第34話 理解に苦しむ
小町さんがそこそこ大きい化け猫に変身した。種類はジャパニーズボブテイルだろう。
あんなのにどうやって勝つんだよとは言わないが、正直言って戦いたいとは思わない。だってなんか、エドルと仲良さげだったし。いやでも、サテナの弟食ったんだよな。じゃあやっぱ倒すか?
エドルなら余裕で勝てるだろうけど多分エドルには戦意がない。さっきまで人生設計し合ってた人と戦う気あったら、それこそエドルの人間性を疑う。
なら誰が戦う? 俺か。いや無理だろ。ここは哀の出番だろう。なんか因縁っぽかったし。因縁といえばサテナもだな。じゃあ哀とサテナの共闘ってことで。
「哀、サテナ、ここはお前らが場を収めて……」
「小吉さん、頑張ってください!」
「期待してるぜ、木下小吉」
「まあ、木下が戦ってくれるならね」
「小吉なら大丈夫だろう」
えええええ。俺かよ。なんで俺なんだよ。俺すっげー関係ないんだけど。
「小吉。小吉。小吉。小吉」
コールやめてくんないかな。
が、悪い気はしない。ここはラノベの主人公っぽく行こう。やってやろうじゃないか。
「しょ、しょうがねえなー」
「は? 何カッコつけてんの」
「ちょっと引きます」
「そういうやつだったのか」
「理解に苦しむ発言だな」
「何がしたいんだよお前ら!」
理解に苦しむのはこっちだわ!
「ふふ。ここは私の出番でしょう。私の能力は移動に便利なだけじゃないんですよ!」
「帰りの体力残しとけよ〜」
アナは小町さんの前に立ち、腕を組んでドヤ顔をした。
大きく息を吸い、大声で叫ぶ。
「布団がふっとんだ!」
………………。
………………。
………………。
は?
「は?」
「あれ?」
これには流石に、正気を失っている小町さんですらあっけに取られている。
「え、えっと。怒ってる女の人にはジャパニーズジョークで笑わせるのが一番かと……」
恐ろしやオヤジギャグ。イタリアっ子は何を考えるか……。いや、オシャレの国イタリアでオヤジギャグがツボにハマる女の子ってなんだよ。
「どうやら、能力『滑走』は地面だけではなく発言すら滑らせるようだな」
「なるほど。能力のせいか」
「能力のせいなら仕方ないわね」
「小吉さんフォローしてくださいい!」
お前ら女の子泣かすなよ。
とはいえ。
「能力ならしゃーないよアナ」
「小吉しゃんんん!」
だって。それ以外フォローできないでしょ。
「んじゃ、俺の出番だな」
よく考えたら出番ってなんだろ。みんなで戦えば良くね?
「小野小町ぃ! 久しぶりにお前の穴に名刀ぶっ刺してやるぜ!」
「哀。言い方考えて」
なんか卑猥に聞こえるじゃん。間違ってはいないんだろうけどさ。
哀は月斬丸を大きく振りかぶり猫化した小町さんの巨体に斬り掛かる。
しかし小町さんの体に刀身が入る事はなく、哀は弾き飛ばされた。
「かたっ!」
「フフフ。ただの妖刀ごときでわっちに適うわけがにゃかろう」
にゃ。
いよいよサテナかエドルしか戦えにゃいかも。あ、にゃ。
やっぱりエドルに戦って貰うしか……。ダメそうね。エドルったら、目に光が宿ってないわ。あんなエドル初めて見た。
じゃあ、仕方ない。
「サテナ、行くぞ」
「悪魔の本気、見せてやるヨ!」
俺は妖刀「小悪魔」を両手に握った。
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