二月

お役立ち!クマパンちゃんの素朴な疑問集

 バタバタ バタ

 バタバタ バタ


 バタバタ バタ

 バタバタ バタ

 



 あたしが走り回っていたら、トコトコ トコと、クマパンちゃんが追いかけてきました。 

 「ミケちゃん、何、走り回っているの?」


 「見ればわかるでしょ、クマパンちゃん」


 「わからないから、きいているんだよ、ミケちゃん」


 「逃げないように追いかけているの。クマパンちゃんも、いっしょに追いかけて!」


 「りょーかい」




 バタバタ バタ

 トコトコ トコ


 バタバタ バタ

 トコトコ トコ




 しばらくして、クマパンちゃんが走りながら、たずねてきました。

 「ミケちゃん、ちょっと、きいてもいい?」


 「忙しいから、込み入ったことなら、あとにしてよ、クマパンちゃん」


 「込み入ったことじゃないよ、ミケちゃん。かんたんなことだよ、たんなる素朴な疑問」


 「それなら、きいてもいいよ、クマパンちゃん」


 「ぼくたち、いったい、何、追いかけてるの?」


 「2月」


 「???に・が・つ???」

 

 「うん、2月」


 「ねぇ、ミケちゃん、まさかと思うけど、『にがつ』って、もしかして2月のこと?」


 「そうだよ、その2月だよ」


 

 せっかく答えてあげたのに、クマパンちゃんたら、ピタッと走るのをやめてしまいました。

 でも、あたしはクマパンちゃんにかまっているヒマはありません。だって、2月が逃げちゃう前に、追いかけて、つかまえなくちゃならないからです。




 バタバタ バタ

 バタバタ バタ




 あたしが、街を一周して、戻ってくると、クマパンちゃんがさっきと同じところに立っていました。


 「ミケちゃん、ぼくの素朴な疑問その2、きいてくれる?」

 クマパンちゃんが、声をかけてきます。


 「あとにしてよ、クマパンちゃん。クマパンちゃんと立ち話していると、2月が逃げちゃうから」



 その2に答えず通り過ぎたら、クマパンちゃんは追いかけてきて、あたしのしっぽを捕まえました。

 しっぽを捕まえられたら、止まらないわけにはいきません。あたしは、ムッとして、抗議しました。



 「ちょっと、クマパンちゃん!捕まえるのはあたしのしっぽじゃなくて、2月!!!」


 「素朴な疑問その2。ミケちゃん、なんで、2月なんて、追いかけているの?」


 クマパンちゃんは、その2に答えるまで、きっと、あたしのしっぽをつかんだままでいるでしょう。長い付き合いだから、わかります。

 あたしは仕方なく、答えました。

 

 「なんでって、2月は逃げるからでしょ。その2に答えたから、もう、いいでしょ。しっぽ、早く、放してよ!」


 でも、クマパンちゃんは、しっぽを放してくれず、まんまるな目を余計にまんまるにしました。

 「えっ?えっ??えっ???ミケちゃん、2月って逃げちゃうの?!」


 「当たり前でしょ!『2月は逃げて走る』って、ことわざ、知らないの?2月が逃げちゃったら、バレンタインデーも逃げちゃって、クマパンちゃんにチョコレート、あげられないんだよ!!」

 

 「ぼく、ハチミツ風味でベリーやナッツのいっぱい入ったチョコがいい。それと、素朴な疑問その3」


 「もう!いくつ素朴な疑問に答えなきゃなんないのよ!」


 「ぼく、素朴な疑問集、持っているんだ。それで、ミケちゃん、2月が逃げて走るからって、そもそも追いかけて走って、捕まえられるものなの?」


 「……」

 クマパンちゃんにそう言われて、あたしは、ふむと考え込んでしまいました。

 そういえば、あたし、2月って見たことないし。

 見たことないから、もし、2月があたしの前を走っていても、それが2月だって、わからないかも……。

 そうよね、見たことのない2月をこのまま、ずっと追いかけていたら、それだけで、2月が終わっちゃって、バレンタインデーのチョコレートを買いに行く時間だって、あげる時間だってなくなるわ。

 逃げちゃう2月をバタバタ追いかけていると、結局、2月の予定や楽しみも逃がしちゃうってこと?????

 だったら、2月が逃げちゃうってあせってバタバタせずに、チョコレートの準備でもしていた方が、2月が逃げないってことなのかしら。

 ふむ。

 クマパンちゃんの素朴な疑問集も、お勉強になるな。


 

 あたしの顔を見て、クマパンちゃんが、あたしのしっぽを放しました。

 「ミケちゃん、おやつ、食べる?とっときのカリカリがあるんだけど」


 「うん。あたし、走り回って、おなかすいちゃった」


 「それなら、スープもあるよ」



 あたしは、2月を追いかけるのをやめて、カリカリとあったかいスープで、クマパンちゃんと、のんびりおやつにしました。

 おやつの後に、お昼寝してから、あたしは、お菓子屋さんにチョコレートを買いに行きました。


三毛猫 ミケ



* * *



 「一月いちげつぬる、二月にげつ逃げる、三月さんげつる」

 とも、言いますよね。

 つい、さっきお正月と思ったら、もう、2月。 

 

 ミケちゃんじゃないけれど捕まえられるものなら、2月のしっぽをムズッとつかんで、逃げないで待っていてよって、言いたい水玉です。


 2月どころか、毎年、1年があっという間に逃げていく気がします。

 小学校の頃の1学期はとても長かったのに、今は3、4ヶ月なんて、一瞬で過ぎてしまいます。イヤになっちゃう(*´Д`)=3ハァ〜

 

 心理的時間の経過が、年少者は長く、年長者は短く感じることを『ジャネーの法則』というそうです。

 主観的な時間の経過は年齢に反比例していて、この法則によれば、5歳のこどもの10年は、50歳の人間の1年に当たるとか……。

 (((((=゚Д゚=;)))))ガクガクブルブル

 

 それと、2月といえば、バレンタインデー。

 でも、猫さんたちは、チョコレートを食べることができません。

 チョコレートに含まれている成分デオブロミンを、人間のように体内で素早く分解できずに、中毒を起こしちゃうから。

 だから、いくら、だいすきな猫さんにも、チョコは、決して、あげないでくださいね。

 だあれ?

 だったら、猫さんの分は、あげたつもりで、自分で食べちゃおうって、言っているのは?

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