屹立覇界!ダイラセン

拾捨 ふぐり金玉太郎

00 地底世界

 ――地底世界は実在する!




 そこは異世界ではない。

 我々が生きる地殻の足元に、マントル層と同時に存在しているのだ。

 これはプラズマ宇宙論を基に説明できる事実であり、多重三次元世界とも呼ばれる。


 頭上には地球のコアが内部太陽として光を放ち、地上世界と表裏一体の陸地を照らす。


 そう、表裏一体。


 すなわち、いま滔々とうとうと流れる溶岩河川のほとりに並ぶ地下国道156号線は日本国某所の国道156号線と裏表で一致している。


 その地下国道156号線イチコロに、現在進行形で隆起の畝が二筋走っていた。


 ふたつの何者かが地底世界の地下でぶつかり合いながら猛スピードで掘り進んでいた。



 岩石の地表が弾けて両者が飛び出す。



 片や、高さ1メートルほどの小人。

 巨大な頭に短い手足――2.5頭身の身体ボディには黄色を基調にして黒い縞模様ストライプが所々に描かれている。


 片や、身の丈3メートルはあろう大鬼。

 胴体にめりこむ頭部からは一本角。

 右腕だけが異様に大きく、二本脚の蟹を思わせる。


 いずれも全身を硬質の金属で覆っており、人類ヒトとは異なる何かであることは自明であった。



 そして!



 いずれの腕にもドリルが備えられていた!



「ギュイィィィィィィィィ」

「グォォォォォォ」



 地表に飛び出て対峙した小人と大鬼が唸りをあげる。


 それは小人の両腕で回転する円錐型ドリルの音であり、大鬼の右腕と一体化した円柱型ドリルの音であった。



 両者のドリルが激突。


 3倍の体格差がありながら互角にドリルをぶつけ合う。


 小人は大鬼を翻弄するように跳び回り、あるいは地下と地表を行き来して、縦横無尽の機動で攻め立てる。

 対する大鬼も一撃必殺の巨大ドリルを薙ぎ払い、打ち下ろす。ドリルの軌道上に在る岩石はいとも簡単に粉砕された。




 数合ドリルを交えたとき――大きな地震が起きた。


 地底世界において地震は雨天とほぼ同義である。が、この時の地震は殊に大きく激しかった。

 ぶつかり合っていた両者が攻防を止めたほどである。



 地響きは前触れだ。

 しばらくして溶岩河川の上流から赤々としたマグマの激流が押し寄せ、小人も大鬼も慌てて地中へ逃れた。



 それから十数分。

 大地震の後の鉄砲マグマが地表を駆け抜けて。

 溶岩河川がもとの滔々とした流れを取り戻し、ほとりの地下国道が黒く冷えた岩石で覆われて。



 ドリルを持つ小人と大鬼は、二度と姿を現さなかった――――


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