国史

第14話 昔話

 その昔、世界中の国々が争う『世界大戦』が繰り広げられていた。

 西暦七百年頃から千九百八年まで、血と血が交わり続けていた。原因は不明だが戦争は千年間ずっと続いた。

 そんな無駄な戦争に終止符を打ったのが「異世界からきた冒険者」だ。

 彼らは人間業ではない異能力を持ち、三日で戦争終わらせたと言われている。


 ★★


「おい、起きろ」

 腹に蹴りを軽く入れられて俺、古井ふるいあいは目を覚ました。

 寒い。

「んー。何処だここ。なんで外にいるんだよ俺」

 周りを見ると、そこは草も生えていない荒地だ。

「やっと起きたか。腹パンで起きるとか、お前もしぶといな」

 声は右側から聞こえてくる。右を向くと、よく知った顔があった。

「そんなに寝てたのか俺。たっきはいつから気づいてた?」

 たっきと俺がよんだメガネの男、長橋ながはしたつきは俺の背を向けている方を見ている。

「あれ見てみろ」

「いや、質問に答えろよ」

 そう言いながら俺は振り返り、たっきの見ている方を見る。

「ありゃなんだ?」

 そこでは……、戦争らしきものが繰り広げられていた。

 銃弾が飛び交い、空には爆弾を持った小型の飛行機が飛び回っている。まさしく戦争といった風景だ。

「俺が寝てる間に、第三次世界大戦でも始まったのか?」

「二十年前に太平洋戦争が終わって日本は戦争しない事になったばかりだ。それはないだろう」

「そうとも言いきれねえだろ。急にアメリカとかロシアとかドイツとかが襲ってきて、日本が病む負えず警察予備隊……自衛隊変わったんだった。それを動かすかもしれねえじゃん」

 ボガーンッと、爆発音がすぐ近くで鳴った。正しくこれは戦争をしている。

「それだけの事が、昼寝中に起こるか?」

 たっきが正座していた足をあぐらに変え、戦場をまじまじと見つめる。

 また爆発音がした。

「どういう経緯でも、この状況はまずいな。たっき、取り敢えずあの戦場から遠いところに行こう」

「そうだな」

 立ち上がり、背を向けていた方へ一目散に走った。


 走った先には、ヨーロッパ風の街があった。

「ここ、日本じゃねえのか?」

「言葉は日本語らしいな。文字もだ。あそこに喫茶店があるから、取り敢えず入ろう」

 たっきが前を指さす。たしかに『喫茶店』と書かれた看板が見えた。俺たちはその喫茶店に入った。

「おかえりなさいませ、ご主人様」

 中には白黒のヒラヒラした服を来た女性が四〜五人いて、皆笑顔で俺たちを出迎えた。

「め、メイド?」

 たっきは少し驚いているようだ。

「どうしたんだ?」

「いや、以前あーいう台詞を言う『メイド』を名乗る女に出くわしてな」

「メイド……か。確か、ヨーロッパの金持ちに従える……、遊女的な奴だったか?」

「メイドは花魁じゃねえぞ。お手伝いさんだ」

 玄関でぺちゃくちゃ喋る俺たちに、店中の視線が集まった。

「あ、あの……。ご主人様。どうかなさいましたか?」

 俺らの前に立つメイドがおどおどと言った。

「ああ、悪い。席に案内して貰えるかな?」

 たっきがそう言うと、メイドは安心したように少し笑顔になった。

「ご主人様二名おかえりでーす」

 メイドに連れられた席に座り、俺とたっきは早速話を始めた。

「まず、ここがどこで今どういう状況か把握しねえとな」

「そんなわかってるだろたっき。ここはメイドの喫茶店で俺らが話をしている」

「そういうことじゃない」

 俺のボケに、たっきは冷静つっこんでくれた。流石、幼い頃からの親友だ。

「見るからにここは日本じゃない。さっき見た戦争もそうだ。昼寝中にあんなに野原が荒れ果てる程戦う程、日本もアメリカも、ドイツですらそこまで科学は発展してないはずだ」

「恥ずかしいけど、店員に聞いてみるか?」

「だな」

 そう言うと俺たちは、出された水を飲んで店員が来るのを待った。

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