邂逅
イ「もふ」
ネ「寒くなってきたよなあ最近
俺も手袋つけてくればよかった」
イ「北部は風を遮る建物が少ないから
余計に寒く感じるよ」
ネ「まあいつも通り人もいないし
ゆっくりしてようか」
ネ「っと、わるい、トイレ行ってくる」
イ「冷えた? 大丈夫?」
ネ「風邪ひくほどのことじゃないって
ここで待ってて」
イ「ほーい」
イ「おっそいなあネイブ」
シ「こんばんは、お嬢さん」
イ「?」
シ「ああ、こんなに明るいんだ、こんにちはの方が良いかな?
だって夜は暗いもんだろ?」
イ「なんの用事ですか、光都警備隊なんかに」
シ「残念ながら私が話したいのは光都警備隊なんかじゃない
お前自身だよ、イーリ」
イ「……!」
(音・ナイフ)
シ「おおっと、いきなり武力行使か、血の気が多い
狩猟民族は伊達じゃないってか」
イ「どうして私のことを知ってる……!」
シ「ああ、そりゃ知ってるさ
知らなきゃこんな辺鄙なとこに話しにこねえだろ?」
イ「……!」
シ「もっとも、そっちはティーブレイクする気なんか
さらさらないって感じだけど」
シ「いいぜ、挨拶がわりに一戦交えようか!」
(音・煙)
イ(爆弾……じゃない、これは……煙幕?
視界は真っ黒だ……でも)
シ「行くぞ!」
イ「!」
(音・ナイフ)
シ「闇の中でよく避けられたね
普通ならちびって泣き崩れてもおかしくないのに」
イ「笑わせないでよ、こんな紛い物の闇で夜を語るなんて」
シ「あっはは、手厳しいや」
シ「なら、本物ってやつを見せてもらおうか」
(音ゲーに移行)
Sランク
シ「ちょっ、ちょっ、タンマタンマ!」
イ(殺れるっ!)
(音・金属摩擦音)
シ「あっぶな、死ぬかと思ったぜ……
流石にこんなダサい死に様はごめんだ」
イ「……」
シ「ああもう、そんな残念そうな顔しないでよ
謝るからさぁ、はいっ、ごめんねぇ〜」
(音・銃声)
シ「ひゃあ、銃は勘弁! ほら私、もう手ぶらだよ!
無抵抗の市民を攻撃するの良くないと思うなあ!」
イ「なら、おとなしく捕まっとく?」
シ「無理だね!」
(音・煙)
イ「くそっ、また目眩し!」
シ「それに今日は喋りに来ただけだしね!
最後に重大なお知らせ!」
シ「お前はまだ本当の闇も光も見ちゃいない
それを目の当たりにする時、それまで覚えといてくれ」
シ「イーリ、私はお前を待ってる!」
イ「……逃げた」
ネ「おい、イーリ!」
イ「ネイブ」
ネ「銃声が聞こえたけど、大丈夫か?」
イ「大丈夫だよ
なんか勝手に逃げてったし」
ネ「いやそれ大丈夫じゃないだろ!」
イ「大丈夫だって、なんかゴミカスだったし
報告書出せば問題ないでしょ」
ネ「ゴミカスて」
イ「それよりちゃんと手洗った?」
ネ「あ〜あ、はいはい、心配して損したぜ」
イ(本当の……闇と光
何が隠されてるって言うんだ、この街に)
イ(この、明るい夜の裏側に……)
Aランク
シ「はぁっ……はぁ……ははっ、やるねえ」
イ「そっちこそ……何も見えないはずなのに
まるで私が見えてるように動いてる」
シ「そりゃあ慣れてるからね
じゃないとわざわざ煙幕仕掛けたりしないっての」
イ「んで、そっちは何者なのさ?
とても一般市民とは思えない」
シ「言えないねえ、それは
ヒーローは名乗らないから夢がある、そうだろ?」
イ「御託はいいから、さっさと名乗って
じゃないと、死ぬよ?」
シ「う〜ん、君の未来の相棒、とでも言っとく?」
イ「……」
シ「あ、うそうそごめん、今のなし!」
シ「でもあながち嘘でもないんだよねえ
どう言えばいいのやら」
イ「……どういうこと、意味がわからない
ふざけてないでちゃんと言って?」
シ「今はまだ、言えないねえ」
イ「今言わなくていつ言うの」
シ「イーリが本当の世界を知った時、かな?」
イ「!」
シ「おっと時間だ、じゃね!」
(音・煙)
イ「……待て!」
シ「ごめんね、無理!」
シ「じゃ、また会う日まで!」
イ「……逃げた」
ネ「おい、イーリ!」
イ「ネイブ」
ネ「なんか騒がしかったけど、大丈夫か?」
イ「大丈夫だよ、不審者に襲われただけ
なんか勝手に逃げてったし」
ネ「いやそれ大丈夫じゃないだろ!」
イ「大丈夫だって、なんか変な人だったけど
報告書出せば問題ないでしょ」
ネ「変な人ねえ……イーリにとっての変な人だからなあ」
イ「それよりちゃんと手洗った?」
ネ「あ〜あ、はいはい、心配して損したぜ」
イ(本当の世界? 何なんだよ、それ)
イ(まるで何もかも見透かしたような顔で……
なんか、ムカつくなあ)
Bランク
シ「ふふふ、いい反応するねえ
さすが都外編入者だ」
イ「げほっ……はぁっ……はぁっ……」
イ(くそ……何が流石だよ
息ひとつ乱してないくせに……!)
イ(う……目視できないせいで
出血がどのくらいかよくわからない)
シ「緊張してんの?
もしくは……ビビってる?」
イ「!」
シ「はは、怒んないの!」
シ「今はまだ、戦うべき時じゃない
言ったでしょ、挨拶がてらだって」
イ「じゃあ、何をしにきたの」
シ「んとね、じゃあ本題に入るかあ」
シ「光の中で見えるものが、本物だとは限らない
イーリならこの意味、よーくわかるよね」
シ「そのときが来たらいつでもおいで
私はずっとイーリを待ってるから」
シ「じゃね!」
イ(見逃された……?
くそ、煙幕のせいでよくわかんない……)
ネ「おい、イーリ!」
イ「ネイブ……」
ネ「なんか騒がしかったけど、大丈夫か?」
イ「……大丈夫、不審者が話しかけてきただけ
勝手に逃げてったけど、問題ない」
ネ「いやそれ大丈夫じゃないだろ!
なんか傷だらけだし!」
イ「報告書出せば問題ないでしょ、多分
毒とか仕込まれてないみたいだしね」
ネ「……早く! 救護室行こう!」
イ「あ、急に手え掴まないでよ
ちゃんと洗ったの?」
ネ「んなこといいから!」
イ(本物とは限らない……かあ)
イ(私が命がけでこの目に焼き付けた景色すら偽物なら
本当のこの街には何があるっていうんだろう……)
Cランク以下
シ「遅い、ね」
イ「!」
(音・ナイフ)
イ「ぐ……あぁ……」
イ(横腹……!
急所を、外された……!?)
シ「よっ、と」
(音・打撃)
イ「げぉっ……」
イ(今のは……回し蹴りか
ただでさえ真っ暗なのに……意識が……)
シ「う〜ん、本当に言いにくいんだけどさ
本当に試験突破して来たの?」
シ「それとも本当は体の調子悪かった?
ならごめんね、タイミング悪くて」
イ「何が……目的だ……!
こんな……嬲るような真似を!」
シ「いや、警備隊に都外から隊員が入ったっていうから
どんな奴かなあって」
シ「まさかこんな可愛い娘だとは思わなくてさ
ついつい良いとこ見せてやろうと力が入っちゃって」
イ「……」
シ「あーあー、どうして私ってやつは可愛い子に嫌われるのかねえ
くそう、もったいない」
シ「あ、それとね、イーリに伝えなきゃいけないことがある」
シ「光に染まりすぎないことだね、まずは
イーリにしか見えないものがあるってのを忘れないように、良いね?」
シ「それと、まあこれは気が向いたらで良いんだけど
もし何もかもがわからなくなったら、私を探すといい」
イ「……」
シ「それと、これは置き土産だ」
イ「な……薬!?
何をする気だ! やめろ!」
シ「大丈夫、とっても気持ちよくなれるお薬だからね……
てのは冗談だけど、悪いようにはなんないさ、たぶん」
イ「うぅ……やめろ」
シ「もう、贈り物は素直に受け取るもんだよ?
ほら遠慮せずにゴックンして!」
イ(くそ、顎を持ち上げて無理やり飲ませようと……
抵抗する力……残ってない……)
シ「はい、よくできました」
イ(なんだこれ……眠い……)
シ「今日伝えたこと、それと私を忘れないでね?
じゃあ、また会える日まで、さよなら!」
イ(なん……なんだ……あいつは……)
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