第3話 お嬢様 幼少期に攻略対象と出会う

叫び声が聞こえるーーー

肌にビリビリと感じさせ 自分の奥底にある何かが奮い立つ


金属音がぶつかり合う音が聞こえるーーー

遠くにいるはずなのに自分だったらこうするだろうと頭の中で戦いのイメージを作ってしまう


舞い上がる土埃のせい敵も味方もわからない


(…………これが戦場……………)


少年は高い崖の上から戦場を眺めているにもかかわらず自分の中にあるたかぶりを抑えることができない。


「殿下。焦ってはいけませぞ」

「セバス…」


少年の後ろから鎧をきた年配の騎士が声をかけた。

「殿下のような初陣の者は初めての戦場でそのような気持ちになりますが、若さゆえに突っ走り命を落としていく者も多いのです」


年配の騎士=セバスは真剣な顔でオーガスタに告げた。セバスはオーガスタ指南役の騎士であるがその前は騎士団の団長の腕を持っていた。

オーガスタの指南役となり戦場と離れているがその腕は変わらないのであろう


「そうだな…。おまえから耳がタコになるまでよく聞かされているよ。」


剣の指南でもよく聞かされていた。自分をおごるな。その一瞬が命取りになると。


「セバス。戦況はどうなのだ。」

「現状はわが軍の優勢ですな。わがセイント軍はモグス軍・ニーレス軍との連合軍。大帝国に負けずと劣らず軍勢であります。」

「そうか…ありがとう。」


オーガスタはセバスの報告をきいてほっとした。


「セバス隊長!!殿下大変です!!」


「なんだ!!騒々しい!!」


オーガスタ達しかいない場所で突然、セイント軍の兵士が林からとび出してきた。


「と…突然。ニーレイ軍と…モグス軍が寝返り…わ…わが軍を…」


「なっなんだと!!」


突然出てきた兵士の報告にセバスは驚きの言葉を出すしかなかった。

ニーレイ軍とモグス軍はセイント軍と遥か昔に同盟を組み長きにわたり助けあってきた国であった。その国がもはや裏切るとは思ってもみなかったからだ。


「殿下!われらも撤退をいたします。生き残ることを考えてくだされ」

「わ…わかった・・・」

「クローム!!命にかえても殿下を守れ!!」

「わかりました、父上!」


セバスはオーガスタと後ろに控えていたクロームと共にその場所から去って行った。


******


(オーガスタとクロームがこっちに向かってきたわね…ゲームのシナリオ通り…)


アメリアは戦場からセイント王国につながる下り坂に向かっている集団を見つけた


(イベント通りであったら、クロームの父親がオーガスタをかばって死ぬシーンになるはずだけど・・・)


ゲーム上でのオーガスタは初陣で味方軍の裏切りにあい、その上クロームの父セバスを目の前で殺されてしまった為その結果クローム以外の他人を信じなくなってしまう


(ここでセバスを死なせなければ、あの重要イベントが出てこない)


そのイベントとは主人公がオーガスタルートを進むと最初は拒絶のシーンばかりになるがある日突然、過去の初陣をことを話すイベントがありそれが発生した後 オーガスタの好感度が一気に上がり最後はハッピーエンドになる

もちろん主人公とオーガスタがハッピーエンドになれば アメリアは処刑させることが決定になってしまう

そんなことは断固としてお断りだ。


「全軍に通達、作戦開始ミッションスタート。」


******


「はぁ………はぁ……はぁ……」

「殿下。大丈夫ですか?」

「あっ…。あぁ……。セバスすまない…。」

「こちらこそ、殿下をこのような危険な目にあわせてしまうなど面目のしようもございまいません」


あの場からここまでずっと走ってきたので体が限界を迎えていた。

なぜ、このようなことがおきてしまったのかどうかなんて今は考えることすらできず、早く国に戻りたい。その一心でオーガスタは今にも崩れそうな足を叱咤しセイント王国につなぐ下り坂を降りて行った。


「ここを降りれば、追手もこないかと思われます。あと、もうすこしですぞ」

「わかった…」


「いたぞっっ!!セイントの王子だ!!」


「ここまで敵が……」


半分といった途中、坂の上からニーレイ軍の一団に見つかってしまった。

一番前に立っている奴の顔に見覚えがある

戦い前、セバスに顔合わせをした。たしかニーレイ軍の将軍だった気がする


「クローム!殿下をつれて先にいけ!」

「父上。」

「セバス!!」


セバスとクロームが剣をかまえる。


「殲滅させろ!!」


「「「「うおおおおぉぉぉーーーーー」」」」


(やばい……)


ここは下り坂。いくらこちらが急いで先を進んでももしかしたら戦闘になるかも知れない。

そうなったらこの疲労した体であの一団と剣を交えることができるだろうか。


「ここまでなのか……」

いや、殿下を守り倒れることを誇りに思おう・・・。


「盾部隊!構えの陣を組め!」


突如、下の方から声が聞こえた。

オーガスタとクロームが振り向くと何もなかった場所から突如盾を持った兵士が出てきて道の横一列に並び始める。


「なんだ・・・。これは・・・」


「いまだ!かえせーーー!」


再び声が聞こえたと思ったら盾を構えていた盾部隊が持っていた盾を一斉にひっくり返した。


「なっなんだ!!」


下り坂からなぜか光がきて、オーガスタ達は目をつぶってしまう。それはオーガスタ達だけではなく、ニーレイ軍も同じで遠くから「なんだこれは」、「まぶしいぃ!!」と聞こえた。


「部隊はそのまま維持を!!フェイ!!!」

「あいよ!」


今度は左右の崖の上から下にいるニーレス軍に向かって無数の矢が降ってきた。


「ぐぁ・・」

「てった・・・い・・・がはっ・・」

「うああああぁぁぁぁーーーー」


敵の叫び声だけしか聞こえない。

オーガスタ達は今目の前でなにが起こっているのわかるのだが理解をすることができなかった。

ただわかるのは坂の下からの光によって動けなくなったニーレス軍が崖の上から降り注ぐ弓矢により倒れていく姿だけだ。


「父上。あの軍はどこの領でありましょうか…?」


息子クロームの問いかけに、セバスは答えることができなかった。

いや、答える前にセバスも理解することができない。


(なんだ、この戦い方は……)


長年戦ってきたセバスでも見たことがない戦い方である。

盾は本来飛んできた弓矢などを防ぐ為のものであり、あのような光を発することなどみたことはない。


(それに………あの弓矢も……)


最初は光で見えなかったが徐々に崖の上から矢を撃っている弓もセイント軍で使用している弓とはまったく違っていた。


「セイント軍 セバス・サジタリア殿とお見受けする」

「貴殿は・・・・」

「われはセイント国の一領にお仕えする者で名はバエイと申します。」


バエイと名乗った髭を蓄えた武人はセバスに軽く一礼をした。


「味方か・・・助かった・・・」

「敵はわれらに任せ、セバス殿は殿下をつれて安全なところに移動を・・・」

「いや、殿下だけ安全な場所で私はこのままニーレス軍とここで戦う所存でございます」


セバスは再び剣を構える。

バエイもセバスの横で武器を構えるが見たことがない武器を携えていた。

(なんだ・・・この武器は・・??)


「セバス殿。きますぞ。」

「承知。」


いや、今はその様なこと考えることはよそう。

今やるべきことは目の前の敵を倒すことのみ。

セバス達はそのまま敵陣へと、突っ込んいった。


******


「弓矢ボーガンで敵の約7割が倒されたけど、まだ迫っていくのね。武人として流石だと褒めたいかどうかわからないけど、一軍の将として脳筋バカと言ってやりたいわ。」

「それ結構耳が痛いっス・・・。」


アメリアはフェイと共に崖の上から戦場をみていた。

(残った敵軍3割のうち2割は逃亡していが1割が無謀にもせまっているのね…)


「しっかし、やっぱりおじょーはすごいっすね。こんな簡単に勝利をあげるなんて…おれ、そんけーするっす」

「・・・・フェイ・・・まだ敵がいる限り 戦いには勝利してはいないし。それに・・・・」

「それに・・・??」

「ここではおじょーって言わないでくれる??私がここにいることがばれたらバエイに怒られるじゃないのよ!!」


今回の策を考えたのはアメリアだが戦場の指揮はバエイがおこなっている。

アメリア本人もイベントの確認の為にここの場所に行きたかったのだがバエイやロンにもきつく止められてしまった。

それでもここに来たくて崖上に待機をしていたフェイに頼み込んでここにきたのだった。

もちろん、ここでバエイとかにばれたらこっぴどく怒られるのは目に見えているのでフェイの部隊と同じ茶色のローブを着ている。


「たしかに、おれもあのおっさんにおこられるのはすっげぇーいやだ。」


フェイも軍にはいってからバエイになんども雷をおとされているのでその気持ちもわかるし、想像すうだけでも顔が真っ青になる。


「ナギサ部隊からも追ってがくるっていう報告もうけていなしそれに、バエイが今ニーレス軍の将軍を生け捕りにしたから万々歳って感じ。」


一先ず安心ねと言おうした矢先、後ろからこの場にはいるはずのない者が声をかけてくる。


「何が万々歳でしょうか?」

(やばい・・・・・・)


アメリアとフェイは後ろから聞こえてきた声に寒気を感じた。


(おじょー・・・なんであいつがいるんですか?? 俺聞いてないっすよ!!)

(私だって知らないわよ!撒いたはずなのに!!)

(これ・・・絶対、バエイ将軍にばれてるっす!わるいっすけど俺、逃げますから!!)

「フェイの裏切り者!!!」

「二人で仲良く、こそこそと何を話し合っているか解りませんが、後でバエイ将軍に怒られて下さいね。」

「「ひっっっっ!!」」


アメリア達がゆっくりと後ろを向くと、にこやかに笑っている青年の顔とあった。


((これは・・・絶対怒っている・・・。))

「ロ・・・ロン。あなたは領に残ったのではなくて・・・。」


アメリアはロンに恐る恐る声をかけた。


「そ・・・そうだぞ。こっちにはバエイ将軍や俺、それにナギサまでいるんだ。ロンの部隊まで出陣する必要がないはずだ。」


フェイも続けて言ってきた。

普段のフェイから出てくるはずもないセリフだ。

必死さが伝わってくる。


「そっそうよ!それにロンまでこっちに来たら領の防衛はどうするの?」

「ご心配には及びません。単身で来ましたのでわが部隊は領おります。」

「じゃあ、なんで来たのよ・・・。」


アメリア達はロンがここまで来た理由が分からず、首を捻る。


「それは、どこぞのお方が勝手に領からいなくなってしまったのでイーゼス様から連れて来るようにと言われましたので。」

「う・・ぐぅ・・」

アメリアはぐぅのねもでなかった。


「じゃ・・・じゃあ、俺はそこまま領に戻るから・・・・」

「あなたも同罪ですよ。」

「なんでっ!!」


ロンは隙をみてこの場から逃げようとするフェイの首を捕まえる。


「当たり前です。貴方もイーゼス様から言われているはずでしょう。」


(まるでお母さんと子供見たい・・・。)


ロンは真面目な性格の為兵士の面倒を良く見ていた。

特にフェイは訓練を抜け出したりすることが多くロンに叱られている姿を毎日見ている。


「このことはバエイ将軍 も知っていますので、覚悟してください。いいですねお二方?

「「・・・・はい。」」


******


「クローム。俺達は助かったのだな。」

「そのようでごさいますね、殿下。」


セバスに守られながら国に向かっている途中、あと少しの所で敵に見つかりもう駄目だと正直思った。

でも突然、眩しく光が照らされたと思ったら敵が一網打尽に倒されていく。

俺達はただ見ていることしか出来なかった。


「まるで夢を見ているようだよ。」 

「俺もそう思います。」


クロームも俺と同じことを思っていたらしい。

見たことない戦い。見たことない武器。

まばたきを忘れてしまう光景だった。


「確かに圧倒される光景ですが俺は・・・。」

「クローム・・・?」


オーガスタはクロームの言葉に首を傾げた。


「何故、こちらにきたのですか!!」

(な・・・・なんだ急に!)


急な大きな声が聞こえてビックリした。

そして、クロームと共に声がした方へ向かってみると、先ほどの声の主はバエイ将軍であった。


「戦場が危険であることは知っているはずです。」

「・・・・・。」


その場にいたのは、バエイ将軍だけではなかった。

将軍の他にも後ろに1名兵士がいて、向かい側には2名座らされていた。

座らされていた2名は茶色のマントを羽織っていて、片方は顔が出ている。

多分だと思うが、崖の上から攻撃をしたのはこの男だ。

もう片方はマントで顔まで隠れていたので分からなかった。

2名は見るからに怒られているようである。


「今回の作戦については、我々だけで可能なはずです。考えた貴方様だって分かっているのではないのですか?」

(な・・・なんだと!)


オーガスタはその言葉に驚いた。

てっきりバエイ将軍がこの作戦を考えたと思っていたからだ。


「領に戻られましたら覚悟してください。いいですね。フェイもだ。」

「は・・・・はぃぃ!!」


「待ってください!バエイ将軍!」


後ろに控えていたはずのクロームが急にバエイ将軍達の所に駆けていった。

「ちょっ・・・クローム??」


俺も慌ててクロームの後を追う。


(どうしたんだ・・・急に??)


そして俺はクロームがあんなことを言うとは思わなかった。


「私はクローム・サジタリアと申します。

先ほど助力ありがとうございます。先ほどの戦いについて聞きたいことがあるのですが宜しいでしょうか?」


******


ーーーー私はクローム・サジタリアと申します。

先ほど助力ありがとうございます。先ほどの戦いについて聞きたいことがあるのですが宜しいでしょうかーー


(こいつって確か・・・オーガスタの護衛騎士だったかしら?)


クローム・サジタリア

オーガスタ殿下の護衛騎士でゲームでも攻略対象の一人だ。

こいつも主人公と出会った時は、他人を拒絶していたまるで狂犬みたいなのだが、何度も接触してくる主人公にだんだん惹かれて、最後ハッピーエンドになると主人公を溺愛するようになる。

もちろん悪役令嬢であるアメリアは、主人公を陥れようとして失敗。クローム達によって悪事を暴かれ追放ルートになる。


因みに他人を拒絶するようになったのは今回の戦いで父親であるセバスが死んだのが切っ掛けである。


(父親も生きているのに、他にイベントとかありましたっけ・・・?)


考えても謎しかない。


「クローム殿、聞きたいこととはどのようなものでしょうか?」


フェイとアメリアに説教をしていたバエイが

クロームに尋ねる。


「今回の戦いについて、助けて頂いたのはなんですが、騎士として不意討ちを狙うとは卑劣だと思わなかったのですか?」


クロームがバエイ将軍の顔を見てはっきり言った。

バエイの顔を見るとポカンとして口が開けっぱなしで、アメリアはバエイの間抜け面を初めて見た。

多分、フェイも見たことがないと思う。


呆れているアメリア達に対しクロームは、真剣な顔だ。


(・・・何を言っているのだ?この男バカは・・・。) 

呆れすぎて声もでない。


「戦いと言うのは、敵と正々堂々立ち向うものです。それをあの様な戦い方をして、騎士の誇りをなどないのですか?」


ーーーーカチンッ

(こいつもか・・・。)


こいつの言葉に怒りを感じた。

そのようなセリフを何度聞いたことか。

『戦いとは聖戦。正々堂々と行います。』

『策?そのようなもの必要ないない。戦って勝つ。それだけです。』

『負けたら?負けてもそれは誇りと思うでしょう。』

あぁ、それは領にいた前将軍達が言っていた言葉だ。

毎回負けてくるくせに口だけ出してくる。

そんな言葉にムカついて将軍から一兵士に落としてやった。

最初は反発をしていたが今では大人しく従ってくれるので結果的に良かったかもしれない。

一応、監視もつけている。


(この国のやり方だってことは分かるけど・・・。)


一対一で真正面から、剣と剣で戦う。それが常識である。子供でも知っていることだ。

アメリアだって幼いころから聞いてきた言葉。

でも・・・こんなに状況で助けたにも関わらず、堂々と言われると本気マジでムカツク。


「止めなさい。クローム。」

「しかし、父親・・・。」 


セバスはクロームの行動を止めようとした。

が、真面目に生きてきた性格なのか止まるはずかないだろう。


「父親は悔しくは無いのですか?我々の誇りを汚されたのですよ。」


ーーーーーープツンー。


アメリアの中で何かが弾けた。


「正々堂々と?騎士の誇り?・・・・・そんなものくそくらえですね?」


声をあらげる事などしない。

先に怒ってしまったら負けだ。

冷静沈着、現実を突きつけてこの男にウンともスンとも言わせないようにしてやる。


******


「くそ・・・くらえですと??」


俺は幼い頃から剣の師である父より、色々な事を学んできた。

『騎士とは誇りある者。』

『戦いは正々堂々と戦うものである。』


その言葉を糧にし、幼い頃から厳しい訓練に耐え、力をつけ技術を高めてきた。

そう、生きてきたはずなのに・・・


目の前にいる茶色のマントを羽織った小柄な少年から今までを全否定をされたような気がした。


「・・・貴方は、我々を侮辱するつもりですか。」


あのような眩しい光を利用するなど、見たことがなかった。

上から弓矢を撃ってくるなど、考えもしなかった。

でも、正々堂々と戦う騎士にとっては、卑劣な行動だと思った。


「侮辱ねぇ・・・。」


フードの少年は、卑怯者と罵った俺に対して、声をあらげることもない。

少し声が高く聞こえるのは気のせいだ。


「では、同盟国だった国の寝返りは、卑怯だとは思わなかったのですか?」


クロームは反論が出来なかった。

「それにさっきから騎士の誇りとかずっと言っていますが、私からしたら、ただの自己満足にしか聞こえません。」

「自己満足・・?」

「戦って負けたらどうなるか、考えた事がありますか?略奪され、残された人達は苦しむのですよ。」

「・・・ッ」


負けたらどうなるか、考えた事などあったのだろうか。

いや、考えた事などない。

何故なら、今までセイント王国は大敗などしたことがなかったから、考える必要などないと思っていたからだ。


「騎士は国を、国民を守る為に戦っているのでしょう?それとも誇りを守る為ですか?」


目の前にいる少年の言葉に、クロームは自分を反省する。

国を思う事、国を護る事、騎士になった時からずっと考えたはずだった。

強くなれば必ず勝利する。負けるはずなどない。だって、セイント王国は敗北などなかったから。

そう思ってずっと夢を見ていたのではないかと・・・。


******


「すまない・・・。」 


クロームが頭を下げる。

(はぁぁっっっ??何で謝ってくる??てっきり『無礼者!』とか言ってくると思ってたのにーーー!!)


突然の謝罪にアメリアは頭を抱えてしまいそうになる。

予想では、アメリアの言葉に対して、クロームが反論、そしてさっさとセイント王国に帰って、こっちもこの場から去って終了だと思ってたはずなのに・・・。


「貴方の言葉に目が覚めました。」


予想外の事が起こりました。

まさか謝ってくるとは、誰も思っていないらしく、クロームの後ろにいたオーガスタとセバスは、クロームを止めようとてを出したまま固まっていて、アメリア側もバエイとロン同じように固まっていた。

フェイは、顔を真っ青になり後退りしている。


「貴方は国民の為に戦ってくれたと言うのに、私は貴方を侮辱をしました。現実を見ていない愚か者です。自分自身を恥じています。」


クロームはそう言って顔を上げると、皆の顔が何故か青くなっている。

しかも一名、若干後退りをしていた。


(何かあったのだろうか・・・。)


目の前の少年も、周りの皆も何も言ってこないので、一瞬不思議に思う。

だが、思っただけで気にしないことにした。

・・・この空気になったのは原因は、自分だと気付くはずもない。


その空気のまま、今度は跪く。

今、口にしなければ後悔をするだろう。

軽く息を吸った後、相手や周りに聞こえるようにはっきりと口にだした。


「もしよろしければ、貴方の側にいたいのですがお願い出来ませんか?」


バキッッッッ!!


そう伝えた瞬間、視界は一瞬で地面となり、そのまま倒れこんだ。


(しまった・・・)

やってしまったのが後の祭り。

アメリアはクロームをおもいっきり殴ってしまった。

周りはあんなセリフをぶっ混んできたクロームに対してなのか、私がおもいっきり殴ってしまったことなのがどうかわからないが、皆どのように切り出せばいいのかシーンとしている。

この空気を作ってしまった当事者としては早くこの場から去りたいのが、本音。

右手グーパンチを振り下ろしたポーズのまま固まってしまう。


(つい・・・殴ってしまった。いや・・・・でも、あんなことを言われたら殴りたくもなるでしょ!)


ゲームの攻略対象キャラで、黒髪短髪のイケメン騎士。おまけに真面目の性格だからセリフも直球でくる。

イベントの告白シーンなんて顔が度アップでくるもんだから、胸をドキドキしながらやったもんだ。

それが!それがですよ!

今!私の目の前でひざまづき、真顔で言ってきたのですよ!

し・か・も!皆様がいる前で!

殴りたくもなるでしょ!

殴ってしまった私がいうのもなんですが。


「セバス殿。早く城に戻らねばならぬと思いますので、失礼と思いますが、我らはここでおいとまいたす。」

「はっ・・・わかりもうした。助力して頂きありがとうございます。」


アメリアがどうようにして去ろうかと考えている中、バエイが切りだしてきた。

セバスもバエイの言葉に同意する。

(流石バエイ!ちゃっちゃとまとめてくれて助かったわぁー。)

アメリアは心の中でガッツポーズをしながらこの場から去ろうと、体をくるっと翻し歩き進めた。

フェイやロンもアメリアに続き、後で待機をしているであろう部下の兵士達のところまで向かい歩き始めた。


「せめて、お名前だけでもお聞かせ頂きませんか?」


倒れたクロームを肩に担ぎ上げ、セバスがアメリアに向かって聞いてきた。

セバスにとっては自分の命だけでなく、王太子であるオーガスタの命を助けた恩人であるため是非とも名前を聞き出したいと言う。

しかしここでアメリアの名をだせば、せっかく婚約をしないようにとセバス達を助けたのに、逆に助けた恩の為婚約者になりそうだと思うから断固として名を伝えるつもりもない。

でも、言わないのであれば言わないで、セバスが、はいサヨナラとこの場からさることなどしないと思う。


「私は・・・。」


バエイ達もじっとアメリアを見る。

セバスの問いにどう答えるか気になっているよう。


「私は、軍師様です。」


そう言うとアメリア達はセバスの視界から消え去った。

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