お姉ちゃん達とりゅうや君(一日目、その2)

「それじゃあ、おねえちゃんは仕事があるから……。りゅうや君の好きそうな本とかゲーム、置いたからね?」

「うんっ、いい子にしてる!」

「うふふ。じゃあ、またね」

「うん!」

 ヴァイスが八連のドアを開け、部屋を去る。

 残されたりゅうやはそれを見届けると、貰った本を読み始めた。


「つまんなーい……。こんな簡単なのじゃなくて、『ファウスト』とか読みたいよー。これ、ぜんぶひらがなだよ……」


「つまんなーい……。このゲーム、ぜんぜんおもしろくなーい……。おねえちゃっ……あっ、いないんだった……」


 時間は前後する。

 部屋を出て食堂に向かったヴァイスは、シュシュに捕まっていた。

「お姉様……今朝は遅いお目覚めでしたね?」

「ええ……ちょっと、魔術の研究が、ね……(嘘ではないわ……あの薬、魔術師じゃないと作れないから)」

「熱心なのは良いことですが……あまりお身体に障らないよう、お気をつけて」

「ありがとう、シュシュ……」

「それよりも、兄卑はどうしたのでしょう。いつもならとっくに、こちらにいらしているはずなのですが……」

「あっ!」

「ひっ! お姉様、驚かさないで下さいませ……」

「ごめんあそばせ、シュシュ。そうだ、りゅうや君のことなのだけれど……」

 シュシュに耳打ちするヴァイス。

「お姉様、それは冗談でしょうか?」

「まあ、その反応は当然よね。けど、全ては私の部屋に行けばわかることだわ。勝手に入っていいから、見てらっしゃいな」

「まあ、可愛い男の子と聞けば……」

「ただ、あの子マセてるから、くれぐれも気を付けて、ね? 何かあったら、私のところまで逃げてもいいから」

「わかりました、お姉様……(どんな子なのかしら……ワクワク)」

「それじゃあ、そろそろ食事の準備を始めましょうか」

「ええ!(元が兄卑だけど……色白な男の子……ふふ)」


「はあ……おねえちゃん、まだかなぁ……ぼく、さみしいよぅ……」

 一人退屈そうに過ごすりゅうや。

 すると、思いがけず八連のドアが開いた。

「ヴァイスおねえちゃん!?」

「うふふ、残念だったわね、兄卑」

「あにひ? あにひって、誰?」

「あっ、いけない。りゅうや君、だったわね(そうだ……元が兄卑とはいえ、今は記憶喪失状態。うっかりしてましたわ、私)」

「うん、そうだよ。ところで、おねえちゃんは誰? ヴァイスおねえちゃんにそっくりだけど、おっぱい無いし……」

「し、失礼な!」

 コンプレックスを指摘され、反射で怒鳴りつけるシュシュ。

「ひっ! うっ、ひくっ、うえええんっ!」

 案の定、りゅうやが泣き始めた。

「ごめんなさい、驚かすつもりはなかったの。怖がらせちゃったね」

 りゅうやを優しく抱きしめるシュシュ。

 あやすこと五分、ようやくりゅうやの涙が収まった。


「それで、私の名前はね、りゅうや君。シュヴァルツシュヴェーアト・ローゼ・ヴァレンティア。長いから、『シュシュ』って呼んでね」

「う、うん! シュシュおねえちゃん!」

「ところで、退屈ね。何して遊びましょっか?」

「おいしゃさんごっこがいい!」

「えっ!?」

「だめ?」

「いいけど……それじゃあ、お姉ちゃんがお医者さんでいいかしら?」

「いいよ」

「わかったわ。それじゃあ、上着をまくって?(危なかった……純粋そうではあるけれど、この子にお医者さんをさせたら、私……って、一体何を考えているの!? そんなふしだらなこと、あり得ないでしょっ!)」

「こ、こう……?」

「そうそう。じー……うん、大丈夫そうね……、もういいわ、元に戻して」

「こう、だね……」

「それじゃあ、次はぼくがおいしゃさん!」

「!? わ、わかったわ。お願いします、お医者様(ヘ、ヘンなこと考えているんじゃないわよね……この子。けど、また泣かれちゃうのも嫌だから……しょうがない、我慢よ私!)」

「うーん……んっ、おねえちゃんのおっぱい小さい。病気?」

「病気じゃないわよ……(やっぱり、そこを見るか……。まあお姉様と一緒にいたわけだから、サイズが違うのが気になるのは、わからなくもないけれど……)」

「えいっ」

「ひっ!?」

「うーん……ヴァイスおねえちゃんのが、いいな……」

「そ、そう……(なんなのこの子……『マセてる』どころか、とんでもない子ね……。それに腹が立ってきたわ……比較対象がお姉様なのがまだ救いだけれど…………あはっ、それじゃあイジめちゃおうかしら?)」

「けど……えいっ」

「きゃっ」

「ぎゅ~っ……シュシュおねえちゃんは、こうやってだっこすると……あったかいなぁ」

「何かしら、私を抱き枕とか、そんな風に捉えているのかしら?」

「だめ?」

「いいけど……(元が兄卑でなかったら、ぶっ飛ばしてたわ……。けど、甘えてくるチビ兄卑……あはっ、可愛いからいいかも)」

「すーはー、すーはー……シュシュおねえちゃん、いい匂い」

「(前言撤回、可愛くない。何このマセガキ。ああ、私もう限界だ、こいつ本当にイジめちゃう)」

「えへへぇ……シュシュおねえちゃん……」

「ちょっといいかな、りゅうや君。ベッドの上に横になって?(兄卑相手に鍛えた、アレを実行しないとね……)」

「う、うん……あ、いたっ、痛いよぉっ!」

「どうしたの? って、きゃっ! 何これ……!?(身長と不釣り合い過ぎるわよ! と、とにかくズボンを……!)」

「お、おねえちゃん……、ちっちゃいから、ヴァイスおねえちゃんのやってたこと出来ないね」

「う、うっさいわね! だったら、こうするまでよ!(やっぱり怪物が出たわね! それよりも……正直、お姉様の体型は羨ましい限りですわぁ……。けど!)」

 言葉と裏腹に、りゅうやの腫れモノを優しく握るシュシュ。

「ほら、布(ウェディンググローブ)越しにマッサージして、落ち着けてあげる……。これくらいなら、私にも出来るんだからね!?」

「はわぁ、ありがとう、おねえちゃん……」

「ほら、力抜きなさい! 上手くマッサージ出来ないでしょ!?(ふふん、どうだっチビ兄卑! これで私が上の立場だってこと、思い知りなさい!)」

「はぅう、おちつくよぅ…………やっぱり、シュシュおねえちゃんって優しいんだね」

「何言ってんの!? 私は薔薇のトゲよりも、心が鋭いのよ!? 優しいわけ、ないじゃない!(ううっ、この子可愛い過ぎる……! お姉様、まさかこの子に陥落させられましたか!? まあ元は兄卑なのよ、私もそのくらい知ってる、けど胸がきゅうんってなっちゃうの~!)」

「優しくなければ、こんなマッサージなんてしてくれないでしょ、おねえちゃん」

「そ、それは貴方が可哀想なだけであって、私が優しいわけじゃないんだからっ!」

「もう優しいって言ってるようなものじゃない、おねえちゃん」

「~っ! このっ、イジめてやるっ!」

 ペースを速くするシュシュ。

 続けること五分間、ようやく進展を迎えた。

「お、おねえ、ちゃっ……」

「もうすぐよ、もうすぐ終わるから……(涙目になってる……可愛いわ。このままこの時間が続けばいいのに)」

「あっ、ぼく、もう、らめっ、なのっ」

「いいわ、そのまま続けなさいっ!(ビクビク怯えてる……マセガキだったくせに、ここまで可愛くなるなんて……。子供って、恐ろしいわ……)」


「うわっ、あっ、ああああああっ!」


「うふっ、やっと終わったわねっ(何あの威力……お姉様、まさかこれで撃沈したわけではありません、わよね……?)

「はあっ、はあっ、はあ……。おねえちゃん、ありがと」

「どういたしまして(そんなの見せながら言われても……正直、反応に困るのよね)」

「それよりも、おねえちゃん……顔赤いよ、どうしたの?」

「えっ?(嘘でしょ? まさか、この私が動揺するわけ……)」

「どうしたの? ぼくにできることなら、言ってほしいな」

「う、ううん。何でもないのよ。じゃあ、またね、りゅうや君(けど、言われてみれば、体の奥から熱が出てる気も、しなくもないような……)」


「待ってっ!」


「きゃっ!? こ、こら、いきなり脚を掴んじゃだめ!」

「ごめんね、おねえちゃん。けど、おねしょ……」

「お、おねしょですって?(えっ、まさか……普段兄卑を部屋に招く前の状態に、なっちゃってるってこと、今の私が? 嘘、嘘よ……ね?)」

「おねえちゃん、横になって!」

「い、嫌よ……」

「おねえちゃん、本当に病気になっちゃったんじゃないの?」

「ど、どういうこと?」

「その……おねしょしたところ、ひろがって……」

「!(嘘よ嘘よ嘘でしょっ!? 何でこんな子供に、そんな感情なんか抱くのっ!? ねえお願い、『今の嘘だよ』って言って! でないと私、ふしだらだって思われちゃう……!)」

「えいっ、横にならないんならひっぱるねっ!」

「痛っ! 待って、わかった、わかったから。……ほら、これでいい?」

「それじゃあ、見るね」

「や、やっぱりダメっ! お願いだから、それだけはっ!(そうだっ、こいつマセガキだったっ……!)」

「もう遅いよ、おねえちゃん」

「ひゃあっ!? 破かないで、望み通りにするからっ!(何で、こいつのいいようにされて……っ!?)」

 なし崩し的にドレスを脱ぐシュシュ。だが、これでもりゅうやは落ち着かない。

「こっちも、やってよっ!」

「だめっ、待って、乱暴しないで! もう……仕方ないなぁ。これで本当にいいのよね?(ああ……かれ、ちゃった……)」

「うんっ!」

「それで……どうして、くれるの……?(ひっ!? ちょ、復活早くない!? ああ、赤い怪物がすぐ近くに……!)」


「こうして、あげるっ!」


「ひいっ!? 待って、ひうっ、そんなぁっ!(ひいいいいいっ!? ぞ、ぞわぞわするのぉ……!)」

「これで……もうだいじょうぶ、だよ。おねえちゃん」

「はあっ……それじゃあ……もう、いいよね?(もしかして……お姉様に、そそのかされた……? あっ……『マセてる』の本当の意味って……)」

「だーめ。ずっとこうしてないと、また……おねしょ、するでしょ?」

「も……もう、しないからっ! だから、やめて……?(お姉様……ひょっとして、今朝……こいつの性格を悪い方向に、変えましたのでしょうか……?)」

「やだっ!」

「~~~~~ッ!?(何、これっ……! 隙間が全くないのだけれど!? ぜ、全体にみっちり、詰まって、っ……)」

「えへへ、シュシュおねえちゃん、かわいいね」

「そ、そんなっ、ずるいわよっ(何で、なの……!? こんな乱暴されてるのにっ、こいつのっ、この子のこと……許せるように、なって、っ……)」

「なんだかぼくも、むずむずしてきちゃった…………ごめんね、おねえちゃんっ!」

「ひぃっ……!? まっ、らめっ、うごいちゃっ(そもそも嫌いだったら、こうなる前に突き放してるよね……。そうよ私、正直になりなさい。私はこのチビ兄卑……いえ、りゅうや君が大好きなのっ!)」

「だめっ、ぼくっ、もう、がまんっ、できないよぉ……!」

「あんっ、ねえっ、せめてっ、ゆっくり……ね? ふああんっ!」

 口頭では必死に抵抗するシュシュ。

 しかし、腕は意識してか、あるいは無意識なのか、りゅうやをがっちり抱きしめていた。

「おねえちゃんっ…………!」

「ひゃぅっ、ぜっ、ぜんぶっ、こすれてぇっ(はぅう、可愛いよぉりゅうや君……! もっとっ、もっと必死に動いてぇっ!)」

「はあっ、はあっ……!」

「ふあぁっ、もうっ、めちゃくちゃ、なのぉ……!(いいわ、いいわよその顔……! もっと、乱暴にしてっ……!)」

「………………」

「やあっ、まっ、らめぇ、らめにゃのぉっ(耳元で囁いてあげる……何とか頑張るから、りゅうや君、頑張ろっ……?)」

「………………」

「んっ、いいよっ、やりっ、やすいっ、ように、サポート、するからぁ……」

 耳元で囁き始めるシュシュ。

 それに合わせて、りゅうやの動きが速くなること五分間。

「………………」

「もっと、もっとっ、はげしくっ、きざみ、つけてぇ」

「………………」

「んっ、そろそろっ、げんかいっ、かなぁ……?」

「………………」

 りゅうやの目に涙が滲み始める。

「いいよっ、えんりょっ、しないれぇっ」

「………………」

「いっぱい、けがしてっ、いいからぁ……っ!(らめぇ、限界だよぉ……! ふあああああっ!)」


「………………ぁっ!」


「ふあっ!(さっきよりも激しいっ……!)」

「はあっ、はあっ……おねえ、ちゃんっ……」

「はぁ、はぁ、はぁっ……(必死にしがみつくの、可愛い……。『マセガキ』なんて思って、ごめんね、りゅうや君……)」

「えへへぇ……おねえ、ちゃん……」

「はあっ……はぁ……。何、かしら……? りゅうや君……」

「おくすり、あげた、から……。もう、だいじょうぶ、だよね……?」

「う、うん……(やっぱりマセてる……。けど、今となっては、立派な魅力の一つよね……。言うわよね、『アバタもえくぼ』って……)」

「それじゃあ……もう、おいしゃさんごっこは……おしまい、だねっ……」

「うん……そうだね……(えいっ、こうしてあげる!)」

 りゅうやの唇にキスするシュシュ。

「!?」

「…………ぷはっ!」

「お、おねえちゃん……」

「これからも、よろしくね……りゅうや君……」

「うん……うんっ!」


 すると、八連のドアが開いた。


 そして現れたのは、ヴァイスであった。

「あらあら……公務の手伝いが終わったから、戻ってみれば……(シュシュ、貴女もこの子の魅力を知ってしまったのね?)」

「お、お姉様っ……!」

「ヴァ、ヴァイスおねえちゃん……?」

「二人とも、そのままでいいわ。えいっ、ぎゅ~っ」

「はわっ、お姉様っ……!(いつもながら素晴らしい体つきですわ、お姉様……!)」

「うっ、ぐすっ、うわああああああんっ! ヴァイスおねえちゃん、さみしかったよ……!」

「ごめんなさいね、りゅうや君。シュシュ、お守りの役目、大儀だったわ」

「ありがとうございます、お姉様!」

「それじゃ、三人でお昼寝しましょ?」

「ええ!」

「うんっ!」

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