プレゼント(ファンサービス)

龍野×皐月(セイム様へのプレゼント)

「さてと、最後の一回!」

 勢いよく腕立て二百回を終わらせる龍野。

 そこに、皐月の声が響いた。

「お兄ちゃん、いるー?」

「ああ、いるぜ」

「入っていいかな?」

「いいぜ」

「それじゃあ、お邪魔しまーす」

 ガチャリと音を立てて、ドアが開く。

 その姿は、上下パジャマであった。

「おう、どうした皐月?」

「お兄ちゃん……。ちょっと、教えてほしいことがあるんだ」

「何だ?」

「あのね……? 私でも恥ずかしいし、お兄ちゃんにも引かれちゃうかもしれないんだけどね……」

 皐月は覚悟を決め、そして一気に告げた。


「お兄ちゃん……『ヤる』って、どんな意味?」


「…………えっと、さ」

 龍野は長い長い沈黙の後に、ようやく二の句を告げた。

「質問を質問で返して悪いんだが、それ、誰から聞いた?」

「クラスメートの子だよー? 『あたし、彼氏とヤったんだけどさー』って感じで言ってたからさ」

「まー大体わかった。そうか、クラスメートが情報源か(おいおい……最近の子はそのくらいの年で致すのかよ……)」

「それで、お兄ちゃん……どういう意味か、教えて?」

「あー、それはだな……(おいおい……妹とはいえ、こんなのホイホイ教えていいもんじゃねえだろ……どうやって濁すかぁ?)」

「ねー、お兄ちゃん!」

「皐月……俺からも、お願いがある(しょうがねえ、覚悟決めるか……)」

「なに?」

「俺が何を言っても、決して……決して、だ。ドン引き、するなよ……?」

「しないよ、そんなの!」


「じゃあ言うぞ。それはだな……『男と女が二人きりで愛を育む為の、肉体言語』だよ。わかるか?(よしっ、ヤバい部分には触れてない! 何とかわかってくれ、皐月!)」


「男と女が……ねぇ。お兄ちゃん、随分とボカして伝えたね?」

 小悪魔の笑みを浮かべ始めた皐月。

「さ……皐月?」

 突然の豹変に、龍野は動揺を隠せない。

「お兄ちゃん、百合華お姉ちゃんと散々致したくせに、今更何言ってんの?」

「なっ! そ……それは事実だけどよ……、お前、ウブなんじゃなかったのか?」

「ウブ? そんなワケないでしょ、私は年頃の女の子だよ? 当然、その言葉の意味も知ってるに決まってんじゃん」

「お……お前、俺をからかったのか?」

「違う違う。確かにお兄ちゃんを試しはしたよ? けどさ、それはお兄ちゃんの様子を見るためであって……本当の目的は、さ」

 パジャマのボタンを、上から一つ一つ外していく皐月。その顔はほんのりと赤く染まっている。


「お兄ちゃん。私が今日ここに来た本当の目的はね、『百合華お姉ちゃんにしたことを、私にもしてほしい』だよ」


「ばっ……!? バカ言え、俺達は血のつながった実の兄妹だぞ! それに誰がお前の乏しい体になんぞ……危ねぇ!」

 ローキックを紙一重でかわす龍野。皐月は空振りを悟ると、すぐに二の句を告げた。

「乏しいって……それはそうだけど、面と向かって言われると、お兄ちゃんでも許せないよ!」

「そ、そりゃ言い過ぎた。ごめん」

「ふふっ。お兄ちゃん、自分が間違ってたって認めたら、すぐ謝るんだね。そういうの、私は好きだよ?」

「なっ……!」

 龍野の顔が、見る見るうちに真っ赤に染まっていく。

「お兄ちゃん。確かに、私の体は乏しいよ? けどね、今の私を見て、ドキッってしちゃったのは事実じゃないの?」

 ブラジャーを付けた上半身を開けっ広げにしながら(つまりパジャマを羽織る状態で)、皐月がクスクスと笑う。

「だ、誰がドキッとなんて……」

「あはっ。み―つけた」

 皐月が龍野の下腹部に手を伸ばす。皐月の言葉通り、龍野の下半身は『ドキッとした確かな証拠』と化していた。

「ひっ!?」

「そんなに怯えないでよ、お兄ちゃん。取って食べはするけどさ、痛くしないよ?」

 龍野の部屋着を、スルスルと下ろす皐月。

「これも邪魔だよね……えいっ」

 更にもう一枚の布も下ろしてきた。

「おい、待て、いい加減にしろ皐月!」


「嫌だよ。だって私……お兄ちゃんに、ヤってほしいんだからさ。お兄ちゃんの立派なので、めちゃくちゃにされたいんだからさ」


「お……俺達、実の兄妹だぞ!? 何でそんなにあっさり、タブーを超えられるんだ!?」

「タブー? そんな難しい言葉、私にはわかんないなー」

「『してはいけないこと』だよ!(しれっと言いやがって……バカなフリしてるが、絶対嘘だ)」

「じゃあ聞くけどさ、兄妹でしちゃいけないって、誰が決めたの? お父さんとお母さん? それともおじいちゃんとおばあちゃん? あるいは学者さん? あるいは神様、仏様? ねえ、一体誰が決めたのよ、お兄ちゃん?」

「そ、それは……(答えられねえ。答えられるわけがねえ、誰が決めたかじゃないんだから!)」

「ほら、答えられない。ということはさ、別にしてもいいんだよね? 私達が、ヤろうとすることを」

「……(ダメだ。最早今の皐月はケダモノだ。俺じゃ止められねえ……)」

「それじゃあ、遠慮なく行くね? お兄ちゃん」

 そう言って皐月は、まるでバーアイスを舐めるかのような舌遣いを始めた。

「ぐっ……(耐えろ俺、妹相手にこんなレイプのようなことで……屈するわけには!)」

 皐月の蹂躙するような舌は、落ち着くことを知らない。表面をなぞったり、敏感な部分を無遠慮に刺激したりと、最早それ自体が新手の拷問だった。

「んむっ……。流石に、大きすぎて咥えられないや。凄いね、お兄ちゃん」

「…………(何をしているんだ、皐月……お前、一体どうしちまったんだよ……?)」

 龍野は歯を食いしばって、必死に快楽に抗っていた。それしか出来ることは無かった。

「我慢しないで、お兄ちゃん? お兄ちゃんには、私で気持ち良くなってもらいたいんだよ……?」

 我慢比べを続けること、十分間。

 皐月の口周りと舐めているモノは、唾液でべとつき始めていた。だが、皐月は、それには唾液以外のものも混ざっていることに気付いたのだ。

「あはっ、お兄ちゃん、もうビクビク震え始めているじゃない。ほら我慢しないで? 遠慮なんてせずに、私を汚していいんだよ?」

「くっ……。言って、やがれ……(ダメだ、そろそろ限界だ。ヴァイス、後でこの変態妹を叱りつけてくれないか……)」

「いつまで抵抗するのかなぁ? ほら、舐めてダメならこうしてあげる」

 デコピンの要領で、舐めているモノを弾く皐月。

「がっ……!?(クソッ、これじゃ……!)」

「しぶとかったなあ、お兄ちゃん。けど、これで終わりだね……!」

 一点を集中的に攻撃しだした皐月。

 既に限界を迎えていた龍野は一分と耐えることが出来ず、我慢を解き放ってしまった。

「うあっ………………!(あぁ……妹相手に、やっちまった……)」

「きゃっ……! んぐっ、ぷはぁ! ご馳走様、お兄ちゃん。やっと、こうしてくれたね?」

 わずかながら、涙目になる龍野。

 それを見て取った皐月は、龍野の頭を優しく包み込んだ。

「お兄ちゃん……悔しいの?」

「ああ……誰かさんのお陰でな」

「けど私は、ドン引いたりなんかしないよ? 大丈夫、お兄ちゃんのだもん。それに、なかなか美味しかったからね、いいことづくめだよ」

「そうじゃなくてだな……」

「私にこんなことされちゃったのが、悔しいの?」

「ああ、そうだよ……!」


「じゃあさ。その鬱憤、私にぶつけてみなよ。それにもうあんなことしたんだからさ、今更逃げないよね?」


「どういう……つもりだ?」

「こういうつもりよ」

 下着以外を全て脱ぎ捨てる皐月。

「ここから先は、お兄ちゃんがして。私はね、お兄ちゃんに体を明け渡すんだ」

「やだよ。折角耐え切ったってのに」

「お兄ちゃん、逃げるの……?」

 皐月が目を潤ませながら、龍野に詰め寄る。

「逃げないでよ……。この日の為に、覚悟を決めたのにさ……!」

 加えて、しゃがんでから龍野の太い脚にしがみついた。


「ねえ、お兄ちゃん……。私はね、お兄ちゃんが大好きなんだよ?」


「バカ野郎! クラスメートの男子とかは――」

「ダメだよ。どいつもこいつも、バカだしスケベだし、ちょっと違うのがいるかと思えば彼女連れだったり、女に興味が無かったり……それに、ね?」

「何、だよ……」

「百合華お姉ちゃんや、睦月(シュシュ)ちゃんがね……お兄ちゃんを好きな理由、少しだけわかったかもしれない」

「どういう、ことだ……?」

「お兄ちゃん、やっぱりさ。何て言うか……オーラが、出てるよね。女の子を引きつけちゃう、オーラが」

「よくわかんねえが……そうか」

「私も、それにアテられちゃったのかもね。けど、理由はこれだけじゃないと思う。今は話せないけど、ね」

「そうかよ……」

「それで、お兄ちゃん? 私をめちゃくちゃにしてくれなきゃ、もう一回いやな目に遭ってもらうよ?」

「クソッ……ヤりゃあいいんだろ?」

「そうだよ」

 皐月のその言葉を同意と受け取った龍野は、皐月の身に付けているものを静かに外す。

「あはっ、やっと本気になってくれた。嬉しいな、お兄ちゃん」

「(こうなったら……とことんまで、ヤってやるよ。後先なんて構うもんか、泣いたって止めるもんか。覚悟しやがれ、淫乱妹め!)」

 龍野は皐月の手を取り、ベッドに導く。そして肩を優しく抱き、自身ごと妹を押し倒した。

「きゃあんっ、これからとんでもないことされちゃうんだぁ」

 龍野はそのまま、ディープキスを強行する。

「んっ……んんっ、ぷはぁ……らめぇ、お兄ちゃん……」

 最早今の龍野に、皐月の制止は届かない。

「さて……準備は万端、ってところか。それじゃ、いただくぜ」

「いいよ……お兄ちゃん、お願い」

 皐月に導かれるまま、淡々と進める龍野。

「あんっ……お兄ちゃんの、やっぱり凄い。龍太(二人の弟)のなんか、比較にならないくらい」

「このやろっ」

 軽く皐月の頭をはたく龍野。ペシッと音がした。

「痛っ」

「いずれ、あいつも……こうなるんだから、バカに、してやるな……よ。それより……本当に、いいんだな……?」

「くどいよ、お兄ちゃん……。いやな目に遭いたい?」

「ヤダよ!」

「じゃあ、お願いね……」

 その言葉を最後に、龍野の意識が消し飛んだ。

「ふあぅ、ちょ、さっそく、激しっ」

「………………」

「らめっ、ひっ、まってよっ」

「………………」

「まっひぇ、もう、意識がっ」

「………………」

「ひうっ、ふあああああっ!?」

「………………」

「はぁ、はぁ……」

「………………」

「ひぅ、まっひぇ、おちちゅかせてっ」

「………………」

「らめぇ、そのっ、わたひっ、もう……」

「………………」

「やらぁ、めちゃくちゃ、に、されひゃう……っ!」

「………………」

「いいよ、おにいひゃっ……ぜんぶっ、ちょうらい……?」

「………………」

「ふあっ、まっ、ふくらんで……っ!?」

「………………」

「ああっ、らめええええっ!」


「………………!」


「はあっ、はあっ……、はあ……」

「………………」

「えっ、ちょっと!?」

「………………」

「お兄ちゃん、一旦落ち着こっ? ねっ?」

「………………」

「落ち着いてよおおおおおおおっ!」


 三時間後。

 そこには憔悴しきった兄妹がいた。

「もう、お兄ちゃんったら……」

「はあっ、はあっ……。俺は、何たる不始末を皐月にしでかしちまったんだ……」

「そんなに自分を責めないでよ……。私はさ、お兄ちゃんに頼んで、こんな目にしてもらったんだからさ……ね?」

「そりゃ、あんがとよ……。けどさ、親父たちに露見したら……俺達、どうなるんだ?」


「露見してるも何も、バッチリ録画したぞー」


「親父ッ!?」

「お父さん!?」

「いやー昨日は寝付けなくてな、可愛い娘と話でもしようと思ったら……何やら二人きりでイイ雰囲気になっていたではないか!」

「やめろっ、思い出させるな!」

「…………」

 龍野も皐月も、顔を真っ赤にしている。だが龍範(二人の父)は、構わず続けた。

「それでコッソリと、カメラを仕掛けて録画したんだ。いやー、何の偶然か、朝にフル充電していたからよ……今の今までバッチリ撮ったぜ、ガハハハハハ!」

「ところで、親父……」

「何だ?」

「その、何だ……俺達が致したことなんだが、怒らない……のか?」

「ああ? そりゃそうだろ。性欲は人類三大欲求の一つだ、止めても容易く止められるもんじゃねえよ」

「…………」

「…………」

「それによ、相手がどこの馬の骨かわからん奴なら止めてたさ。だが皐月が選んだのは、龍野、お前だ。お前なら信頼出来る、そう思ったんだろ皐月?」

「う……うん」

「ハッハッハ! 流石俺の娘だ、考えることは一緒か!」

「ってことは……」

「だがよ、流石にタダで済ますワケにはいかないなぁ。そうだお前ら、罰として腕立て二百回だ。それで許してやる」

「! だったら……」

「お父さん、それでお願い!」

「異存は無いようだな、じゃあさっさと済ませちまえ!」

「おうよ!」

「うんっ!」

 こうして二人は、必死に腕立てをこなした。しかしその表情は、どこか清々しいものであった。

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