第42話 告白シーン
「……小吉さん」
アナがそう呼びかける。
周囲に人はいない。……良かったと思う。
だってこれは、いわゆる、あれじゃないか。
こ、こ、こ、……!
告白シーン!
俺の頬まで赤くなる。
いやいやいや! ここで!? 何となく気持ちに気づいてはいたけど、今ここで!?
「ア、アナ……?」
「小吉さん、私」
「お、おう……」
「私……」
アナがじっと見つめてくる。アナが俺のことが好きかも、というのが勘違いだとしても、好きになってしまいそうだ。
「私、小吉さんのことが……!」
「小吉ー!」
緊迫した空気をぶち壊したその大声の主は。
「小吉、ほったらかして行かないで欲しいネ!」
サテナだった。
「サテナ、なんでここに」
「小吉を探してたんだけどネ、ようやっと見つけた!」
ずっと探してたのか……?
「なんでまた」
「言ったよネ! 悪魔界に連れて行くって」
「え、今日!?」
「今日しかないネ! 早く早く!」
「い、いやちょっと待てって!」
アナとの話が終わってないし、それに気になる事がある。
「お前悪魔なのに、なんで神社に来れるんだ?」
「へ? なんでって?」
「いやあ、神社ってさ、神様の住む場所……神域? だろ。そういうところって悪魔は入れないもんじゃないのかな? って」
アニメとかじゃよくある設定だが。
「ああネ。確かに神域には入れないけど、ここは形だけだから大丈夫なんだよネ〜」
形だけ? この辺でも特にでかい神社である明治神宮がか? ご祭神は別な神社にいる、とかかな。
「小吉さん……」
あ、忘れてた。
アナが寂しそうに俯いている。
「ああ! ごめんごめん!」
「もう、良いです」
まじかー。告白シーン逃したわー。
俺は軽くサテナを睨むが、サテナは全く気づいていないようだ。
「それじゃあ小吉、悪魔界に行かなきゃネ! ついでにアナも連れて行くネ!」
「え? わ、私もですか?」
「いいのか?」
「お父様なら許してくれるネ」
お父様の許しが必要なのか。
……てかサテナのお父さんってどんな
「それじゃあゲートを開くネ〜」
「ここで、か」
「サテナさん、自由ですね……」
サテナが何やら理解不能な言語を呟くと、目の前に子供が一人潜れる程度の小さな穴が出来た。
「さあ、行こう!」
?
「………………?」
小さくね?
「ん? どうしたの?」
「いや、サテナ。これ、小さくないか?」
「ゲートなんてこんなもんだよネ」
「それは……サテナがショボイとかじゃなくて?」
「失礼だネ。小悪魔とは言え、悪魔の中でもトップクラスの魔力を持ってるんだけどネ」
じゃあこれ潜るのか。
まあ、簡単に大きいの作れて頻繁に行き来出来るようになったら、それはそれで困るだろうしな。
まずはアナがゲートを潜る。体が小さいからか、簡単に通った。
俺も肩がつっかえたが、腕さえ通れば楽に潜れた。
その先に広がっていたのは。
「こ、これが悪魔界……」
紅く染まった空。禍々しく巨大な城。飛び交う悪魔達。それは俺が予想していた悪魔界そのものだった。
「これだよこれ! こういうのを求めてたんだよ! 異世界バンザイ!」
突然はしゃぎだした俺に、周囲の悪魔達が視線を寄せる。悪目立ちしている気もするが、そんな事どうでもいい。だって異世界なのだ。これこそ異世界なのだ!
そして最後にサテナがゲートを潜ろうとするが。
「んー。……んんんーー!」
「どうした?」
「んー! む、胸がつっかえてネ……、通れないっ!」
どうにかして胸を押し込もうとする小悪魔の姿はなんともみっともなく。
アナの目には悪魔すら恐怖するほど光がなかった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます