天才科学者野崎さんの高校生活
@Isimotoageha
第1話 沈黙
俺の名は吉高伊月。
この春に木野高校の二年生に進級した。俺は2年7組の一員として過ごす事になった。後ろの見ず知らずの男子に話してみよっかな。とか昨日考えた友達製造大作戦を決行してみようかなと色々考えつつも結局のところ何も出来なかった。「ああああっ!俺のバカぁ!もっとなんか話せよぉ!」と叫びそうになったが必死に抑え、静かに二年生生活がスタートした。
8時20分。8時半にホームルームが始まるというのに少し遅めに1人の女子生徒が登校してきた。髪はボブといったところだろうか。少し高めの身長で顔はマスクで覆われている。その生徒はゆっくりと僕のところに近づいてきた。もしかして俺と話したいのかな?と少しナルシストな思考をしていたがそんな事は無かった。彼女は俺の前を素通りし、隣の空いている席に座った。あとで名前でも聞いてみようかな。せめてクラスで話せる人を作っとかないとな。と思っていると予鈴が鳴ったので大人しく前を向いて静かに黙っている事にした。
先生の話が終わった後、体育館で集会があるようだ。俺は体育館用の靴を持ち、足早に体育館へ向かった。聞きたくもない校長の話を聞き、これからの木野高校生としての自覚を持つように。など俺にとってどうでも良い事を聞き、長い長い始業式が終了した。
教室に戻り、俺は勇気を出して後ろの男子に話しかける事にしてみた。意外なことにその男子とは趣味や好きなものが一致していたらしく、すぐに打ち解けることが出来た。やはり話しかけてみるものだな。とりあえず友達一人目を作り終えたところで隣のあの女子が目に付いた。せっかくだし名前でも聞いてみるか。今友達を作った時みたいにすればなんとかなるだろうと思い、声をかけてみた。
「あのー、名前なんていうの?」。率直すぎたかな。そう思いつつ回答を待っていた。
「.....」
「ん?」
「.....」
「.....」
10秒ほどだろうか。沈黙が訪れた。え、何これ?無視された?俺が?いやいやそんな事はないでしょ。もう一度聞いてみる。
「あの、名前は....?」
「.....」
「.....」
聞き方が悪かったのだろうか。俺は人生で初めて人に二回も無視された。それがこの人との初めての思い出だった。
二年生生活2日目。俺は昨日無視されたあの女子を少し観察してみる事にした。とりあえず名前だけでも知っておこうと身の回りのものから彼女の名前が分かるものを探した。横目でチラチラ見ていたのがバレたのか、少し睨まれたかもしれない。しかしこう見てみると彼女は少しかわいい。マスクで顔が隠れていて良くは分からないが、どこか落ち着いた雰囲気があり、髪は艶やかで何より彼女の手がとても綺麗だった。隠れ美人とでも言おうか。俺はこの人とますます話したくなったので何かきっかけがないか探したところ、彼女のノートが引き出しからチラッとはみ出て名前らしきものが書いてあった。
「野崎...ま...ひろ?」
彼女の名前は野崎まひろと言うらしい。名前が分かったところで俺は野崎さんに睨まれていることが分かった。急いで目をそらし先生の話に集中した。明日こそは。明日こそは野崎さんと話してみせる。俺は明日に向けて、
(野崎さんと話そう計画)を立てることにした。
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