第15話 工務店情報交換ネットワーク
今日は池袋で研修があるので、参加してください。
研修というと、今でも社長に時々連れて行かれる偉い人に会う会(最近は大分お断りしているが・・・。)ばかりだから、専務に言われるのはめずらしい。
「集まるのは工務店とか、職人さんがほとんどの会だから、社長の行く会とはちょっと違うわよ。」
今日はあかりさんと、小林くんも一緒。
こころなしか、2人ともちょっとめかしこんでる?
池袋駅の東口で降りて、相変わらず人でごった返すサンシャイン通りを抜けて、ワールドインポートマートに到着。正面に大きなスクリーンのあるセミナールームに到着した。
入り口に、「第○回工務店情報交換ネットワーク」と書かれた案内ボードが置かれている。
整然と並べられた長テーブルの上に、1冊ずつ冊子がおかれている。
スクリーンの脇で準備をしている人達のなかに専務がいて、他のスタッフと打合せをしている。
「あの、この会って、専務が開催してるんですか?」あかりさんに聞いてみる。
「専務一人ではないけど、実質的な座長は専務ね。工務店とか職人とかって、同世代や同業との横のつながりが少なくて、独りよがりになりがちなのよ。最近は<俺は何十年もこのやり方でやってきた!間違ってねえ!>をやってると、いろいろトラブルが起きることもあるから、情報交換と、技術研鑽なんかを定期的にやろう。って目的で始めた会よ。なかなか盛況でしょ?」
確かに、50~60人くらいの人たちが集まっており、なかなか盛況だ。
「そして、このあと、お楽しみもあるから、みんな集まるのよ。」
「お楽しみって?」
小林くんがなんとなく目を伏せる。
「お!ようやく来てくれたね。」
声をかけてきたのは、ちょっと小太りのおじさん・・・。
「いすみから聞いていたけど、なかなか連れてきてくれないから、やめちゃったんじゃないかって心配してたんだよ。」
「試用期間をクリアして、めでたく本採用よ。こちら田尾さん。専務と大学の同期で、足立区の工務店の社長さん。うちと同じように、設計施工をやってる。」
同期?
ってことは、専務と同い年?
服装は上下スーツで、ノータイに白シャツのIT社長さんチックなかっこだが、頭の生え際も後退気味というか、どう見ても専務と同い年には見えない・・・。
「うん、言いたいことはわかるけど、とりあえず飲み込んどいて。初めまして、田尾です。」
とあたしの表情から、いろいろ察してくれた田尾さんが、名刺を渡してくれる。
専務が名刺をたくさん用意してくるように。と言っていたので、名刺を渡す。
「初めまして。瀬尾です。」
研修は各工事の現在の進行状況、工程を、一般的な検索サイトで使われているスケジュール管理アプリで共有する。というのが今回のテーマだった。
いつ、自分が現場に入ればよいのか。をこのアプリのスケジュール表を見れば、自分が現場に入る概ねの日程が読めるので、他の自分の仕事のスケジュールも組みやすくなるし、事前にスケジュールをアプリにあげておけば、工事に入る日程相談の携帯電話着信に作業を中断させられることもない。
使い慣れていて、普段から各自が持っているタブレットやスマホを使うから、休憩時やお昼休みに確認、入力できる。
将来的には、この会の工務店共通のアカウントをつくって、自社が普段、発注しているのとは違う職人であっても、現場の近くで手が空いているようなら、作業に入ってもらう。というような形態ができれば、遠方の現場があったときに、ゼロから業者を探したりしなくて済む。といったかなり実務的な内容で、一部はすでに、ウチの会社でも採用しているものだった。
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