特別篇

【5,000PV達成記念】剣侠李白の裏話

※2016年10月19日に近況ノートへ公開したものを転載しています。


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「李白は剣を取り任侠の徒とも交わった」と知り、着想を得たのが確か中学のころ。

時は流れ、第一話「相碁井目」を自サイトで公開開始したのが2014年5月。

カクヨムオープン時から少しずつ連載を続け、気づけば現在の文字数は248,705文字。そしてとうとう、5,000PVを達成することと相成りました。


さすがにこの節目を何もせずに見逃すのはいかがなものか――。

というわけで、今回は作中では語られることのない「小ネタ」的なものをいくつかご紹介して、お礼とさせていただこうと思います。


(ネタバレを含むため、「妄実邂逅」までの読了をお勧めします)


■李白の出自

李白の出自はいろいろと謎の部分が多く、歴史家も長く論争を繰り広げてきたそうな。

一つは李白が唐王朝の遠戚、その末裔であり、李白の誕生を機に李姓に復したとの説。

もう一つが、李白はそもそも漢人ではなく、異民族の出身であったとの説。


現在は後者の説が有力とのことで、本作でもこちらの説を採用しています。

李白の容貌を語る際に「青い瞳」と表現しているのはこのためです。李白は漢人ではなく、胡人(異民族)なのです。


■各話解説

「相碁井目」

本作の語り部である辛悟(しんご)が、主人公の李白と出会う最初のお話。

辛悟は科挙及第を目指す受験生ですが、落ちこぼれですっかりグレてしまった青年。それがうっかり李白の言葉に感銘を受けてしまったばっかりに、ただでさえ踏み外していた人生を大きく横道に逸れることとなるのです。

それが幸か不幸かは、今後の彼次第。


「月影玉兎」

本作における第二の主人公、それが桃蘭香です。

彼女も李白と同じく胡人で、碧眼の持ち主。曼荼羅のような衣装は苗族をイメージ。

そして厄介極まりない重度の中二病です。自分には天下を変える力があると思い込んでいる。

――そんな彼女がうっかり本当に「すごい力」を手に入れてしまうのがこのお話。

実力を伴ってしまった彼女は、果てさてこの後どんな騒ぎを起こすのやら。


「紫陽高弟」

胡紫陽、そしてその弟子・元林宗。この二人はともに文献に名のある史実の人です。詳細はここでは語りませんが(後のネタバレに繋がるので)。

この胡紫陽、最初は「濡れ羽根色の髪」の設定でした。ところがイラスト担当が描いた表紙絵を見て「やっぱり白髪にしよう」とあっさり変えてしまいました。

だって、白髪の若い美女って良いと思いませんか?

……この人はショタコン癖のある残念な美人になってしまいましたが(←おい作者)。


「戴天道士」

文献によれば、李白は十五歳のころに戴天山は大明寺で書物を読みふけり、また「訪載天山道士不遇(戴天山を訪れて道士に遇わず)」の詩を詠んだと。終盤で李白が詠んでいた詩がまさしくこれです。

この話で実質的な主人公を務める寺男の不空ですが、彼はその師・金剛智大師とともに密教の高僧に名を連ねる偉人「不空金剛」だったりします。

厳密に歴史と比較すると年齢にややズレがあるのですが、そこは創作の都合ということで。

元は叙修一味との再戦でめでたしめでたしだったはずなのですが、気づけば話が膨らんでいたのでした。

ラストの戦闘シーンはTHE BACK HORNの「刃」がBGMです。


「彩色蘭香」

李白、辛悟、そして桃蘭香が初めて出会った時のお話。時系列では「相碁井目」の直後、「月影玉兎」よりも前のお話です。

「月影玉兎」に仕掛けていた伏線がようやく回収される回でもあります(気づいてくれましたかね?)。


「幽人対酌」

謎の老人・東巌子に理由もわからず追い回されるホラー回(?)。

東巌子はおそらく多くの人がご存知の通り、「李白が岷山に隠棲した際に共に過ごした道士」であります。文献に名のある史実の人です。

しかしその名しか残されていないので、実際の年齢も性別も不明。本作はそれをよいことに「あんな設定」となりました。

イラストで髪が桃色なのは「血の色が透けて反射しているから」とのイラスト担当の談。

作中で李白が詠んだのはタイトルの通り、「山中与幽人対酌(山中にて幽人と対酌す)」です。


「妄実邂逅」

別名「蘭香の妄想爆発回」。書いていて楽しかったです、はい(苦笑)。

なにせ全編がギャグと戦闘だけですからね!

「今ここに悪者が現れたら、は中二病の定番妄想ネタだよね!」とイラスト担当に言ったら、「主に男子のな!」と返されました。

蘭香は少年の心を持っているようです(おい)。

なお蘭香はこの一件以降、「私には予知能力もあるのね!」とさらに中二病をこじらせることになります。


■固有名詞など

本作ではいくつかの固有名詞が登場しています。後々のキーワードでもあるので、ここでおさらいしておきましょう。


「江湖三侠」

かつて世を席巻した三人の大侠客のことです。江湖とは「任侠の世界」の意。

本当はもっと別の呼び名をつけるはずだったのが、思いつかずにそのまま採用となりました(苦笑)。

その三人の通り名は「白衣聖人」「紅袍賢人」「紫衫天人」。このうちの「紫衫天人」は胡紫陽、そして「紅袍賢人」の名も李客であると判明しています。

勘の良い方は李客が何者かすでにご存じのはず。


「天問牌」

胡紫陽の道観に現れた盗人・飛鼠が狙っていた謎のお宝。

金剛智曰く、「得れば幸福を授かる、誰もが知らぬうちに探し求めている秘宝」と。

その実体は現時点で不明扱いです。


「鳥獣森羅拳」

戴天山にて李白、不空、梁翡蕾が学んだ武芸およびその武芸書。

元は紅袍賢人の武芸。紅袍賢人は弟子を取らなかった代わりに、その全伝を武芸書にしたためたのです。それが後世の災いになるとも知らずに。


「幇」

簡単に言うと秘密結社。作中では「白銀白虎幇」が登場しました。

要するに任侠者の集団です。善の組織もあれば悪の組織もある。


「玄鉄槍」

やっちまいました他作オマージュ。元ネタは金庸大先生の「神鵰剣侠」に登場する「玄鉄剣」です。鉄よりも強固な金属で作られた大剣。

原作でも本作でもこれは「玄鉄」の名の通り、全身が黒い金属で作られています。


■今後の展開について少し

当初の予定ではこの時点で全体の1/3程度でした。

が、長く引っ張りすぎるのもどうかと考え、直接本編に関係しないエピソードを「外伝(保留)」としたところ、現段階がほぼ折り返し地点となりました。

ここからはエンディングに向けて様々な事件、様々な敵役が登場する予定です。


乞うご期待! そしてこれからも変わらぬご愛顧を!

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