ゴールゲートにて
14:00過ぎ/モコリロパーク陸上競技場ゴール付近
ゴールゲートの付近では、いろいろな制服をまとったランナーたちが帰ってくるのを、たくさんの応援する人たちが待ち構えていた。会場のアナウンスが、参加者名簿からゼッケンで調べたんだろう、ゴールに向かって走ってくるランナーの名前を呼ぶと拍手が起こって会場が大いに盛り上がる、次々とゴールするランナーの名前と、おめでとうコールがアナウンスされて、それぞれの物語のエンディングがプロデュースされていた。
タマちゃんがゴールゲートに行くと、すでにお風呂から上がったサルトルとQ太郎先生、まりあ事務長とうちの愛娘2人が手を振ってくれて無事合流できた。
「何人くらい時間内にゴールできますかねぇ」
「大丈夫です。諦めさえしなけば全員がゴールできると確信してます。
「でも諦めたら・・・」
「諦めたときが試合終了です。スラムダンクで安西先生も言っていました」
「なにそれ? でもみんな根性なさそうだし・・・」
「それは違うと思います。みんなプライドと愛情に支えられて走っているはずです。そう信じています。」
「マジっすか? サルトルはそんなに人を信じる人だったの? Q太郎はどう思う?」
「分からないけど・・・所長を信じたいかなぁ」
「まりあさんは?」
「私は個人的にもですけど事務長としても、所長と、職場の仲間を信じたいと思います」
「ついでに、娘たちは、どう思う?」
「うーん ママに怒られないようにちゃんと頑張れよ!」(あなたのお母さん、そんなに怖いんですね?)「お腹が空いた、早く帰って来ーい」
汗で塩を吹いた作務衣のような制服を着た検査技師の川上が目を吊り上げて必死な形相で、続いてスーツ姿のケアマネ―ジャーの山本もヘトヘトな表情でゴールしてきた。2人ともかなり疲労困憊でヘロヘロ、意識も朦朧として今にも死にそうな表情だったのが、ボランティアの女子高生にフィニッシャータオルをかけてもらう時には気のせいか誇らしげな表情をしたのが見えた。
「お疲れ~」と声をかけると2人とも涙を流しそうな表情になったのでもらい泣きをしてはイカンと思わず目をそらした。
制限時間の16:00までにあと4人、こんなんで本当に全員がゴールできるの?
制限時間30分前になってなんとか、若手看護師の尾尻沢里奈が自慢のバストを揺らしながら、化粧が落ちて塩を吹いた顔で泣きながらゴールしたものの、ついに制限時間まで5分前を切った。
「あとの3人は、やっぱだめかな」
「全員時間内ゴールは無理かな」と半分以上というかほぼ諦めていたその時に、
ほとんど夢遊病者というかゾンビのようになってゴールに向かってくる看護師姿の2人と事務員スーツ姿のランナーが走ってくるのが目に入った。
「おまえら落ち武者か」
場内アナウンスもびっくりしたように名前を連呼しだした。ドスコイ師長を先頭に大井川と細井が制限時間ぎりぎりでゴールした。
奇跡は起こった!
「そこまでやるか!?」と思ったが、ゴール後にへたり込んでお互いの顔を見ながら号泣する3人を見ていると、またもやもらい泣きしそうになったのですぐに目をそらした。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます