陽炎の森

村上俊介

陽炎の森1 寛永10年古河城(茨城県古河市)に国替えになった土井利勝に伴って移り住んできた城代家老、村上義清に一人の娘が誕生し、笑美と名づけられた、


陽炎の森1


寛永10年古河城(茨城県古河市)に国替えになった土井利勝に伴って移り住んできた城代家老、村上義清に一人の娘が誕生し、笑美と名づけられた、土井利勝は、

幕府の老中であり、古河16万石の大名である、村上家は幕府の旗本であったが、家康より土井利勝の付家老として送り込まれたのである、


利勝は老中の為、江戸勤番が多く、国の仕置きは、もっぱら、笑美の父である、村上義清が執り行っている、笑美は順調に育っていったが、村上家にはなかなか、

跡取りが生まれず、このまま行けば笑美が婿をとる事になりそうなのである、


小さい頃からまけず嫌いで、母の反対を押し切って剣の道場に通い、男顔負けの腕をしており、髪は後ろに束ね、袴を履き若武者風の格好をしていたのです、

朝起きると馬に乗るのが日課となっており、その日も馬に乗り渡良瀬の森へ早がけし、森の湖で馬に水をやろうとしたところ、一人の男が湖の傍に倒れていた、

のである


近づくと男が気配を感じたのかこちらを見て起き上がり、怪訝な顔をしている、どうしたのだ、こんな所に倒れているとは、腹がすいて歩けなくなったの、

だろうというと、いや、突然月がくるくる回りたっていられなくなり、気がついたらここに倒れていたんですと答えたのです、


みなりを見ると頭は坊主みたいで、見たこともない格好をしている、なにやら肩から袋を担ぎ手には見たこともない、箱みたいな物を持っているのです、

男は、まるで時代劇に出てくる、若武者姿で馬に乗っており、刀を差しているので、この森で時代劇のロケでもしているのかと思ったのです、


ともかく着いて来いと男を促し、森の外へ歩いていった、男は後についていったのだが、自分がいた公園と何となく違っていて、ベンチもなく街頭もない、

森が開けてきて、回りを見ておどろいた、さつきまであつた、町並みはなく、広い、田園風景であり、電柱なんてどこにも見当たらず、近くに、藁葺きの家屋、

が何件かあるのみである、


道はあぜ道でコンクリートの道路は何処に消えたのやら、ぽか~んとしていると、どうしたのだ、今食べ物を食べさせてやると、一件の農家に入り、誰かおらぬ、

かと声をかけると、老婆が出て来て、笑美姫さまどうなされたのですかと、地べたに頭をさげたのです、


頭を上げなさい、この者がお腹が減っているようだ、なにか食べるものは無いかと聞くと、へえ、麦飯ならございますがと言うので、それで良い、それを食べ、

させて上げなさい、私は水を一杯所望すると言ったのです、


老婆が何か言ったのか、家の中から娘が出て来て挨拶すると急いで出ていった、老婆が縁側へ麦飯の握り飯とやかんを置き、湯のみに入った水を渡したのです、

水をぐ~と一口で飲むと、うまいと声をだし、縁側へ座るように促し、さあ食べろと言ったので、握り飯を手にとり食べると塩かげんもよく、美味しいので、

美味しいと言うと、それは良かった、腹いっぱい食べろといい、やかんの水を湯のみにつぎ渡したのです、


どうも、ロケではなく、ここは本当の昔の時代らしいのです、今の年は何年ですかと聞くと、正保5年に決まっているではないか、そなた、今年がいつかも、

分からないのかと、不思議な顔をしていたのです、どこから来たのだと聞くので東京の品川からですと答えると、東京それはどこだ、今品川と言ったな、

それは江戸の品川ではないのかというので、


そうか、この時代は東京は江戸なのだ、だとすると江戸時代にタイムスリップしたのか、なぜたと考え、確か昼ごろ起き、雑誌社に頼まれて、古河の渡良瀬の森、

に住む、むささびを録る為、上野からローカル列車に乗り、古河まで来たはずだ、むささびは夜行性の為、満月の0時以降でないと飛行しない、


そうだ今日は満月だったんだ、綺麗な月だなあと見ていたら、月がくるくる回り、ものすごい風が吹いて、木にしがみついたんだった、そして気を失ったのか、

そうすると、タイムスリップし朝まで気絶していただ、そしてこの娘が発見したのか、なんと言う事だと呆然としたのです、


どこか頭でも打ったのではないか、言う事が少しおかしい、私について来いと言ったので、行く当てもないので、よろしくお願いしますと言ったのです、

そこへ、羽織袴をつけた年寄りがあらわれ、笑美姫さまこのようなところへおなり下さりありがとうございました、名主の正吉ですと地べたに頭を下げるので、

いや、馳走になった、礼はあらためてするぞと言ったのです、


そなたの名前を聞いていなかったな、名前は何と申すのだと聞くので、村上真一朗といいますと答えると、なに村上だと、私も村上だ、そうか、今は坊主でも、

元は武士であろう、まあ訳はきくまい、ところでそなたは馬に乗れるのかと聞くので、少しだけですがと答えると、そうか、名主馬はいないかと聞くと、おります、

と娘が馬小屋から馬をつれて来たのです、


そなたはそれに乗ってついて来い、馬は屋敷に後で取りに来い、その時今回の褒美を取らせるぞと名主に言い、真一朗が馬に乗ると、ゆっくりと出ていったのです、

しばらく、様子をみていたが、なかなかやるではないか、それでは駆けるぞといい、ムチを一発いれ走りだしたのです、


真一朗も馬にムチを入れ後を追いかけたのです、真一朗は大学の時、馬術部に属しており、馬は得意で、暇があると牧場に馬に乗りに通っていたのです、

あぜ道をついて行くと、町並みが見えてきて、河のほとりに3層の天守閣が見えて来たのです、城下町を通り抜け、大手門を左に曲がり、一件の屋敷の門を潜った、

のです、


中から小者が飛び出し、笑美姫様お帰りなさいましと挨拶した、馬をおり、こちらについて来いと、玄関で足を洗い、奥座敷に連れていったのです、

ここが今日からそなたの部屋だ、ゆっくりするといい、しばらくすれば病気も治るだろう、ここにおる、メイがお前のめんどうを見てくれると一人の腰元を紹介、

したのです、


メイですと畳に頭をつけ挨拶したので、宜しくと頭を下げると、この者は頭を打ったらしく、時々変な事を言うが気にするではないぞと笑美姫がいうと、そうですか、

それはお気の毒にとまじまじ真一朗の顔を見たのです、姫は一服したら私の部屋に連れてきてくれ、色々聞きたい事もあるのでなと言い、部屋を出て行ったのです、


メイがお茶を差し出し、それにしても、変な格好をしていますね、前に聞いた事のあるオランダ人の服装みたいと言ったのです、そうか、この時代ではズボン、

と洋服、靴、は見た事がないんだな、気をつけないと、バテレンと思われてはまずいと思ったのです、


真一朗はひょんな事から江戸時代にタイムスリップしてしまったみたいです、現代に帰る事がはたして出来るのでしょうか、また、タイムスリップして初めて会った、

女が、自分と同じ村上の姓であるなんて・・・・・・
















  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る