君を見たあの日から

黒豆

第1話出会い

高校卒業とともに、悪夢から目が覚めたようなそんな感じがした。親にバイトをしろといわれたので仕方なく、飲食店でバイトを始めることにした。もちろん陰キャラの俺は厨房だ。そこで彼女と出会ってしまった。いかにも陽キャラのビッチ臭がする彼女は、明るく挨拶をしてくれた。挨拶なんて当たりまえのことなのかもしれない。けれど、俺は親父に挨拶をしてもらったことがない。そんなせいか俺も挨拶は苦手だ。ぎこちない言葉は、もはや挨拶と呼べるものではなかったように思う。そんな俺に対しても挨拶をしてくれるのは、嬉しかった。ただそれだけだ。それ以上の感情はなかった。彼女は誰に対してもそういう態度をとる人なんだとわかっていたからだ。

バイトを続けていくうちに、自然と彼女を目で追うようになっていた。好きだからとかではない。彼女は自然と人の目を引き寄せるそんな魅力があったように思う。女の子らしさというより、無邪気な子供を思わせるような発言や行動は嫌でも目に付く。時にはお姉さんらしく、思いやりや優しさがあった。たぶん今までの俺なら、即告白していたに違いない。でも今の俺は昔の俺ではない。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る