非日常は突然に

???eide

白昼の犯罪者

 穏やかな太陽の光が優しく照らす、五月の始めの昼間。アパートやコンビニが並ぶ街の一角で、建物の陰に身を潜めている影が三つ。


「おい、これからどうするんだよっ?」


 一人の男が苛立ったように言ったものの、残る二人の男は何も答えられない。


「もう後には引けないよな。刺しちまったしよ」


 男の手にはナイフが握られていて、そこにはまだ乾ききっていない赤い液体がこびり付いていた。


「あの警官、死んだかな?」


 一人がナイフを持った男にそう尋ねたけれど、尋ねられた方は首を横に振る。


「刺したと言っても急所は外れていただろうから、死んではいないだろうさ」

「そうなのか?結構血が出ていたと思ったからてっきり死ぬものだと思った」

「人間あれくらいじゃ死なねえって。血に関してはちょっとうるさい俺が言うんだから間違いないさ。今頃救急車にぶち込まれているんじゃねえか?」


 そう言って話す二人に対し、もう一人が苛立ったように声を上げる。


「おいお前ら、何暢気に話してるんだよ。モタモタしていると、今度はこっちがパトカーにぶち込まれるぞ」


 途端に話していた二人は静かになる。

 男達は焦っていた。自分達がやった事に対してではなく、自分達がやっていた事が露見してしまった事に。


「なあ、これからどうするよ」

「お前それ、さっきも言ってたぞ。とりあえず隠れ家まで逃げてその後は……ヤバイ、見つかった」


 話しているのを中断させて男が目を向けたその先には、警察の制服を身に着けた数人の男が、こちらに向かって走って来るのが見えた。


「おい、逃げるぞ!」

「逃げるってどこへ?」

「知るか!どこでもいいから、さっさと走るんだよ!」


 迫ってくる警察官に背を向けて、男達は走りだした。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る