第28話 バッシング

番組放送直後から、SNSをはじめとしたネット上は本間建築士バッシング一色になった。


冒頭で欠陥だ。と彼が指摘していたマンションの件は、大きな揺れの際、ここが壊れて建物本体へのダメージを逃がすよう、あえて弱く作っている部分だ。という意見がネットのコメント欄にあふれた。


翌日のテレビ番組では、建築の専門家が「あれはという構造で、一級建築士が知らないはずがない。そんなことも指摘できないなんて、彼の資質を疑う」と語る。


また、舞波工務店と工務店情報交換ネットワークの活動への本間氏の発言も批判の対象になった。

各テレビ番組の辛口コメンテーターたちは、彼の発言のVTRを見た後、口々に彼を批判する。


「口だけでお前はなんにもしてないじゃないか!」


「ぐだぐだ言ってないで、一軒でも家の補修をしたらどうだ!」


「彼らが小屋を建てているとき、お前はなにをやってたんだ!」


さらに、番組で紹介された外壁が剥がれた家は、本間氏が「突撃チェック」をした家ということも暴露され、本間氏が調査に入ったことで、建てた工務店との関係がおかしくなり、補修をしてもらえなかったこと。施主が補修相談をしていたことを本間氏が無視していたことも紹介され、現時点でも彼と連絡が取れない。というその他の施主の話しも紹介された。


そして、ある弁護士が、彼が住民代表とともにマンションの欠陥を巡る建設会社との交渉団の顧問として、施工会社と勇ましく戦う姿の映像を紹介し、これらの行為は建築士としての業務を逸脱しているし、弁護士の業務を、資格を持っていない者が行う「非弁行為」にあたる可能性があると糾弾した。


あかりさんの発見した「一軒も建物を建てたことがない」経歴も紹介され、嘲笑の対象となった。


本間氏に自分の建てた建物を「欠陥だ」と指摘され、仕方なく補修の費用や調査費用を払ったゼネコンや設計事務所は、次々に訴訟や損害賠償の請求を起こし始め、彼へのバッシングはピークに達した。


行方をくらました本間氏への直撃取材を試みた番組によって、彼の現在の事務所は、ワンフロアを間仕切りで仕切られただけの、いつでも移転ができるレンタルオフィスであることも紹介され「こんな不安定な事務所で、責任の重い欠陥住宅の検査なんかやってもいいのか!」という批判もあがった。


本間建築士の動向や経歴、一軒も建物を建てたことがないにもかかわらず、欠陥住宅検査をやっていた。というような内容が、ワイドショーで朝から晩まで流され、かつて、構造計算偽造事件で大バッシングを受けた建築士のように世間から攻撃を受け続けた。


震災報道がひと段落したこの時期、彼はワイドショーの格好の獲物だった。

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