陽炎の森60   翌日メイにここは江戸なのに薬を調合した医者をどうして知っているのか尋ねると、江戸には常陸屋の出店があるのです、大名との商いは江戸に店がないと不便なので、


陽炎の森60

 

翌日メイにここは江戸なのに薬を調合した医者をどうして知っているのか尋ねると、江戸には常陸屋の出店があるのです、大名との商いは江戸に店がないと不便なので、

日本橋にあり、番頭の吉衛門が取り仕切っており、弟が見習いで働いているのですと答え、医者は弟が紹介してくれたのです、


どうゆう調合なのか知りたいので、その医者に会わしてくれないか頼むと、いいですよ、これから店に寄って堀田玄庵先生の所に行きましょう、秘伝らしいので、

教えてくれないかもしれませんよと言ったのです、


着流しの格好で上屋敷を出て日本橋に向かい、日本橋につくと確かに常陸屋の看板があります、ノレンを潜ると手代がお嬢様いらっしゃいませ、いま番頭さんを呼んで、

きますと奥へいき、奥から番頭が出て来てよく来てくださいました、番頭の吉衛門ですと頭を下げたのです、メイが村上真一朗様ですよと紹介すると、お噂は聞いて、

おります、まずはこちらへどうぞと奥へ案内したのです、


奥座敷に座ると、吉次郎さんをよんできなさいと手代に番頭がいい、湯のみを差し出しので一口飲むと酒である、これは酒ではないかと言うと、へい普通お武家様への、

もてなしはお酒ですがというので、小さいころ学校の先生が家庭訪問にくると、お袋がお茶ですどうぞと酒を出していたのを思い出し、昔はそうだったんだと感心した、

のです、メイがそばで真一朗様の顔に向かい酒が、ほしいとかいてありましたよと笑ったのです、


暫くして若者が座敷に入って来て、吉次郎ですと挨拶したので、メイが村上真一朗様ですよと、紹介すると、姉様がお世話になっていますと言うので、メイがお世話、

しているのは私ですよと笑ったのです、


歳を尋ねると18で御座いますというので、しっかり勉強していい跡取りになるのですよというと、とんでもないこのお店は姉様が婿を取って後を継ぐことになっている、

のです、私は一人前になったらノレン分けしてもらってそちらの店で常陸屋をささえるつもりですというので、メイがなにを言っているの跡取りは吉次郎なのです、

わたしは好きな人のところへお嫁にいくのですよとにらみつけたのです、


番頭がまあ、まあ、真一朗様の前での言い争いは失礼ですよと割ってはいり、ところで常陸屋は何が本業なのですかと聞くと、両替商が本業なのですがほかに回船問屋、

呉服、古河の物産など手広く商っていて、多くの大名屋敷に出入りさせてもらっています、旦那様の顔の広さには驚きますと番頭が答えたのです、


今回の島原の騒動でのご活躍は聞き及んでおります、そのようなお方の世話を娘がしいいるのは常陸屋の誉れだと旦那様が言うておられました、先月までは江戸に、

おられたのですが、今は古河にお戻りになっています、あちらにはいつごろお戻りですかと聞くので、来月には戻りますと返事すると、旦那様が首を長くして待って、

いらっしゃいますよと番頭が話したのです、


馳走になったと店を出て医師の堀田玄庵のところへ行き、門を潜ると弟子が出てきて、常陸屋のお嬢様いらっしゃいませと挨拶し奥へ入ると、玄庵が座っており、

メイが村上真一朗様です、土井様のご家中で蘭学者ですよと紹介したのです、堀田玄庵ですと頭を下げ、メイ様今日の御用向きはなんですかと聞くので、


実は先生の調合された薬について伺いたいのですがというと、どの薬ですかと聞くので男と女が交わっても子供が出来ない薬で御座るというと、村上様はお役人様、

ですかと聞くので諸国巡察方で御座るというと、申し訳ありませぬ、禁制の薬を調合したのは事実です、どうそお縄にと手を差し出すので、諸国巡察方はそのような、

ものを取り締まる役目ではござらぬ、


このメイとそれがしは将来を誓い合った仲なのですが、今子供が出来てはこまるといったところ、先生の調合した薬を飲んだので大丈夫だと申すので、その成分を、

聞きたくてまいったのですと話すと、そうですか、てっきりご公儀の役人で摘発にこられたのかと思いもうした、申し訳ござらぬとにこやかな顔になったのです、


ご存知かもしれませんが、女子が子供を生むのは大変な事なのです、家系を守る為に子供をみごもる女子が良い女とされていますが、それはお武家様か金持ちのいう、

事で貧乏の子沢山といわれるとおり、貧乏人にとって子沢山はますます貧乏になり、女子はひとり子供を作るたびに10月10日おなかの中で育てるのです、いわば、

自分の栄養の半分を子供に与えなければなりません、


子供が出来ない薬があってもいいはずですが、お上はそんな神様の思し召しに逆らうような薬はまかりならんと、許可してくれないのです、しかし子供を生むたび、

に体力を消耗し子沢山のまま死んでしまう人を何人もみて来たのです、だから、その人の心情を聞いた上で調合しているのですと話したのです、


身ごもらない為にはその女子の体を身ごもった状態にすればいいわけで、女子の生理活性を鈍らせる薬草を使えばいいのですね、ひょっとして唐、朝鮮に生息する、

鹿蹄草(ろくていそう)ではありませんかと聞くと、さすがに蘭学者ですねその通りです、日本には生息しないのでとても高価なので沢山は作れないのです、


ほんとうに困った人のみ調合しているのです、お金のある人に余計に払ってもらって貧乏な人には安くしているのです、メイ様には過分に頂戴して大変助かっています、

これで何人かは救えますと頭を下げたのです、わかりました、ここに20両あります、これで少し調合してくだされと、いうとこれに似合う分の薬はありませんというの、

で少しでいいのです、これで又何人かお救いくだされと差し出したのです、


わかりましたと奥へいき紙包みを持ってきて渡し、この金で長崎より薬草を仕入れて調合します、また是非きてくだされと頭を下げたのです、玄庵の家をでると真一朗、

様はほんに何でもご存知なんですね、その薬草さえあれば簡単に調合できますよと感心して、これで毎日、お情けをいただいても大丈夫ですねと嬉しそうな顔をしたの、

です、


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