天蓋花
神綺
プロローグ
――数年前。
とあることから死の淵を彷徨い、開かれた冥界の狭間――≪冥樹の狭間≫に引き込まれた人間・宮部智汐(みやべちしお)は、そこで一つの“光”に出会う。
その光に導かれ、何とか現世へ戻ることが出来た智汐は、その日から、人であったものや、人のカタチをしたもの――“ナラズモノ”を見ることが出来るようになった。
一方、赤蛇使いの煉獄(れんごく)に襲撃され、誰よりも待ち望んでいた<大人の姿を得る儀式>を受けることが出来なかった少年・黒鳳蝶(くろあげは)。
光として奪われた自分の半分(力)を失った黒鳳蝶は閻魔から、煉獄を滅ぼす為の“自分にしか出来ない”使命を受け、現世へと、降り立とうとしていた。
大人の姿を取り戻すには、そして暴走した煉獄の魂を滅ぼす為に残された方法は、総ての策を打ち砕かれた中で
一つしか、なかった。
見ず知らずの自分に優しく接してくれた“彼”を犠牲に
自らの器(カラダ)と魂、そして紅い世界で唯一優しくしてくれた人を救うか
それともその道を外れるか――
偶然に出遭った二つの魂は
自らが抱えるそれぞれの“恐怖”に抗いながら
更なる残酷な運命が巡ることを知らずに
世界へと呑み込まれてゆく
天蓋花――Tengaika――
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