陽炎の森58 女将が襖を開け、飛脚便が江戸から届いていますと真一朗に差し出したので読むと騒動が治まり次第、江戸へ帰国せよ、今回の働きご苦労であった、公方様も褒めて、


陽炎の森58


女将が襖を開け、飛脚便が江戸から届いていますと真一朗に差し出したので読むと騒動が治まり次第、江戸へ帰国せよ、今回の働きご苦労であった、公方様も褒めて、

おられたと書いてあった、笑美姫にみせそれでは長崎から船で江戸まで帰りましよう、20日程かかりますが、楽な旅ですといったのです、


名主を呼び天草四朗の姉であるが、幕府からのお咎めはない、預かってくれるように話すと、手前どもには娘がおりませんので、自分の娘として育てますと承諾し、

玉はこのご恩は一生忘れませんと挨拶し名主に引き取られたのです、玉が名主の家につくと妻女がこれからはここが貴方の家で私の娘ですよ遠慮しないでと声をかけ、


おおぴらにはいえないのですが、私達もバテレン信者なのですと話すので、真一朗殿が仏像の中をくりぬき十字架をいれ、毎日礼拝すれば、イエスを拝んでいる事、

になると教えてくれましたと話すと、名主がそれは良い方法だが見つかると厳罰をうけると困った顔をすると、今回の騒動で幕府はこの辺一帯のキリシタン弾圧を緩和、

し、おおぴらに信仰しなければ、みて見ないふりをするそうですと答えると、


真一朗様はイエス様の使いみたいですね、その方法をバテレン信者に玉殿から話してくだされと名主がいうと、玉とお呼びください、私は貴方の娘ですよと笑うと、

そうでした、四朗殿は私達の為にとおとい犠牲になったのですね、何としてもこの信仰は代々つたえましょうと妻女が優しく手を握ったのです、


真一朗は翌日信綱に帰国の挨拶をして船にのる為長崎に向かったのです、長崎に着くと長崎奉行が出迎え、明後日御用船が出航するので江戸まで便乗するように便宜を、

はかってくれたのです、出航の日をむかえ長崎奉行に挨拶し船にのりこんだのです、船に乗ると長崎奉行所同心小林一郎でござる、江戸までご案内つかまつりますと、

武士が挨拶したのです、お世話になりますと返礼すると、


奉行から聞きましたが今回の村上殿のご活躍たいしたもので御座るというので、いや各藩が同調しての戦いのたまものです、いずれにしろ被害を最小限にとどめられて、

よかったと話すと、3万人近くが討ち取られたと聞いていますがというので、それは今後の反乱を防ぐ為の方便でござるよ、しかし他言無用ですよというと、分かり、

もうした他言いたさぬゆえ安心してくだされ、船室に案内しますと階段を下りたのです、


ここがこの船でもつとも広い船室で御座る、ゆるりとされてくだされ、拙者は上にいますので、御用のせつは声をかけてくだされとあがっていったのです、

それでは甲板にいき海でもながめましようと荷物を置き甲板にあがると、船はイカリをあげ長崎湾をゆっくり出ていったのです、


無数の島が見え素晴らしい景色です、そばにいた小林が湾を出ると玄海灘を下関へ航行します、少し波が荒いですが抜ければ瀬戸内海ですので穏やかになりますよ、

と説明し、港、港で補給と風待をして20日後に佃桟橋に小船で上陸したのです、


屋敷に戻ると家老が出迎え、長旅ご苦労で御座る湯が沸いていますので、旅の垢を落としゆるりとされよ、殿は城に登城されています、今夜の夕餉に出てくだされ、

殿が楽しみにしておられますといったのです、さっそく湯殿にはいるとメイがお背中を流しますと、ヘチマでゴシ、ゴシと擦るので、イタ、タタと言うと我慢、

するのですといい、


お湯をかけるとヒリヒリするのでしかめ面をすると、これで旅の垢は落ちましたよとケラケラ笑い、部屋にもどるとメイがお茶をいれ私も湯殿に行ってきます、

くつろいでくださいと部屋を出ていったのです、台所へ行き手巻き寿司の材料がそろっているか確認し、酢飯を作り魚をさばいて用意したのです、


夕餉の時間が来たので俊隆の御座所へ膳を運び、ただ今帰国いたしました、今宵は手巻き寿司をつくりましたのでぞうぞ召し上がってくださいというと、ご苦労、

であった、公方様も大変喜んでおられたぞといい、そちたちの膳もここへというので、よろしいのですかというと、公方さまが忠長さまからの書状でみんなで食、

すると楽しいというておられた、


遠慮せず、尚、メイも一緒に食せいというので、皆の分の膳を運んだのです、俊隆がこれが手巻き寿司かというので、そこにありますのりに酢飯をいれ、好きな、

魚をのせのりで巻いて、先の方に醤油を少しつけガブリとかぶりつくのですと説明すると、俊隆がノリに酢飯をいれマグロの刺身をのて手で巻き、これでいいか、

と聞くので、よろしゅうございますと答えると、先に醤油をつけかぶりついたのです、


うん、これは上手い、そち達も食せよというので皆でたべると、俊隆が本当に皆で食べると美味しいのお、つぎからつぎに、魚をのせ食べたのです、暫くして、

もう腹いっぱいだといい、こんなに食したのははじめてだと笑って、忠長様もさぞかし喜ばれた事であろう、いまはもう天国だがと瞑目したのです、


さあ笹も飲んでくれと俊隆が一口飲むとうん、これは上手い酒だのお、なんという酒だと聞くのでいつもの酒でございます、井戸水で冷やしておきましたから、

おいしく感じるのですと答えると、なるほど、真一朗そちは天下の料理人だのお、遠慮しないでやってくれ巡察の件は書状にて大体わかっている、


江戸でひと月ゆっくりしたら、国元に帰り、ひと月ほど休養するがいい、義清も喜ぶであろう、その後は北の巡察にいってくれ、公方様のお望みだと話し、真一朗が、

かしこまりましたと答えると、旅からもどれば江戸に来るにはおよばず、そなたの世界へもどる準備を古河でするがよいと言ったのです、


明日は登城して公方様にご報告するのだ、そなた達の顔を見るのを待ちかねておられる、さぞかし喜ばれる事であろうと話したのです、そのころゆう一党も柳生屋敷、

にもどり、柳生宗冬と夕餉をともにしていた、ゆうご苦労であった、そちたちの活躍は公方様が褒めておられたぞ、小頭達もごくろうであったとねぎらいの言葉をかけ、

また北の方に巡察にいってもらう事になる、


暫くはゆるりとせよ、明日は真一朗殿ともども公方様にご報告する為登城せよといったのです、ゆうが承知つかまつりました、兄上には今回、大名の列におなりになり、

おめでとうございますというと、うん、しかし兄上がみまかられたのは残念な事だと瞑目したのです、


戻ったらそちの婿探しをせねばならぬのお、誰か好いた男はいるのかと聞くので、いますと答えると、それは誰だと聞くので、真一朗殿で御座います、剣の腕も相当、

なもので、なんといっても、頭がよくて優しゆう御座いますというと、それで思いは伝えたのかと聞くので、残念ながら真一朗殿にはメイというお方がおられるのです、

と答えると、


それではダメではないか、他にいい婿を探してやろうというと、真一朗殿と同じなら直ぐにでも嫁にいきますと笑うと、ばかを言え、あの御仁にかなう者を見つける、

のは難しいなあと宗冬がため息をついたのです、





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