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「すまなかったな」
解散したあと、再び僕たちは店の二階に集まっていた。バーニィの言葉にヨミが首を振る。
「みんな私の能力を知っているからな。私がああいうしかあるまい」
アレンが大型船を一艘調達していた。三日後、『アーム』の人間はそれに乗ってここを出て行く。僕とヨミを残して。
「バーニィ。ひとつ気がかりなことがあるんだ」
「ロナルド・マッコイのことだな」
「うん。間に合わないかもしれないけど、彼らも脱出させたい」
「実はな、TBに教えられて彼らのところに行ってきたんだ。ドクのことも知らせなきゃならなかったしな」
「そうだったの」
「おおよその事情を説明したんだが……。彼らはここを動かないといって聞かないんだ。お前とTBがここを出て行かないんなら、自分たちも出て行かないってな。お前たちが戻ってくるまで動くつもりはないと」
「そうか……」
マッコイ爺さんとジェシカならそういうだろうな。
TBが僕にうなずく。そうだね、TB。僕たちは約束を果たさなきゃ。
そして――。
三日後、みんなを乗せた船がポートタウンを出発した。僕は埠頭に立って見送った。ヨミは、こういうのは苦手だといって店から出てこなかった。
やがて、船は小さくなって水平線の向こうに消えてしまった。
海を見るたびに不思議な気分になる。何度見ても、いつまで見ていても飽きない。それがたとえ地球の海のように青く輝いていなくても。
ふと、背後に人の気配がして、僕は振り返った。なんとなくそんな気がしていたんだ。僕の予感は的中した。いつのまにか、カウントが立っていた。
「ちゃんと別れを惜しんだかい」
カウントは僕の隣に立って海を見つめた。ヘルメットは被らず、手に抱えている。
「本当に『アーム』は去っていってしまったんだね。ちょっと意外だったけど、でも賢い選択だ。さすがはバーニィ・アリソンだな」
僕はそれには答えずカウントの側で海を見ていた。
「それで、返事は聞かせてくれるのかな」
「返事はあなたたちの拠点で伝える」
ちらっと視線を僕に向けると、カウントはまた海のほうを向いた。
「ふうん。まあいいだろう。じゃあ、落ち合う場所はシルに伝えておくから、あとで教えてもらってくれ」
「ひとつお願いがあるんだ」
「なんだい」
「ヨミを母親に会わせてやって欲しい。ひと目見るだけでいい」
こちらを振り向いて、カウントはじっと僕を見た。
「いいだろう。一緒に来なさい」
「ありがとう、カウント」
カウントが片手を挙げると、僕たちの背後にMAが降り立った。風防が開いて、カウントが後部座席に乗り込む。風防を閉じると、MAは土煙を上げて飛び去っていった。
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