opening 2

−−−衆都リクタリア


イ「……」

イ「夜が、遠いなあ……」

ネ「どうしたん……です、か? イーリさん」

イ「イーリでいいよ 同い年だし」

ネ「ああ……じゃあ、よろしくな、イーリ

  それで、夜が遠いってどういうこと?」

イ「この街、眩しいなあって

  夜空があんなに遠くに見える」

ネ「そりゃそうだよ。この世界じゃ闇は呪い

  絶対に近づいてはならない存在だから」

イ「神経質? 潔癖症?」

イ「まるで私たちすら消毒しようとしてるみたいで

  綺麗なんだけど居心地が悪いなあって」

ネ「ああ、イーリは街の外から警備隊に入って来たんだっけ?

  じゃあ、この光で溢れる大通りは確かに落ち着かないかもな」

ネ「大丈夫だよ すぐに慣れるだろうから」

ネ「この街で生まれた俺たちは

  この光を浴びてるだけで安心できるくらいだぜ」

イ「闇の呪いから逃れられるから?」

ネ「それもあるけど、小さい頃から光は正義の印だって教わってきたからね

  だから、この街の人達はみんな光の下に集う」

イ「ふ〜ん、だからネイブは光都警備隊に入ったんだ?

  正義の味方になるために」

ネ「はは……そうかもしれない」

ネ「みんなの役に立ちたいけど、俺バカだからさ

  だから自分の身を呈してこの街を守るしかないってね」

イ「……立派だよ」

ネ「どうも、ありがと」

ネ「イーリはなんでわざわざ警備隊に入ろうとしたんだ?

  危険な仕事だし、外部入隊は狭き門だって聞くけど」

イ「見たかったからだよ」

イ「この光の街がどんなところなのか、見たかったから」

イ「辺境の狩猟民族の小娘でしかない私には

  この街に入る方法は警備隊への入隊しかなかったし」

ネ「見たかったって……それだけの理由で、こんな危険な仕事に?」

イ「そのくらい、見たかったんだよ」

イ「気になったものは目に焼き付けないと死ねないんだ

  私っていう生き物はね」

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