魔法少女なのは秘密です。

望月 まーゆ

プロローグ


現実なのか夢なのか自分でも分からなかった。妙にリアルでまるで、本当に自分がその場にいるのではないかと思う程の臨場感と緊迫感が伝わって来た。


心優みゆうは、必死で底が見えない闇に呑まれそうな少女の手を握っている。


「きっと、いつか私が見つけ出すから、どこにいても繋がってるからーーだから、だから私を信じて」


少女は心優に心配かけないように必死で作った笑顔で頷き、繋いでいた手が離れた瞬間、目の前が真っ暗になった。



ハッと目が覚めた。ーーーー最後の瞬間まで手の温もりと感触はあってそれは現実だったんだと思う程だ。


ベッドから体を起こし震える自分の手を見つめる心優。


「ゆ、夢? だけど何でだろ・・・涙が、涙が止まらない」


心優の目からは止めどなく涙が溢れる。


鮮明に脳裏に焼き付いていて目を閉じれば先ほどの場面を思い出す事が出来るほどだ。


しかし、その場面は思い浮かぶが肝心の中身が思い出せない。もしその事を思い出さなければこのまま大事な何かを忘れてしまう気がしていた。


手を握っていたあの女の子は誰だろう?


あの闇は?あの場所は?


そして、あの世界は?



「思い出せない・・・ごめんね。思い出せないよ」


両手で顔を覆い、瞼の裏に刻まれたあの場面をまた浮かび上がり少女の最後の笑顔が心優の胸を締め付ける。


本当に忘れてしまったのだろうか?


本当は、忘れたいだけで思い出したくないだけなのか?


心優が自問自答を繰り返している姿を窓の外でじっと見つめる黒猫がいた。


心優はその視線に気付きベッドから立ち上がると窓を開けた。黒猫を抱きかかえると、


「不思議ねえ。あなたの名前だけは、何故か覚えてる」


黒猫は心優の腕の中で不気味に笑ったーー。


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