっと見回りに、、、」

「はっ?ってか、そいつ誰だよ。」

この人は凛というんだ。

僕は今の状況を理解した上で何もできない。

このいかにも僕を警戒し睨みつけている彼は、すぐにでも僕を襲いそうな体勢だったからだ。

「違う、違う!仲間になる人だよ。」

凛という人が、僕の前に立ち慌てて説明をした。納得したのか、彼は僕の前にきて、

「すまなかった。俺は椎名だ。あと2人いるんだが、俺らは探偵をしている。よろしくな。」


(探偵?

えっ!資格は?やり方は?というかこんな場所でできるのか?騙された、、、)


「よろしくね。」

そう言って僕の心情を知らない2人は、笑顔で僕を歓迎した。

「よ、よろしくお願いします。」







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