サンタクロース捕獲計画

ただみかえで

プロローグ 12/22(金) 13:04

ここは都内のとある高校。

今年は16歳になるハレカワ リョウコは、夢の世界へと旅立とうとしていた。

無理もない。

午前中最後の授業は、気温5℃の寒空の下、マラソンの授業をさせられていたのだ。

お昼ご飯を食べてお腹がいっぱいになったのに加え、α派を出しているのではないか?と思われる古典の授業。

期末テストも終わり、これが今期の最終授業。

終われば6時限目は大掃除が待っている。

眠るな、という方が無理な話である。

ざっと見渡しただけでも、すでに数人、先に旅立っている。


そして、リョウコは夢を見る。

5年前のクリスマス前日。

教室で、友人とちょっとした言い争いになった、あの日を。


「あのなー、ハレカワ。

 サンタなんてのはいないんだぜ?

 あれはな、親なの?

 いい加減俺たちも子供じゃねーんだからよー、気づけよー!」

冬だと言うのに半袖短パンに、肘にも膝にも絆創膏を貼った、いかにもガキ大将といった風貌の彼は、そう言ってリョウコをバカにしたようにまくし立てた。

「子供じゃねー、って、あんたどう見たって子供でしょ?

 それに、サンタはいるよ。

 うちの両親、仕事で家にいないときだってあるけど、朝にはプレゼントが置いてあったもん!!」

小学5年生ともなると、ちょうど女の子は成長期が始まる。

当時、他の子よりいち早く成長期に入ったリョウコは、ガキ大将より10cm以上高みより見おろしながら反論をする。

背が高い、ということは、それだけに威圧感がある。

「うるせー!デカ女!

 お前と違って俺はガキじゃねーんだよ!

 だからな、サンタなんていないったらいないんだよ、ばーーか!!」

故に、勢いに押されたガキ大将が捨て台詞を残して去っていったとしても、無理からぬことである。

「サンタは、いるもん!!」



キーンコーンカーンコーン


うとうとと夢見心地に懐かしい思い出にひたりながら、リョウコは目を覚ます。

気がついたら、古典の授業は終わっていた。

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