第17話 君


 ただ広い、本がただ並ぶだけの部屋。本当に広い。向こうの壁が見えない。

「なるほど。原因はどの文書にも残ってないのですか?」

「ええ。ですから誰も、何の為に戦っているのか知らないんです。戦っている本人達ですら......」

 たっきは戦争について聞いていた。話相手はメイド服を着た獣人だ。

「にしても、フェリーナさんだっけ。店では気づかなかったが、獣人だったんだな」

「お店では耳を隠す決まりなんですよ」

 フェリーナ。昨日メイド喫茶で会ったメイドだ。さっき道で再開し、この『国営大図書館サブロ・フィルガー』に連れて来てくれたのだ。サブロ・フィルガーとはファルナ語らしい。

「聞きたいことは聞けました。フェリーナさん、ありがとうございました」

「いえいえ。今度またウチのお店をご利用くださいね」

「はい。それでは」

 たっきが出口に向かったのでついて行った。

「あ、ちょっと待って下さい!」

 フェリーナが叫んだ。周りの視線が集まる。すいませんと頭を下げ、

「これからどうなさるんですか?」

「決まってますよ」

 俺もフェリーナも、たっきを見つめる。

「たっき、何すんだ?」

「戦争を、終わらせるんだ」


「なあ、やめようぜ? 死ぬって絶対」

「安心しろ」

 出来るかよ。

「どう安心すんだよ」

「見てろ」

 そう言うとたっきはハサミを取り出し、俺の手を握る。

「たっき。ハサミ持ってギュッとされたってときめかねえぞ......?」

「ホモじゃねえよ」

 そして俺の小指を、チョキっと。

「ああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあ!!!!!!!!!!」

「うるせえ」

「は、うるせえ? 何言ってんだ馬鹿か!?」

「大丈夫だ。見てみろ」

「見れるかよ!」

「いいから見ろ」

 頭の可笑しいたっきに言われ、恐る恐る小指を見てみる。

「あれ? 俺の手に、指が、ある」

 どう言うことだ?

「実は昨日、異世界こっち来てお前が寝てる時、お前に銃弾が直撃したんだ」

「はぁ!?」

 マジか。てかよく俺起きなかったな

「やべえって思ったけどな、当たったとこの傷口が綺麗に修復したんだよ」

 俺キモ。

 でもそれ、凄くね?

「じゃあ俺、怪我しねえの?」

「ああ。多分。こっちに来た時に能力みたいなのを手に入れて、それがお前は怪我しない能力だったってことだろう」

「俺はってことは、たっきは違うのか?」

「ああ、恐らく。試しに少し切り傷を入れたが、修復はしなかった」

「んでも何かしら能力があるかも知れないのか」

「そう。だからそれを知って、それから戦う」

 結構考えてる。さすがたっきだ。

「ただ問題は......」

 うつむき、

「能力はどうすればわかるのか。だ」

「確かに。調べようがねえな」

「その心配はございません」

 ふと、俺らの横から女の声がした。

 金髪の綺麗な女だ。中世ヨーロッパ風の服を着ている。

わたくしが教えて差し上げましょう」

「何!? 知ってるのか?」

「はい。それと、古井さんの能力も怪我をしないだけではございません」

 って、これ以上あんのか。

「てか、お前誰だ」

「私はマウテード•ドラゴニム。女神でございます」

「ふーん。女神か」

 にわかに信じ難いが、とりあえずまあ、そういうことでいいか。

「で、俺らの能力はなんなんだ?」

「はい。長橋さんの能力は『飛行ひこう』。古井さんは『不死ふし』でございます」

 ふむ。飛行と不死か。

 たっきは飛べるんだろう。

 で俺は不死だから......。

 ん?

「不死?」

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