七月

七夕バタバタ笹の葉サラサラ

 クマパンちゃんが、さっきから、棚の上を嬉しそうにバタバタと走り回っています。


「クマパンちゃん」


「なあに、ミケちゃん」


「わかったから、笹にお飾りを吊るすの、手伝ってよ」


「わかったって、何が?」


「クマパンちゃんが、棚の上をバタバタしてんのが」


 でも、クマパンちゃんはチラッとあたしの方を見ただけで、相変わらず、棚の上でバタバタしています。

 あたしはうんざりしたけど、このままだとお飾りがちっとも吊るせないから、仕方なく言いました。


七夕たなばただから、の上でしてんでしょ、クマパンちゃんは」


「よくわかったね、さすが、ミケちゃん!」

 クマパンちゃんは、ピョンと棚から飛び降りました。


「短冊もあるから、クマパンちゃんも願い事、書いてね」


「ミケちゃんは、なんて、書いたの?」


「『クマパンちゃんが、おじさんくさいダジャレを思いつきませんように』」


「ミケちゃん、ひどい!」

 クマパンちゃんは、半べそになりました。


「ごめん、ごめん。あたしが、そんなこと、書くはずないでしょ。クマパンちゃんは、なんて書くの?」


「『ミケちゃんが、意地悪を言ってぼくを泣かせたりしませんように』」


「クマパンちゃん、ひどい!あたし、クマパンちゃんに、意地悪なんてしないよ!」


「ごめん、ごめん。ミケちゃんが『おじんくさいダジャレ』って言うからだよ」


 だって、そもそも、クマパンちゃんが棚の上でバタバタするからでしょって、あたしは心の中だけで言いました。


 それから、あたしとクマパンちゃんは、書いた短冊の見せ合いっこをして、お飾りといっしょに笹に吊るしました。


「ミケちゃん、短冊、まだ、こんなにあるよ。チャコちゃんやみんなにも、願い事を書いてもらおうよ」


 チャコちゃんとは、チャコマロンちゃんのこと。あたしのお姉さんです。


「うん、クマパンちゃん。そのつもりで、たくさん、短冊、作ったんだもの」


 あたしとクマパンちゃんはスキップしながら、チャコちゃんやお友だちのきつねこちゃんやひろみちゃんたちを呼びに行きました。


 みんなの願い、叶うといいな!(続く)


 三毛猫 ミケ



***



 七夕は、五節句のひとつです。

 五節句は、1月7日の人日じんじつ、3月3日の上巳じょうし、5月5日の端午たんご、7月7日の七夕、9月9日の重陽ちょうようのことです。


 七夕の短冊に願い事を書くのは、乞巧奠きっこうでんに由来します。

 乞巧奠は、奈良時代に中国から伝わってきたそうです。宮中や貴族の間で行われ、牽牛けんぎゅう織女しょくじょの二つの星を祭って、手芸・詩歌・管弦楽・書などの上達を梶の葉に書いて祈願しました。

 それが民衆にも普及して七夕になり、短冊に願い事を書くようになったといわれています。


 五色の短冊の五色は、青・赤・黄・白・黒。

 これも、中国の陰陽五行説に基づいているんですって。


 

 ミケちゃんとクマパンちゃんは短冊になんて書いたのかしらね???

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