かにくりーむころっけ
を、あっまぞーんほしいものリストに追加したら、知らない人から大量の冷凍カニクリームコロッケが届いてしまった。
1袋8個入りのものが365袋。
独り暮らし用冷凍庫に入るわけもなく途方にくれる現状。
「誰だこんないたずらをした野郎は。ぐぬぬ…っ。」
スマホのあっまぞーんほしいものリスト画面に向かって文句を投げつけ、該当のあいつをリストから消そうとしていると、窓からひょっこりとたぬきが顔を出していた。
(そういえばたぬきは雑食だったなあ…)
ふとそんなことを思い、一袋分だけレンジでチンして窓を開け、そのたぬきに1つ投げてやった。
しゅぱーんっ!
しゅたっ。
…もふもふもふもふっ
あまりにも華麗に口で受け取り、熱そうに食べるその様が面白くて、温めたカニクリームコロッケすべてたぬきにあげた。
心なしかたぬきがすごく喜んでいるようにみえたので、
「まあ、腹減ったらまたこいよー」
と、声をかけたら、たぬきがこちらを振り向きなんと2本足で立ち上がり、ぐぐぐいっと90度頭をさげた。その様がなんだか人間のお辞儀をしているようにみえて、なんていいたぬきなんだ、と一人関心してしまった。
それからちょくちょくたぬきは我が家にカニクリームコロッケを求めて来るようになった。
気づけば近所にもカニクリームコロッケをダイビングキャッチしお辞儀をして去る愛らしく礼儀正しいたぬきとして評判になり、たまにちょこちょこ近所の人たちからカニクリームコロッケをお裾分けしてもらっているようで、
「お、たぬきち今日もきたのか。今日もカニクリームコロッケあるぞ!食べてけよ!」
「あらたぬきちゃん!はい、これカニクリームコロッケよ♪」
「たぬしゃん、かにしゃんころっけだよー☆ミ」
町を歩けばカニクリームコロッケスター☆たぬきである。
すごいなたぬき。
と思っていたがしかし最近、こころなしかたぬきの表情が曇っているように見えてきた。
どうしたんだろう。
気になってたぬきに近づいてみたら、なんとなくではあるが、目をちょっとうるませているように見えた。
そうか、こいつ、自分の暮らしを追われて慣れないこの場所にきたんじゃないか…?
で、あんなにがんばってジャンプしてキャッチして、こいつなりに必死に周りに溶け込もうとしていたんじゃないのか…?
俺は、なんで気づけなかったんだ…
そうだ。
また明日もくるだろうし、きたらあいつをいたわってやろう。
本物のカニを買ってきて、ちょっといいカニクリームコロッケを作ってやろう。
「…お前も色々と疲れるよな。…よし明日、楽しみにしてろよ!豪華な食事を用意してやるからな!絶対にくるんだぞ!!」
親指を立ててたぬきにそう伝えたら、たぬきが目を輝かせたように見えた。
―――
ぃやーぁみんな!
ぼくはたぬきのたぬぽんだぽん。
ぽーぽぽぽぽんっ!あのあんちゃんはカニクリームコロッケの策略にまんっまとハマってくれて助かったぽーん。
ぽーぽぽぽぽんっ笑いが止まらぬぽん!
あのあんちゃんのスマホハッキングするのちょー簡単だったぽーん。
セキュリティソフトすら入ってないスマホなんて、このたぬぽん様がちょちょいのちょいだぽん!
カニクリームコロッケの代金をああしてこーしてこーしたのはタイヘンだったぽんけど、おかげで最近はカニクリームコロッケ以外もあのあんちゃんからもらえるようになり、ご近所さんもぼくが芸するたぬきってことでかわいがってもらえるようになってぽんきち大満足だったぽん!
けど、けど!
カニクリームコロッケおんりーで…さすがに飽きてきたぽん…
もうちょっと違う食べ物ももらえると思っていたけど、大誤算だったぽーん…
(そろそろ、やきにく食べたいぽーん…ぽーん…ぽーん……)
ってかんじの顔をあのあんちゃんに向けてみつめてみたぽん。そしたら。
「…お前も色々と疲れるよな。…よし明日、楽しみにしてろよ!豪華な食事を用意してやるからな!絶対にくるんだぞ!!」
これは心がおどるしかないぽーん!!!!!
言語がちがくっても、心は通じあってたぽーんっ!!!
明日が、明日がとってもたのしみだぽぽぽぽぽぽぽぽーんっ…♪
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます