俺は面倒くさい彼女の彼氏になりたい
ぶろさむん
第1話 プロローグ
面倒くさい彼女とはなんだろうか。
女友達といたり、話したりするだけで拗ね出す。
メールの返信が遅いと浮気じゃないかとすぐ疑う。
気に入らないことがあるとすぐ怒る。
怒ってる理由を聞いても何も言わず無視をする。
面倒くさいと思う定義は人それぞれ違うだろう。
そんな面倒くさい彼女に属するであろう、初未 由璃香 という女子は、なんていうか喧嘩になるような嫌な面倒くささというよりは、こっちが気を使って疲れてしまいそうな面倒くささなのだ。多分徐々に分かってくると思う。
「いらっしゃいませ〜〜 クリスマスケーキいかがですか〜」
世の中はクリスマスイブ。
カップルたちは輝くイルミネーションの下でいちゃつきまくっている。
そんなクリスマスイブに俺は何をしているかというと、サンタの格好をしてケーキ屋の店頭でクリスマスケーキを売りさばくための呼び込みをしている。
特段予定もなかったので、いつものようにバイトを入れた。
別に彼女がいないから寂しさを紛らわそうとか?全く思ったことも考えたこともない。全然だ。ただクリスマスの日は時給が少しだけ上がるから入れただけ。それ以外に何があるというんだ?
彼女がいてもバイトを入れたかって?そんなの分かりきってることだろう。入れるわけがない。
「うわ、雪降ってきた・・・・・」
店頭での呼び込みは交代制だが、まさか自分の番になってすぐ雪が降ってくるとは...寒いよおぉ
「・・・・・・あいつ・・・」
呼び込みをしていると、少し先の道沿いに俺がよく知る女子が立っているのを見つけた。いや、見つけてしまった。
何やってんだよ・・・・
バイト中だけど見つけてしまったものは気になってしょうがない...ああも〜〜〜〜
「よお」
「・・・・・・塔山くん・・。」
声をかけるとそいつは、用があるのはお前じゃないという顔で俺を見てきた。
「何その格好・・・」
「サンタさんだよ。ほら呼び込み中。」
俺は持っていた木の看板を見せた。
「クリスマスケーキ・・・・ふーん。」
興味なさそうに看板を見ている。
「もう帰ってると思ったよ。」
「帰るわけないじゃん、ずっと待ってるって言ったから。」
「・・・ずっとって...いつまで待つ気だよ。」
「来るまで・・・・」
俺がバイトに来た時からいたからもう2時間は待ってるってことか、...やばいだろ。
「何やってんだよほんとに。待ってたって一生来ないぞ。」
「・・・・・分かんないでしょ。」
「分かるわ。あいつ本人が直接お前に言ってただろ。」
「・・・・・・・・何時間も待ってたら、来るはずのない彼氏が息切らして走って来てくれることドラマとかでよくあるじゃん。」
「そうやって待ってた結果、俺が来たけどな。」
「・・・・・・」
不満そうだなおい。
「・・・私ケーキ買わないけど。なんか用?」
「寒そうに誰かさんを待ってるお前を見かけて、かわいそうだから声かけただけだ。」
「あっそ。」
来ないと言ってるにもかかわらず一向にそこを動かない様子の女子。
「だからあいつ来ないって。こんなとこで待ってても風邪引くだけだぞ。」
「別にいいじゃん、私の勝手・・・・べっくしゅんっ」
「おやじくさ。」
「うるさいよも〜〜!バイトちゃんとやりなよ!・・・・へっくしょいっ・・私は隆彰くんが来るまで待つの!」
本当に強情だなこいつは。いつまでたっても来ないのに・・・自分の目で確かめないとわからないのか?
「はぁ・・・じゃあ待つならこっちでにしろ。」
「えっ・・ちょっと!」
俺はそいつの腕を引っ張り、一緒にバイト先のケーキ屋に行く。
「すみません、一名入ります!」
「はーい!いらっしゃいませ〜〜」
ここは食べる場所もあるからその場所に連れて行き、窓側のカウンター席に座らせた。
「なんで。」
「ここからならさっきの場所が見える。外より中で待ってたほうがいいだろ。寒いし。あとここひとり一品は注文しないといけないからなんかひとつ頼んで。金は俺が払うから気にしなくていい。それ以上食べたかったら自分で出せよ。」
「・・・別に外でいいのに。」
「そうですかい。でももう入っちまったから、食べながらここで待ってろ。じゃあ、俺行くから。」
「う、うん。・・・・・ありがとう。」
ったく来ねえっつってんのによくもまああんな普通に待ってられるよな。
俺だったら即帰るわ。てかまず行かないわ。
なんていうか・・・こっちが悲しくなる。
今、カウンターに座って絶対来ない彼氏を待っている女子、その子が初未 由璃香だ。
そして後々に、俺、塔山柾貴の彼女になるとても面倒な女の子だ。
まだ全然面倒くさくないと思っただろうけど、それは当たり前のことなんだ。
初未の面倒くささは彼氏の前だけで本領発揮する。
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