サーガとかフーガとか 〜日本刀少女にぶった斬られたくない男のための〜

空っ手

日本――東京

狩魔家邸宅

 所は日本。築数十年、古色蒼然たる日本家屋。その居間。


母「長電話だったわねぇ。誰から?」

父「本庁だ」

母「あら、土御門つちみかどさんから直々になんて珍しい。なんの用件かしら」

父「犬塚のお堂が破壊されたらしい」

母「ええ? お堂丸ごと?」

父「いや、詳しい話は向こうも判らんそうだ。正式な依頼というわけでもないからな。ただ、人為的な仕業のようだから、こっちも気をつけるようにと言われた」

少女「ツッチーから?」

母「口を慎みなさい、サナギ。失礼でしょ。あちらが本家なんだから」

少女「はいはい」

父「最近は仕事の依頼もめっきり減ったからな。悪い噂はあまり立てたくないものだ」

母「そういえば、〈逃がし屋〉が暗躍しているって噂もあったわよねぇ。あれ本当なのかしら」

父「さあな。こうも事件が立て続けに起きると、陰陽師連おんみょうじれんも気が気でないだろう」

少女「なになに、また事件?」

母「サナギ、あんたは早く仕度しなさい。初日から遅刻するつもり?」

少女「はいはい、じゃあ行ってくる」

母「忘れ物ない?」

少女「ないんじゃない? 行ってきまーす」

父「……あの娘もスジはいいんだが、なにぶんそそっかしいところがあるからな」

母「そうねぇ、誰に似ちゃったのかしら」

父「お前だろう」

母「あなたでしょ」

父「まあ、どっちに似てもアウトだな」

母「そうねぇ……洗濯に行ってきます。あなたも遅刻しないように」

父「ああ、副収入が滞ってる分、こっちで稼がんとな」

母「堅実が一番よ」

父「主婦のその一言が一番重たいな」

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