4月

ハピハピミケちゃん

「うそだもーん」

 クマパンちゃんが、ゲラゲラ笑うの。


 あたしはがっかりして、今度はきつねこちゃんに言ったの。


「うそよ〜、そんなの」

 きつねこちゃんも、クスクス笑うの。


 だから、次にチャコマロンちゃんに言ってみたのよ。


「うっそー、ミケちゃん、なに言ってるのぉ」

 って、やっぱり笑うの。


 それで、コンちゃんの方を見たら、

「うそ、うそ、うそだよ〜、ミケちゃん」

 って、ひっくり返って笑うんだもの。


 もう、そしたら、あたしも笑うしかないじゃない?


 みんなで笑っていたら、ミツバチのアピさんがやって来たのよ。

「なんだか、みんな楽しそうね」


「こんにちは、アピさん、おひさしぶり。春になったから、蜜集め忙しいね」


「こんにちは、ミケちゃん、おひさしぶり。お花がいっぱい咲くからね。どうして、みんな、笑っているの?」


「だって、アピさん、ミケちゃんたらさ、今日はおもしろいことばっかり言うんだもの! ああ、おかしい!」

 クマパンちゃんが笑いながら言ったから、他のみんなも思い出し笑いで、クスクス、ゲラゲラ。


「えっ、えっ、ミケちゃん、なんて言ったの?」

 アピさんが身を乗り出して聞くから、あたしは教えてあげんだ。

「うそだぁ、ミケちゃんたら、いくら、エイプリルフールだからってぇ!」

 アピさんも、集めて来たレンゲ草の蜜をこぼしそうになるくらい笑うのよ。


「そうだよね、ミケちゃんたら、うそ下手すぎるよね」


「クマパンちゃんたら! そこは、うそが上手だと言わなきゃ、エイプリルフールなんだし!」

 あたしが口を尖らせて言うと、アピさんがあたしにたずねたよ。


「だったら、ミケちゃんはうそが上手って、みんなから言われたいの?」

 うーん。あんまり言われたくないな。

 みんながあたしのうそでだまされて、あとから楽しくなるんならいいんだけどね。

「そうでしょ、ミケちゃん。ミケちゃんのエイプリルフールのうそが下手すぎて、だれもだまされなかったけど、みんなが楽しくなったから大成功じゃない?」


「そう、そう、ミケちゃん」

 きつねこちゃんもチャコマロンちゃんもコンちゃんもうなずいているのに、クマパンちゃんたら余計なこと言うのよ。


「アピさんの言うことがエイプリルフールのうそだったりして〜。ミケちゃんのうそが楽しくないから、ぼく、泣いちゃうよ〜、エーン、エーン」

 クマパンちゃんの泣き真似があんまり下手すぎて、あたしは吹き出しちゃった。

  


 あたしが、最初にどんな下手なうそを言って、みんなを大笑いさせたのか知りたい?

 それはねぇ〜、やっだぁ、思い出しただけで笑えて来た! 笑いすぎて、腹筋いたいよ〜!


三毛猫ミケ



 

***




 ミケちゃんたら、どんな楽しいうそ、ついたのかしら?

 気になりますね。


 4月1日はエイプリルフールですが、ミケちゃんにとっては大切な記念日。

 これは、嘘ではありませんよ。


 実際のミケちゃんは、もとは外猫で、やすらぎさんのお店にごはんをもらいに来ていました。

 それが、夜もお店にお泊まりするようになって、2019年の4月1日で3周年になります。

 最初は、やすらぎさんも外猫だったミケちゃんを、夜ひとりでお店に置いていくのが心配だったそうです。

 やすらぎさんのお家には、内気で高齢の先住猫さんがいて、活発なミケちゃんとの同居が難しかったのです。だから、やすらぎさんは、一時期、ミケちゃんの里親探しも真剣に考えていました。(実は、その先住猫さんがチャコマロンちゃん。お話の中だけでもミケちゃんといっしょにいてもらいたくて、絵日記ミケちゃんの中に登場してもらっています)


 でも、やすらぎさんの心配をよそに、ミケちゃんはこの3年間一度もいたずらも粗相そそうもしませんでした。

 後ろ足が片方しかないミケちゃんは、外猫時代につらい思い、悲しい思いをたくさんしてきたから、やすらぎさんが困るようなことは決してしないんでしょうね。


 今ではすっかり家猫のミケちゃん。やすらぎ治療室の看板猫です。


 日本国内はもちろん、海外にもファンがいるミケちゃん。 

 健気で、明るく、賢いミケちゃんは、みんなの心をハッピーにしてくれます。


 ハピハピミケちゃん、記念日おめでとう!

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る