Happy Valentine’s day ! 其の二

 お菓子屋さんの前に、チャコマロンちゃんがいた。

 チャコマロンちゃんは、慌てて、お菓子屋さんの紙袋を後にかくした。たぶん、大好きなコンちゃんにあげるチョコを買いに来たのね。

 チャコマロンちゃんは、とっても恥ずかしがり屋さんだから、あたしたち、わざと気がつかないふりをした。


 お菓子屋さんは、相変わらずの大繁盛。みんな、並んでチョコレートケーキのキットを買っている。


 きつねこちゃんたら、並んでいる間も楽しそう。手作りケーキをあげるひとたちを指折り数えてるの。

 「ミケちゃんは、どうする?」って聞かれたけど、「うん、そうね」って、あたしはあいまいなお返事しかできなかった。


 やっと、あたしたちの番になって、お店に入ることができた。

 お菓子屋さんの今日のお当番は、縞三毛猫のこのみちゃん。あたしとは、三毛猫仲間ね。


 「ご試食どうぞ」

 このみちゃんが、一口サイズのケーキが乗ったお皿を差し出した。


 「ミケちゃん、これがブラウニーっていうチョコレートケーキなんだよ」

 きつねこちゃんが、嬉しそうに言った。「わぁ、すごくおいしい! ほら、ミケちゃんも早く食べてみて」


 きつねこちゃんが、あたしの口に、ケーキを押し込んだ。 

 ブラウニーは、あたしのゆううつな気分もどこかに行っちゃうほど、おいしかった。

 ほんとに、こんなに美味しいブラウニーが、自分で作れるのかな。

 

 「できますよ」このみちゃんが、にっこり笑った。「そのうえ、おこのみこのみのブラウニーは、作るひとのお好みによっていろんなブラウニーができます。だから、きつねこちゃんはきつねこちゃんのブラウニー。ミケちゃんは、ミケちゃんのブラウニー。ミケちゃんときつねこちゃんがいっしょに作ったら、ひとりで作った時とはまた違うブラウニーができるんですよ」


 「すごーい! いっぱい作っちゃおう! ねっ、ミケちゃん!」


 きつねこちゃんたら、全部買い占めそうな勢いで、ブラウニーのキットをたくさん買い込んだの。

 あたしが、ちょっと呆れていると、きつねこちゃんがウインクした。


 「ミケちゃんの分もあるからね」


 「あ、ありがとう。あたし、ぬいぐるみのクマパンちゃんやひろみちゃんたち、だけだから」


 「やだ、パロさんやペロさん犬さんたちの分もいるでしょ。それに、一番大好きって言わなきゃいけないひとの分!」


 あたしは、ドキッとした。


 「友チョコのあたしへの分! あたしもあげるから交換しようね!」

 きつねこちゃんは、そう言って笑ったの。


三毛猫 ミケ

(続く)

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