第12話 12/24(日) 14:00
家から車で10分。
近隣では一番大きなショッピングモールに来ていた。
「うわぁ、さすがにクリスマスで日曜日、ものすごく混んでる…」
「そうねぇ~、しょうがないわね~」
駐車場渋滞で30分ほど待たされ、思ったよりも時間がかかってしまっていた。
「おとーちゃん、何がいいかな…」
「パパに聞いて……みたら、きっと、本気でなんでもいい、って言いそうだわね」
「あー…間違いないと思う」
「5歳の時にリョウコがあげた“泥団子”を大事に持っているくらいだから……」
「…え!?なにそれ!?」
「さすがに覚えてないわよね~。
あなたが幼稚園で作った泥団子をクリスマスにあげたのよ~。
『すっごいきれいにできたのー!』
って言ってね。
で、なんか特殊なケースに入れて、崩れないように今も保管してあるのよ…」
どこか諦めたような悟りを開いたような、そんな顔で母が言う。
「おとーちゃんって…もしかしてちょっとアレ?」
リョウコも同じ顔で遠くを見つめる。
「あなたのことになると、特にね…」
しばし、虚無な時間が流れていた…。
「…さすがに泥団子をあげるわけにもいかないし、何か考えよう」
「どうせなら、普段から使えるものがいいわね」
「普段から、か…。
あ!お財布!!」
「ああ、いいわね。
だいぶボロになっていたはず」
3階、紳士小物売り場。
お目当ての財布はすぐに見つかった、が…。
「う…高い……」
1万円を超えるその品は、高校生でバイトもしていないリョウコにはかなりキツイ。
「でも、これ、絶対おとーちゃんに似合うと思う…」
黒と青の中間のような色の、レザーの長財布。
かたすぎず、カジュアルすぎず、また手触りもとてもいいものであった。
「うう……」
予算は5000円。
なけなしのお小遣いをためていたものだ。
「じゃあ、足りない分はママが出すわ。
ママもまだ買ってなかったから」
「…いいの?」
「もちろん。
パパに合うと思って、リョウコが選んだものでしょ?
ママもすごくいいと思うし」
「ありがとう!おかーちゃん大好き!」
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